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5 フルブルーク先王陛下

 オレはドックライム公爵家で旅行の準備をしている。

 先日、ベルファルト殿下が勉強から逃げ出した日、ミリアリア様と会った日の事だった。

勉強が終わると。


「アルム!バルデハイム王領の神殿に行く事になったぞ!お婆様の墓参りに行ける事になったのだ!オレとミリアとアルムも一緒に行けるように宮殿でお爺様を説得していたのだ」


 だからって勉強を抜け出してまでしなくても……。


「前に一回行った事があってな。神殿は奇麗で凄く大きいぞ!まぁ、王宮より小さいがな」

「私が行っても良いのでしょうか?」

「大丈夫だ。お爺様の許可は得たし、父上の許可も得たぞ!ミリアも初めて神殿に行くから楽しみにしているそうだ」

「……お心遣い感謝いたします。私も王領の神殿に行った事が無いので楽しみです」

「そうか!楽しみか!よし!王領の神殿も私が案内しよう!」

「ありがとうございます。王領に行くのが楽しみです。いつ王領に行くのですか?」

「明日だ!」

「……今から両親の許可を得て王領に行く準備をします。これにて失礼いたします」


 急いで両親に話して旅行の準備をしないと!


「明日の朝に出るからな!八時には城に来いよ!」


 ちなみに一日は二十四時間である。今が十五時だから早く屋敷に戻り両親に伝えないと!





 バルデハイム王国の王子であるベルファルトは走っていく学友を見て良い事をしたと思う。気難しいお爺様に頼み込んで何とか説得できたのだ。アルムも王領に行けて嬉しいに決まっている。アイツが学友になってから楽しい日々が続いている。

 アルムは勉強も剣術も苦手で偶に何もない場所で躓くドジだがアルムが居るだけで退屈な王宮が楽しくなった。

 しかしアルムがもう少し勉強が出来たら授業が早く終わるんだが……。あいつが不勉強なせいで偶に居残りがあるんだよな。だがそんな出来の悪い奴を導くのも王族としての務めだろう。

 明日の準備は側付きの侍女に任せているから問題ないが、アルムはどうだろうか?アイツも側付きの侍女が居るのかな?公爵家の者だから専属の侍女くらいいるだろう。

 さて自由時間は何をするかな。

 ……自由時間は母上と妹と一緒にお茶会になった。


「それで勉強から逃げて何処に行っていたのかしら?」

「誤解です。用事が有って私はお爺様に会いに行っていました」

「ですが勉強の時間に会う事はないでしょう。貴方が勉強から逃げて周りの者達が迷惑をしたのよ」


 何故か母上の機嫌が悪い。母上の隣にいる妹は疲れ切っている。何かあったのか?


「時間がなかったのです。アルムと一緒に王領の神殿に行く為にお爺様を説得するのに時間がなかったのです」

「アルムエルグさんを王領に連れて行くの?」

「はい、お爺様の許可を頂きました。勉強から逃げたのではありません」

「……王領に行く説得が出来たのは今日よね。明日の早朝に出発するのよ。アルムエルグさんは両親の許可を取ったの?」

「許可を取りに屋敷に帰りました。出発の時間も教えたので大丈夫です」

「王領に行く用意は?」

「公爵家の者達がするでしょう」


 頭をかかえる母上。なにかおかしな事を言ったかな?


「大事な事は前もって言う事。急に決められたら周りに迷惑するでしょう!」


 そして母上は私に相談や事前の根回しがいかに大切なのかを説明する。……なにが悪かったのかな?そして母上はミリアの方を向いて言った。


「ミリア。貴方も王領に行くのだからアルムエルグさんに謝るように。良いですね」

「わかりました」


 ミリアはアルムに何かしたのか?





 オレはベルファルト殿下と別れた後、急いでドックライム公爵家に帰る。王領に行く許可が貰えるか心配だ。幸い父は執務室に居るようなので向かう。


「失礼します、父上」

「どうした?そんなに急いで?」

「実はさきほど殿下から王領の神殿に一緒に行く事になったと聞きました」

「王領に?確か明日に出かける予定……アルムも行くのか?」

「先程、ベルファルト殿下がお爺様、先王陛下に許可を頂いたと」

「……そうか」


 考え込む父親。先王陛下の噂は聞いている。気難しく苛烈な国王として有名だ。逆らう者達は役職を辞めさせたりして何人もの貴族が職を失ったそうだ。宰相や騎士団長も五回くらい人が変わったらしい。

 そして数年前、当時国王だった先王陛下は公務で他の領地に向かっている最中に王妃様が暗殺者に襲われて亡くなったそうだ。

 先王陛下は怒り暗殺者を送り込んだ国に戦争を仕掛けた。そして国を滅ぼして今の国王に王位を譲ったとされている。

 王位を譲った先王陛下は奥様を思い続けて年に数回、歴代の国王や親族が眠る神殿に行くそうだ。それが今回の王領に行く理由である。

 先王陛下と一緒に王領に行くのは親族だけだった。それなのにオレも行く事になり、その結果がどうなるか父は考えているのだな。


「……先王陛下の許可を得ているのなら行かなければならん。急いで準備をさせよう」

「お願いします」


 執務室にあるベルを鳴らして執事長を呼ぶ。


「デミル、アルムが殿下方と王領に行く事になった。明日までに準備をしろ!」


 ドックライム公爵家の執事長のデミル。父が子供の時から屋敷で働いているそうだ。


「明日ですか。随分と急ですね。分かりました、すぐに準備をします」

「頼んだぞ」


 一礼して執務室からでるデミル。


「後は……アルムも必要な物を用意しておけ。それから先王陛下に失礼のないように。気難しい方だからな」

「わかりました」

「後、ベルファルト殿下の学友としてどうだ?大丈夫か?」

「大丈夫です。殿下を持ち上げて気分を良くしています」

「殿下の側近から癇癪を起す事が無くなったと聞いている。その調子で今後とも頼むぞ」

「はい」


 次の日、執事長のデミルが用意した荷物を持って王宮に向かう。集合時間は八時だったが念を入れて七時に行こう!

 ……早いかな?遅れるより良いだろうと思って王宮に父と一緒に行く。

 父は先王陛下にオレの同行を許可してくれた礼を言うそうだ。父は先王陛下が苦手で会いに行くのを躊躇っていた。まあ気難しくて苛烈な人だから会うのは嫌なのだろう。きっと父が若いときに何か言われたのかな?

 王宮では準備が進められており騎士団や魔法師団の人達が準備をしていた。父はダムボックス騎士団長を見つけて挨拶をする。


「久しぶりだな、ダムボックス」

「そうだな。それで今回はアルムエルグが同行すると聞いたぞ。先程」

「オレが知ったのは昨日の十七時前、アルムが聞いたのは十五時過ぎだ。用意が大変だったんだぞ」

「私は今も大変だ。人員の変更から物資の追加、いろいろと大変な目に合っているぞ」

「……同情するよ。しかし殿下の学友とは言え良く先王陛下が同行を許可したな」

「先王陛下も孫には優しいのかもしれん」

「そんな甘い方ではないだろう」

「そうだな。なんにせよお前の息子の護衛は任せろ。良い人材を付けるから」

「頼んだぞ」


 父と騎士団長の話を横で聞いていると集合時間になり王族の方々がお見えになった。陛下・王妃にベルファルト殿下とミリアリア様、そしてあの老人が先王陛下なのだろう。今回は側室の方たちは居ないようだな。

 父は陛下に挨拶をして先王陛下に頭を下げて挨拶をした。


「お久しぶりです、先王陛下。先日体調を崩されたとお聞きしましたが御無事の様で……」

「うるさいわい!お前の様な青二才に心配される筋合いはない!」

「先王陛下、公爵は心配をして……」

「やかましい!お前達が心配して怪我が治るのなら苦労などせんわ!」


 ……気難しいって聞いていたが、なんか、あれだな。周りに迷惑な頑固ジジイだな。あ、先王陛下と目が合った。


「お前がベルファルトの学友か」

「お初にお目にかかります。ドックライム公爵家次男のアルムエルグと申します。先王陛下におかれましては……」

「うるさい!ガキの分際で何を小難しい事を言っておる!ワシがお前の同行を許可したのはベルファルトの側近になれるか見極める為だ!馬鹿な事をしでかせばワシがお前の首を引っこ抜いて投げ捨てて獣の餌にしてやるからな!覚悟しろ!」


 ……はい、覚悟します。でも殺さないでほしいな……。


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