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7 王領での事件②

 肩を揺らされて目が覚めた。どうして床で寝ているんだ?疑問に思って周りを見る。

 オレを起こしたのはミリアリア様の様だ。どうしてここに?


「ようやく起きたようね。こんな床で寝る事が出来るなんてどういう神経をしているのかしら?平民でももっとましな所で寝ているわよ。貴方は平民以下の存在なの?」


 ここで寝ていた?ここは何処?

 確かトイレに行こうと思って部屋を出て歩いていたら先王陛下とゴーイングさんが二人で裏門の方に歩いて行ったから興味本位で付いて行ったんだよね。そしたら後ろから殴られて意識を失ったのか?

 ……身体強化魔法の欠点が有ったか。後頭部に衝撃を受けて気絶したなんて……。体全体を強化していたつもりだったけど漏れが合ったのかな?今後の課題だな。


「何を黙っているの?私の話を聞いていたの?ここは何処なの?どうして貴方が居るの?早く答えなさい!それとも言葉が分からないの?そんな愚図がお兄様の学友なの?本当に使えないわね!これだから愚図は嫌いよ!」


 考え事をしていて姫様の話を聞いていなかった。しかし相変わらずの毒舌だな。

 現状を把握すると。オレも姫様もここが何処か分からない。部屋は暗く、窓の外も暗いから今は夜の様だ。窓には鉄格子がはまっておりドアも鍵がかかっている。……閉じ込められたのかな?ドアの外には誰も居ないようだ。身体強化の魔法で聴力を強化して外の音を聞こうとしたが。


「なに勝手に動いているの!きちんと説明しなさい!貴方はどうしてここに居るの!それも私と二人きりで!もしも噂になったらどうするの!無能と二人きりなんてなんて事なの!無能が移ったら貴方の責任よ!この変態!」


 ……変態はないだろう。どうして変態なんだよ!……姫様の服が寝間着だからか。自分の上着を姫様の肩にかける。


「私の上着で申し訳ないですが、少しでも寒さがやわらげれば」

「ふん、貴方のうす汚い上着で勘弁してあげるわ。全く気付くのが遅すぎるわ。でも愚図の割には良く気づきました。及第点をあげましょう。土下座して許しを請いて良いわよ」


 ……この姫様嫌だ。うるさいし、毒舌吐くし、いつもオレを貶すし、何様だよ!姫様か。

 姫様のせいで聴力強化出来ないよ。だって姫様うるさいから。

 あ! 足音が聞こえる。三人分の足音だ。


「起きているようだな。寝ていれば拘束が簡単なのに……」


 ドアが開くと男が二人剣を持ってオレ達を脅す。


「動くなよ。動いたらお前達をこの剣で刺さないといけないからな。早く拘束しろ」


 オレと姫様は後ろ手で縛られて歩かされた。歩いた先には先王陛下とゴーイングさんが男達に取り囲まれていて腕を紐で結ばれている。

 あれ? 中央の人ってバルデハイム王国の騎士鎧を着ているよな?変装しているのか?その中央の騎士鎧を着た男が言う。


「さて先王陛下。姫様が来られましたよ。ついでに運の悪い子供も。私達の提案を受ける気になりましたか?」


 オレと姫様が来たことにより笑いながら先王陛下に言う。どんな状況なんだ?


「もう一度言いましょう。私共の提案は貴方に我が国に来てもらいたいだけですよ。姫様と一緒に。それなのに何を迷われています」

「黙れ!もう一度言ってやろう!お前達の言う事を聞く理由がない!」

「貴様!国を裏切るのか!お主を信頼しているからこそお前に頼んだのに!賊と繋がっていたとは!」

「賊とは失礼ですな。副団長。私は貴族ですよ。周りの者達も変装しているがみんな貴族なのですよ。平民の貴方とは違う由緒正しい貴族です。それなのに平民の分際で貴族に命令をするとは。貴様が無礼なんだよ!平民ごときが!」

「信じた私が愚かだった。お前の父は素晴らしい方だったのに……」


 ……オレと姫様は人質で周りの男達はどこかの国の騎士か兵隊。そして話している騎士は裏切り者のようだ。


「こんな事をしてどうする!王族をさらったのだぞ!」

「筋書きはこうさ!姫が人質に取られてお前達もさらわれる。しかし私達が助け出して人質を救い出す。先王陛下と姫は感謝して我が国に赴き、恩を感じた先王陛下は属国から国を独立させてバルデハイム王国と同等の国と宣言をして我が国王の後継人となり、姫様は王子の婚約者になって幸せに暮らして頂くのさ。賊との戦闘で平民が名誉ある戦死するがそんな事は些細な事だ」


 そう言ってゴーイングさんに剣を刺す。背中に剣が生えて血が姫様に付いた。


「ゴーイング!」


 ゴーイングさんから剣を抜いて付いている血を振って払い飛ばす。振り払った血が姫様に付いてショックで気を失った。

 ゴーイングさんが死んだ。オレは叫んで名前も連呼した。


「ゴーイング殿!ゴーイング殿!」

「うるさいぞ!小僧を殴って黙らせろ!」


 オレの後ろで刃物をちらつかせていた人がオレを殴った。





 ゴーイングが刺された!ミリアリアは気絶してアルムエルグは叫んでいる。

 そして子供が後ろの男から殴られたのだが、どこかで紐が千切れる音が聞こえた。その音の方はアルムエルグから聞こえる。両腕が自由になったアルムエルグは殴られた男を見る。アルムエルグの顔を殴った男は再度殴るが拳を顔に当てても平気な子供を見て驚愕している。


「うざい!」


 アルムエルグが腕を振り払うと殴りつけていた男の腹に当たり壁に吹き飛んだ。

 なにが起きているんだ?


「貴様ら!よくもゴーイング殿を殺したな!」


 泣きながら叫ぶアルムエルグが男達を睨みつけた。


「うるさいぞ!このガキも殺せ!」


 そう言って男がアルムエルグに切りかかり、切ろうとしたが剣が肩で止まっている。


「弱い!その十倍の力で切りつけろ!」


 そう言って腹を殴り飛ばす。胃液を吐きながら男は壁まで飛んで当たって気絶した。

 ……切り付けたのにどうして傷を負っていない!どうして殴ったら壁まで飛ぶんだ!


「遅い!もっと早く動け!十倍の速さで動け!」


 腕を殴られて骨が折れる音と共に壁まで飛ばされる男。


「鈍い!もっと早く反応しろ!十倍速く反応しろ!」


 顎を殴られて歯が飛び散り、天井に当たって床に倒れる男。

 何がおきている!アルムエルグが殴れば相手が吹き飛び倒れる。剣を体で受けても傷一つ付かない。一瞬で相手の懐に入って殴り飛ばす。子供が大人を殴り飛ばしている現実離れした光景を目にしている。


「人質を盾にしろ!」


 そう言って私の前に男達が集まるがその前にアルムエルグが立ちふさがり男達を殴り飛ばす。


「魔法だ!魔法を使え!」


 炎を出してアルムエルグに当てようとするが瞬時に魔法を使った男を殴り飛ばした。いつの間に移動したのだ?さっきまで私の前に居ただろう。

 一人ずつ殴り飛ばし最後の一人、国を裏切った騎士だけになった。


「覚悟は良いか!ゴーイング殿の仇だ!」

「き、貴様!何者だ!どうやってこいつ等を」

「オレはドックライム公爵家次男のアルムエルグだ!」

「欠陥魔法使いの屑がどうしてこんなに!」

「知るか!仇だ!死ね!」

「待て!アルムエルグ!殺すな!」


 私はアルムエルグを止める。止めるのが少し遅かったのか裏切り者は殴られ鎧が壊れた。しかし壁には飛んでいないのでギリギリ間にあったのか?


「アルムエルグ!私の紐を解け!」


 瞬時に私の後ろに回って紐を引きちぎった。いつの間に私の後ろに……。そして刃物で紐を切れ!素手で引きちぎるな!

 自由になった私は裏切り者の騎士の所に行って懐を探る。やはり有った。運よく割れていない。


「先王陛下、それは?」

「これはポーションだ。聞いた事あるだろう?」


 ポーション。回復魔法の効力を持つ液体。神殿などでお布施を払って手に入れるモノだ。そして騎士団では任務の際には常備している。

 私はゴーイングの傷口にポーションをかけて、残りは飲ませる。ゴーイングはギリギリ助かった。アルムエルグは死んだと勘違いしたが、ゴーイングは運よく生きていた。

ため息をいて周りを見渡す。壁際で気絶している男達。気絶しているミリアリア。そして顔を青くしているアルムエルグ。

 まずはアルムエルグを問いただそう。……このような状況にした張本人に!



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