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6 元王弟クックスライド

 私の名前はクックスライド。王族で現陛下の弟だった者だ。若い頃に馬鹿をして父親から、王族から外されて、継承権を破棄されてしまい、アドームル男爵領で謹慎をしている愚か者である。

 当初、アドームル男爵領では酒に溺れ、父や兄に恨みを言っては使用人に暴力を振るった。そして私を陥れた奴を何度呪った事だろうか。

 自堕落に生きていたが、一回りも年下である未成年のアドームル男爵令嬢が私を救ってくれた。

 最初は纏わりついてうるさい女だったが、段々と好意を持ち愛した。そして彼女が成人したすぐに子を授かった。

 しかし私は謹慎している身で、成人したばかりの令嬢に子供を授かったと聞いたアドームル男爵は、私を殴り、生まれてくる子供を分家の養子に出すと言って、私と彼女を引き裂こうとする。

 私は頭を下げて懇願した。「私はどうなっても良いから、妻は子供と一緒に生活させてほしい」と。

 未婚の令嬢を孕ませた事に怒ったアドームル男爵は私を殴りつけたが、必死に懇願した。


 アドームル男爵領で謹慎している私が男爵令嬢との間に子供が出来た事を、父である国王陛下が知ったらどうなるのかと脅され、最悪は子供を殺す事になるかもしれないが、彼女と子供だけは助けてほしいと必死に謝罪した。

 そして妻がアドームル男爵である父に言う。


「私達は死んだという事にして追放してください。私達の子供は殺させません」


 アドームル男爵に彼女は言った。そして男爵は条件を言った。その条件は私には最悪な条件だった。


「子供と一緒に生活したいなら、私が決めた男と結婚をしろ!」

「そんな条件を聞くなら、夜逃げします!」


 男爵の条件を却下して親子喧嘩を再開する。私は二人と落ち着かせようとしたが、親子に睨まれて黙ってしまう。……親子だから二人は似ているなと思った。


「私の結婚相手はクックスライド様だけです!クックスライド様以外の方には嫁ぎません!」


 アドームル男爵は怒りを露わにしたが周りの者達に止められて部屋を出て行った。彼女は赤子のいるお腹を触りながら言った。


「赤子がいる女と結婚する男なんていないわ。私は絶対に貴方と一緒に居るし、二人で子供も無事に育てましょう」


 その言葉で彼女に抱き着いて泣いた。私は彼女を絶対に幸せにしたい。その為なら何でもする。想いを胸に初心に戻り頑張るつもりだ。

 男爵に認めて貰えるように何でもする。勉強をして領地経営を覚えて、信頼できる人間になる。

 数年後、子供が五歳になった。アドームル男爵は妻に何人もの夫候補を連れてきたが、妻は全員を追い返した。


「私には愛人がいるので仮の妻が欲しかったんだ。お互い干渉せずに生活しましょう。しかし愛人に会う為にお金が必要だから、その金は払ってもらおうかな。お金で解決出来るなら安いだろう」

「だったら金持ちの妙齢の御婦人と結婚しなさい!」


 と言ってナンパ男を殴り飛ばした事もある。他にも……。


「しがない男爵家だと思ったが悪くない屋敷ではないか。結婚してやってもいいぞ?」

「こちらも選択する権利があります。貴方の様な屑と一緒になる事はありません」


 と言って屑男にお茶を掛けて追い払った。他にも……。


「パパやママがどうしてもって言うから結婚してあげるよ。ママはこっちに住ませて貰うよ。この食事よりもママが作ってくれる食事の方が美味しいだろうし」

「まずはマザコン直してから出直しなさい!」


 と言ってマザコンデブ男を叱り飛ばした。他にもいろんな者達と出会ったが全員を追い返した。

 しかしアドームル男爵はどうしてナンパ男や屑男やマザコンなどの人種ばかりを妻に紹介したのだろうか? ほかに候補は居なかったのだろうか?

 私と男爵との関係が良くなったのは息子が八歳くらいだった。

 私も男爵の仕事を手伝えるようになり、信頼されている。

 男爵も孫が可愛いのか、孫と遊んでいるのを見かける。妻も男爵と仲が良くなり、夫候補の紹介もなくなって幸せな日々が続くと思っていた。

 しかし男爵の体調が悪くなり、寝込む日が続いた。私は男爵の代理で領地経営をして、妻は男爵の看病をする。息子も私の手伝いをすると言って一緒に執務室で勉強をしている。

 私は息子に文字を教え、計算を教えると瞬く間に覚える。歴史や地理の本も一度読んだら全部覚える天才児だった。

 私は息子に領地経営を手伝わせてみた。……莫大な資料を覚えて私を手伝ってくれる。一年後は私の下で働いていたが、その二年後には私が補佐するような立場だった。私の息子は天才だ!


 悪い事は連続して起きる。

 アドームル男爵が病で倒れているときに、他領の貴族の子爵が訪問してきた。借金を返済しろと言っていた。借用書にはアドームル男爵のサインがある。そして借金の額は利子で増えて元金の数倍になっている。こんな金額を払う事は出来ない。違法だと言って追い返そうとしたが、


「王弟殿下、謹慎しているにもかかわらず、御子息がいるとの事ですな。陛下が聞けばどのような事になるのか……」


 私達は陛下に子供の事を伝えていない。息子を連れて行かれると思って言えなかったのだ。だから息子の事は秘密にしていたのに……。こいつはどうして息子の事を知ったのだ?

 しかし無い金は出せない。借金の返済は無理だと言ったら、


「だったら私の知り合いを男爵領に住まわせてほしい。それで返済期間を延ばそう」


 アドームル男爵領主の代理である妻はその条件を飲んだ。当主の病が治れば元通りになるからと言って。妻は現状の維持を望んだ。本当なら陛下にアドームル男爵領での事を伝えないといけないのだが、私は妻の言葉に従った。

 条件の通りに何十人もの人間がアドームル男爵領にやって着て町で働く人間が増えた。そして町に来る人間は日に日に増えて千人近く居るかもしれない。

 これ以上の他領からの人間を増やす事は無理だ。現に町では住民との争いが頻繁に起きている。

 そしていつの間には男爵家でも働き始めている。いつの間には何十人もの人間が屋敷で働いていた。

 今まで手伝っていた部下を押しのけて、その地位に就く。多少は仕事を出来るようだが、「税を上げろ」とか「平民からむしり取れ」とか言って増税案を出している。

 そんな事出来る訳ないだろう! 新しい部下の案件を一蹴する。

 息子には今までの領地経営をさせて、私が新しい部下達を纏め役となった。男爵の体調が回復せず妻も看病に付きっきりだ。

 そんなときに子爵が訪問してきた。病で倒れている男爵を見舞いにくるそうだ。

 私は男爵家に招き入れた。少し護衛の数が多かったが気にしなかった。それが間違いだった。

 子爵は妻と子供を人質にした。そして男爵家に住む者達を縛り上げて牢屋に入れる。男爵がいる部屋は厳重に警備されているそうだ。


「王弟殿下。貴方に質問があって参りました。嘘をついたら貴方の愛人と息子が痛い目をみますよ」


 妻を愛人と言われたのは腹が立ったが、私は質問に答えた。バルデハイム王城の隠し通路や場内の見取り図などを喋った。妻や息子は剣を当てられて、何も出来なかった。

 それから屋敷に住む平民の者達は殺され、子爵家から来た使用人が男爵家で働き、他国の商人や貴族が男爵家の金を使って何かをしている。

 男爵と妻は男爵家の部屋に隔離され、私は生き延びた使用人達と一緒の牢屋にいる。息子は人質として子爵の近くにいるらしい。私には何もできない。

 半年近く牢屋に居たがなんとか情報収集が出来た。なんでも男爵家に居る者達はヨーデンポリー王国の貴族達で他国に奪われたらしい。

 ……ヨーデンポリー王国って我が国と争っていた隣の国だよな。それが奪われた? 戦争で負けたのか? あの国が? 

 話を戻そう。子爵はヨーデンポリー王国と繋がっており、屑男もヨーデンポリー王国の愛人と金を受け取っていたそうだ。その見返りがバルデハイム王国を入国許可証で、子爵は他国の者達を入国させていたのだ。どうやって? まさかアドームル男爵の名前を使ったのか?

 アドームル男爵は私の教師役と、王城勤めで入国管理の仕事を務めていた。その部署でアドームル男爵の名前を出せば入国許可証は簡単に取れる。許可証を偽造したのか!

 それから少し前に白紙依頼書に名前を書かされた。人質を取られて仕方なく署名する。前に牢屋を出た使用人が何人かいたが死体になって戻ってきたのだ。

 私はどうすれば良いのだろうか。半年も牢屋で生活をして、妻や息子の安否も分からない。同じ牢屋に捕まっている者達も体調を崩している。特に年老いている者達の体調がヤバイ。これ以上牢屋に居たら死ぬ可能性がある。

 ……どうすれば良いのだろうか。

 いきなり『バキィ』とドアが壊される音がして、全員がドアの方を見る。


「父上! ご無事ですか!」


 ドアから入って来たのは息子と変な仮面をかぶって、マントに身を纏っている小さい人間だった。

 


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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