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19 その後の話し合い

精霊の友として。1巻発売中! 2巻は12月28日発売予定!

 日が落ちて、暗くなり夜になった。会場では夜会が行われており、大人だけの時間である。

 しかし、陛下の執務室では今回のパーティーの反省会が行われていた。国王のダムフレット陛下、ゲックハルト宰相、ダムボックス将軍、アルムエルグ殿の父君のライドクリフ・ドックライム公爵、フルブルーグ先王陛下、先王陛下の護衛である私ことゴーイングの五人が反省会を開いている。

 私は先王陛下の後ろで話を聞いているだけだが、今回の騒動は全員が頭を抱える事となった。


「エルドラージ王国の者達の行方はどうなっている」

「私達が王都を出て、追いつこうとしましたが途中の道で木が倒れており、その撤去に時間をかけてしまい、見失ってしまいました。ルックナー砦方面に向かわせていますが、向かった形跡はないとの報告を受けています」


 陛下の問いにダムボックス将軍が答える。エルドラージ王国の王太子と令嬢達は馬車を飛ばして、騎士達は走ってルックナー砦方面に向かい、馬に乗ったダムボックス将軍は追いつくことが出来なかった。

 鎧を着ている騎士が長時間、走る事は出来ない。どこかで休んでいるか、馬を入手したのかも不明だ。それともエルドラージ王国の騎士達は長時間走る事が出来るのだろうか?


「賊に盗まれた者はあるか? 被害か?」

「盗まれた形跡はありません。書類保管庫、宝物庫には入った形跡はありません。しかし、陛下と私の執務室には賊が入っておりました。盗まれた形跡はありませんが動いている書類があり、写し出された可能性があります」


 陛下の問いにゲックハルト宰相が答える。

 賊の侵入により、人的被害は少なかったが、書類を盗まれた可能性がある事が分かった。アルムエルグ殿が簀巻きにして放置したが、他の賊が助けだし、捕まえる事が出来なかった。

 賊は少なくとも十人は侵入してきており、それを全部処理するのはアルムエルグ殿でも無理だった。一人を簀巻きにしても、他の者達が助けて数に負けてしまったのだ。

 そして我が国の密偵は賊に負けて負傷し、エルドラージ王国の密偵の質は高い事が証明され、バルデハイム王国の密偵は弱い事が証明された。


「父上、ライドクリフ、ゴーイング、アルムは戻って来たか?」

「帰宅したとの報告はありません。家族には先王陛下に呼ばれていると説明しています」

「まだ、こちらには戻っては来ておらん」

「はい、パーティー中に賊が宝物庫にかっていると言われて別れたきり、お会いしておりません」


 ドックライム公爵、先王陛下、私の順で答える。アルムエルグ殿が居ないのだ。王宮にもおらず、屋敷にも帰っていない。まさか賊に殺されたのか? と一時は思ったが、「賊に殺されるほど軟な者ではない。きっとエルドラージ王国の王太子を尾行しているのだろう。心配いらん」と先王陛下が皆に言っているが、夜になっても帰って来ておらず、手傷を負ったのか? 悪い事を考えてしまう。


「アルムの事だ、心配いらん。ひょっこり窓から現れるだろう。しかしこの窓をどうにかせねばならんな。賊がカギを壊して入ってくるからな。しかし塞ぐと熱気で暑くなるな。……誰も居ないときは窓の内側から鉄板で塞ぐか?」


 警備体制もどうにかしなければならないので陛下達は頭を抱える。騎士・密偵ともにエルドラージ王国の方が上という事がわかり、二年間の同盟? を結ぶ事でエルドラージ王国がバルデハイム王国に攻め入る事は無くなった。……絶対ではないので油断は出来ないが。

この二年で騎士・密偵の質と量を上げないといけない。はっきり言って難しいだろう。しかしそれが出来なければエルドラージ王国と戦争したら負ける。


「アルムの事は置いておくとして、同盟の件だが……」


 陛下がエルドラージ王国のコンキデムス王太子から渡された書類を見ながら言う。

 ① バルデハイム王国とエルドラージ王国は戦闘行為又はそれに準じる行動を行わない。

 ② 情報収集の為に無断で侵入した密偵は戦闘行為とみなす。

 ③ 二年の間で他国との戦争が起きた場合には援軍の要請が出来る。

 ④ 戦闘行為が起きた場合同盟破棄となり、先に破棄した国は罰金を支払うものとする。

 ⑤ 両国の信頼の為にヨーデンボリー領での同盟成立の宴をしたいので同盟してちょ! 

 と書いてあった。……五番目の文章の最後は何か意味があるのか? それとも馬鹿にしているのか? 


「この同盟は両国とも密偵を使えない状態ですね。もし密偵が捕らわれたら同盟違反で攻め込まれます。逆にエルドラージ王国は戦争をしかけても良いので密偵を使って侵入してくるでしょう」

「今回の件で密偵の長も負傷して、密偵の人数もエルドラージ王国の方が多く、対抗できる者はアルムエルグ殿だけでした。警備の数を増やして騎士達に頑張ってもらいましたが、人員不足です。騎士・密偵の人員の補充をしなければいけません」

「騎士の補充と言っても、下手に増員しても他国と繋がりがあっては元も子もない。量よりも質を優先するべきでは?」


 公爵と宰相の言葉に将軍が答える。しかし質を上げるといってもどうすれば?


「アルムエルグ殿の修行法を学ばせます。身体能力強化魔法の質を上げれば全員が強くなるでしょう」

「それは無理だろう。アルムは魔力を外に出せないので、身体強化魔法に特化した魔法使いだ。他の人間は魔力を放出できるから身体強化魔法はアルムよりも質が落ちるのは当然だ。可能性があると言えば魔力の放出を止める事が出来たら……」


 先王陛下が将軍の言葉を否定した。魔力の放出を止める事は心臓の鼓動を止める事は同じことだ。意識して魔力の放出を止める事は誰にもできないだろう。それにアルムエルグ殿の訓練はちょっと過激だから止めた方が良いだろう。


「……話を戻そう。同盟の件だが、条項が五つ、いや四つしかない。二年間の戦争停止と密偵の侵入不可と援軍の要請。そして反故したら同盟の決裂だけだ。穴だらけの条件だぞ。エルドラージ王国側の許可があれば入国して情報収集をしても良いと判断できる条項だ。これは罠か?」


 無断で侵入したら戦闘行為をみなすので、許可があれば侵入可能という事になる。……私も同じ事を考えていたのだが、陛下も同じ事を考えていた。


「罠の可能性は高いと思います。仮に入国許可が出ても、エルドラージ王国側が密偵と判断すれば、それで同盟は崩れます。エルドラージ王国にしてみれば私達の方から同盟違反となり、攻め入る口実になります」

「いや、罠の可能性は低いでしょう。宴に招待してエルドラージ王国の強さを見せつけて士気を落とす可能性はあると思いますが、同盟を結んだ国の者を害したのなら他国から信用されないでしょう」


 罠の可能性を将軍が、罠ではないと宰相が答える。両方とも納得できる答えなので陛下も考え込む。私も判断がつかない。


「情報が足りないので情報収集をしましょう。密偵ではなくても、エルドラージ王国に伝手のある商人から情報を集めてみてはどうでしょうか? それに同盟すると言って我々を混乱させる作戦という事もあります。今まで通りエルドラージ王国に注意し、警備を厳重にし、戦争の準備を進めましょう」


 公爵は諭すように言って皆が冷静を取り戻した。流石はドックライム公爵だ。


「そうだな。エルドラージ王国に注意を払い、密偵に対して警戒しよう。警備はダムボックスに、情報収集はゲックハルトに任せる。それからルックナー砦に警備を厳重にと責任者のマクガイアに連絡を取ってくれ」


 首脳陣の会議が終わり。最後にアルムエルグ殿の事が話題にあがる。


「しかしアルムは何処に行ったのだ? 偵察とか言ってエルドラージ王国まで情報収集に行ったりしてないよな……」

「流石に考えすぎです。息子がそんな事をするとは思えません」

「分からんぞ。アルムは突拍子な事を仕出かすからな。密偵を捕まえて情報を聞き出している可能性も……。待て? その場合は密偵を簀巻きにしたら戦闘行為にならないか? 同盟破棄か? 罰金か?」

「密偵が我が国に居るので相手が約束を破った事になりますので、大丈夫です」


 陛下とドックライム公爵がゲックハルト宰相のやりすぎを心配している。私も心配だが、アルムエルグ殿の仕出かす事には悪意はないし、偶に凄い事を遣らかすからな。

 陛下が心配するのは良く分かる。将軍も宰相もアルムエルグ殿の心配をしているし。先王陛下だけが、すました顔でお茶を飲んでいる。


「アルムはやり過ぎる事が多いが、王国の為だ。やり過ぎても叱るのはワシで、ダムフレットやドックライム公爵はアルムを褒めて優しく接してくれ。王国に忠誠を誓う貴族として、信頼できる人間として育ててくれ。そしてフォローにゲックハルトとダムボックスとゴーイングが補う。アルムはバルデハイム王国に必要な者で、孫の婚約者だ。正しく育てる必要がある」


 先王陛下がアルムエルグ殿の必要性を述べる。全員が言葉を聞き頷く。


「今回の同盟の件は、相手にとっても予期せぬ出来事だと思う。王太子はそれを利用する為に同盟という混乱材料を投下した。ワシ等はこの同盟をどう利用するかだな」


 先王陛下は皆に「お茶でも飲んで頭を冷やせ」と言って勧め、考えながら言った。


「アルムを連れて同盟の宴に行くか? 相手の懐に入って情報を調べるのも選択の一つだな」


 そう言ってお茶を飲もうとしたがカップは空だったので、私がお茶の用意をして、おかわりの準備をする。

 先王陛下とアルム殿が行くのなら、私も同行するだろう。準備をしておいた方が良いな。

 そんな事を思っていたら、窓から『ドスン』という大きな音が聞こえる。私とダムボックス将軍は窓に向かって警戒する。窓には子供の手の片方が窓サッシを握るのが見え、ロープを握った手が腕ごと窓に固定された。

 アルムエルグ殿が帰って来たのか。何も窓から侵入してこなくても良いのにと思いながら窓に近づいた。

 窓からよじ登って床に足を着き、そして私達の方を向いて、どうしたのだ? アルムエルグ殿が動かない。ドックライム公爵を見て……。そういえば家族には内緒だったな。

 アルムエルグ殿が握っていたロープの力が弱まり、窓の外にロープが落ちそうになるので、私がロープを握りしめて落とさない様にしたが、ロープの重みで私も窓から落ちそうになる。

 近くに居たダムボックス将軍がロープを捕まえても重く、二人して窓から落ちそうになった!


「アルム! ゴーイング達が窓から落ちる!」


 先王陛下の言葉にハッとしてロープを握りしめ、窓から気絶している人間三人を部屋に入れた。……道理で重かった訳だ。それを一人で連れて来たアルムエルグ殿の力は相変わらず異常だな。


「……お帰り、アルム。お勤めご苦労だな。後は皆に報告をするだけだ」


 ドックライム公爵がアルムエルグ殿に優しく言う。先ほど先王陛下が言った言葉通りに優しく接している。アルムエルグ殿は仮面を取って口をパクパクしている。何を話せばよいか混乱しているようだ。


「アルム、お主の父は正体を知っておるから安心しろ。まずは報告だ。お主は今まで何をしていたのだ? そこの気絶している者達は何者だ?」


 アルムエルグ殿に報告を要望する先王陛下。いつもよりも固い口調で話す訳は、縛られた者達のせいでしょう。……大丈夫でしょうか?





 エルドラージ王国に王太子達が船で移動するのを呆然とみる、近くにはロープで縛られて猿轡されてモゴモゴ言っている。

 川を逆流して走る船に呆然として見ているだけだった。船は上流から下流に流れるか、風の力を利用して進むしかないのに……。エルドラージ王国の令嬢達が空を飛んで来たと言っていた言葉を思い出す。嘘だと思っていたがあの船を見たら、本当なのかと信じてしまいそうになった。

 エルドラージ王国はバルデハイム王国よりも進んだ技術を持っているのか? それとも魔法か? 騎士や密偵の強さもバルデハイム王国よりも上で、その上、魔法も技術も上なのか?

 この件は先王陛下や陛下にこの事を伝えないと。それにアドームル男爵領で罪を犯した貴族達も連れて帰らないといけないし。

 ……煩くなりそうだから貴族達は気絶させてロープで一纏めにして、エルドラージ王国の密偵が潜んでいないか確認しながら王都に帰る。

 貴族達を運びながら帰ったので、王都に着いた時は夜になっていた。……少し遅くなったな。黙って王都を出たからみんな心配しているかもしらないな。

 陛下の執務室に明かりが付いているから、さきに報告を済ませようと思って陛下の執務室に窓から侵入しようとする。

 部屋の中の声を聞くと……陛下と先王陛下と宰相とゴーイングさんの声が聞こえる。部屋に入っても大丈夫だな。

 ジャンプして窓のサッシに手を付けると、下から『ドスン』という音がした。……ロープに縛られていた人達を忘れていた。……大丈夫そうだから良いか。

 何とか陛下の執務室に入って、「ただいまも戻りました」と言おうとしたが……父上が居た。どうして父上が、顔は仮面をしているから大丈夫だけど声を聞かれてしまった!

 気付いたかな? 気付かれたかな? ……どうしようか考えていたら後ろからゴーイングさんとダムボックス将軍の声が聞こえる。それよりも父上が……。


「アルム! ゴーイング達が窓から落ちる!」


 あ! 忘れていた。 ロープを掴んで部屋に入れて父上の方を見る。……どうやら正体はバレていないようだ。……ってさっき先王陛下がオレの名前を呼んだよね! バレちゃったよ! どうしよう? 怒られるかな? 


「……お帰り、アルム。お勤めご苦労だな。後は皆に報告をするだけだ」


 怒られなかった。そして優しく勤めを労ってくれた。良かったと思いながら、父上に小さき守護者の事を説明しないといけないと思って、どう説明しよう思ったけど声が出ない。……パクパク言うだけだ。あれ? 声が出ない。どうしてだろう?

 先王陛下から報告の催促を受けたが、口は開くけど声が出なかった。どうしてだろう? 

 陛下の机に紙とペンを借りて『声が出ません』と書いて見せた。皆が驚き、大丈夫か聞く。

 しかしどうして声が出ないのだろうか? ……あれかな? 賊に即効性の麻痺毒を食らったからかな? 

 でも毒の付いた矢は皮膚で止まったし、即効性と言っていたけど三時間以上たっているよ。

 声が出せない原因は『多分麻痺毒を食らったせいだと思います』と書いたら、


「ゲックハルト、今すぐ、医者を呼べ! ゴーイング、アルムを着替えさせろ! ダムボックスはアルムが連れて来た者達を牢屋に入れておけ! ドックライム公爵はアルムの体調を確認しろ!」


 先王陛下がみんなに命令して、執務室は大騒ぎになる。ゲックハルト宰相は急いで室外に出て、ダムボックス将軍はロープに縛られた三人を執務室から出して騎士達と一緒に牢屋に連れて行く。ゴーイングさんは小さき守護者の仮面とマントを取って着替えを取りに行き、陛下と父上から健康状態を確認された。


 まずは声が出ない。健康状態は良好。体に違和感はない。水も飲めるし、矢が刺さった場所も傷一つない。……そういえば石が背中に当たったな。その場所を見せたら皮膚が青くなっていると父上から聞いた。……触られたら少し痛い。剣で切られても無傷の鋼鉄の皮膚にダメージが通った事に驚いた。修行不足かな?


「背中の怪我はどうしたのだ?」


 と父上に聞かれたので『石が当たった跡』と書く。声が出ない症状とは関係ないと思っていた。


「医者に診てもらって治してもらおう。それからこれは飲めるのか? ポーションだ。少し苦いが全部飲め」


 父上からポーションを貰って飲んでみる。全部飲んでみたが苦さは感じないな。声は……まだ出ない。麻痺毒で声が出なくなったのは初めてだ。今度から毒には注意しよう。

 ゴーイングさんが服を持ってきてくれたので、パーティー用の服から普段着に着替える。そしたらゲックハルト宰相が医者を連れて来た。

 医者はオレの症状を聞いて、喉を見たり、口の中を見たり、背中の怪我の場所を見てポーションを降りかける。そして、


「これを飲んでください。解毒ポーションです。少し苦いですけど良く効きます」


 匂いはしない。先ほど父上から貰って飲んだポーションと同じに思える。飲んでみて……苦さが後から感じ始めた。


「……ま、ず」


 あ、声が出た。でも喋る事は出来ない。


「今は、少ししか声が出ませんけど、三日後には回復するでしょう。朝にポーションを飲んで安静にしてください。それから背中の打撲はすぐに治りますから大丈夫です」


「ありがとうございます、先生。それで話せなくなった原因は?

「遅効性の毒だと思われます。パーティー中に毒を盛られた可能性が濃厚です」


 ……毒か。ミリアリア様の毒かな? それ以外は身に覚えがないけど。

 陛下や先王陛下から怒りのオーラが出ている。すごく怖い雰囲気だけど、二人とも親子だから似ているな。

 医者は陛下達の怒りのオーラに恐れて退出した。

 オレも『迷惑をかけました』と書いて皆に頭を下げる。


「アルムよ、お前に毒を盛った者はこちらで調べておく。すまなかったな」

「お主が怪我して帰ってくるとは……何が起きたのだ? 疲れていると思うが報告を頼む」


 陛下の謝罪と先王陛下の言葉に従い、ゴーイングさんが持ってきた紙に書く。パーティー中に陛下と宰相の執務室に賊が入って簀巻きにしたが、賊の数が多くて苦労した事。エルドラージ王国の王太子達を追ってルックナー砦方面に川がある場所で船に乗って逃げられた事。その場所で毒を受け、背中に石を当てられて怪我を負った事。そして川の上流に向かって走る船で逃げられた事を説明した。


「……信じられん。上流に走れる船だと? どんな形だ? 大きさは? 魔法か?」

「あの騎士達はあの距離を全員走っていたのか? 馬は使わなかったのか?」


 宰相が船の説明を求め、将軍は騎士達の説明を求めた。


「造船の技術、騎士の強靭さ、密偵の質、空を飛ぶ技術も真実か……。エルドラージ王国は他の国よりも、バルデハイム王国よりも強大な国になっている。数十年前とは比べ物にならない」

「そのようです。……今後の対応に間違い出来ませんね」


 陛下と父上が渋い表情をしている。


「それで、お前が連れて来た者達は誰だ?」


 先王陛下の質問には『エルドラージ王国の王太子が寄越したアドームル男爵領で悪事を働いていたヨーデンポリー元王国の者達です』と説明した。


「分かった。ダムボックス、尋問しておけ」

「分かりました」


 これで説明する事は無いかな。一息つこうとしたら先王陛下が質問をしてきた。


「アルム、お前はエルドラージ王国の王太子をどう思った? お主が感じた事を聞きたい」


 エルドラージ王国の王太子の事? あの王太子か……『良く分かりません』と書いて見せた。何考えているか分からない人だし、変な言葉を話す人だし。でも『深く考える事が出来て、油断できない人間』と書いて先王陛下に見せる。逃げる手段を考え、オレを撒くために罪人を連れて来た王太子は策士で油断できない人間だと思う。そんな国の王太子に狙われる事になるとは……。


「……そうか。アルムよ、ご苦労だった。今日は疲れただろう。声が回復するまで家で養生するが良い。ドックライム公爵よ、今日はご苦労だった。アルムをゆっくり休ませてくれ」

「ありがとうございます。では私達は失礼します」


 父上が頭を下げるので、オレも頭を下げて退出した。


「さて、屋敷に帰るか。アルムは任務で疲れただろう。先王陛下の御言葉通り休息をとれ。ご苦労だったな」


 頭を撫でられて二人で馬車に帰る。そういえば父上に小さき守護者の事を何も説明していないけど、先王陛下や陛下が説明したのかな? 馬車の中での会話もパーティー中の会話だけだった。オレは喋れないから頷いたら、首を振ったりしただけで、父上と長く会話していた。


「アルムはミリアリア様と踊ったがどうだった? 楽しかったか?」


 楽しいとは思えない悲壮的な時間でした。でも首を縦に振る。首を横に振るなんて出来ないよ!


「ミリアリア様もアルムと踊れて嬉しかったそうだ。任務がなければ五回くらい踊れたのにな」


 任務があって! エルドラージ王国の王太子が来てくれて感謝した! あの人が来なかったら地獄の舞踊を五回も踊る羽目になっていただろう。

 オレは良く分からなく油断できない他国の王太子に初めて感謝した。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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