十二歳①
バルテハイム王国で奇妙な事件が起こっている。王宮で文官・武官が簀巻きにされて気絶して倒れているのが発見された。その近くには不正の証拠や殺害の計画等、そして現場で刃物や毒物などが発見された。国王をはじめ側近たちはその者達を取り調べた結果、他国に機密を売ろうとした者、他の貴族を殺そうとした者、毒物で誰かを殺そうとして毒を手に入れた者。その様な未遂で終わった事件が数件起きた。
国王や宰相達は誰がこの様な事をしたのか調べた。調べた結果、罪人の言葉で「仮面を付けた小さい人間に襲われた」と言う。……宰相を助けた先王の配下の者だと分かった。
王がその者に褒美を与える為に先王に願ったら断られた。理由を聞いたら「近いうちにその者に会わせるから今は待っていてくれ」と言われた。その言葉を信じて王を含む側近達は調べる事を止めて小さい者の事を小さき守護者と呼ぶ事にした。
そして王宮で小さき守護者の噂が国中に広まった。
※
十二歳になり来年は学院に通う事になったドックライム公爵家次男のアルムエルグです。このところ疲れています。昼間は学友としての任務、夜は王宮で賊退治。学友として頑張っていますが何故かラーブスとデーデルから行われる陰険な行為に困っています。そして特定聴力強化の魔法を使い続けてドジが増えてベルファルト殿下に怒られています。
ベルファルト殿下はヤンチャな子供から王族の品格が出てきて自他ともに厳しい王子になりつつあります。そんな横を支える剣術が得意のラーブス、魔法が得意で頭の良いデーデル。おまけの欠陥魔法使いのアルムエルグと今では言われています。
……学友辞めたい。
そして王宮は輝かしい者達が働く素晴らしき場所ではなく、ドロドロした悪意が蠢いている場所と認識しました。嫌がらせ・妬み・嫉妬・憎悪・腹黒などなど、人を陥れたり、傷つけたり、憎んだりして酷いモノです。何人もの人間が殺そうとしたり、毒殺しようとしたりしているのだから。
こんな事なんて知りたくなかった。しかし先王陛下との約束で王族たちを守る為に任務を遂行する。頑張れオレ!
母と妹は父がいるローデンファング公国に行き、兄は宮廷魔術師団に入り寮で生活を始めた。家族がバラバラになっているが仕方がない。これも公爵家に生まれた者の務めだろう。
そして屋敷に新しい住人が来た。叔父の息子であるクルックスである。二年後には学院に行く事になるから王都で勉強をするそうだ。クルックスは礼儀作法も勉強も出来て魔法も使える。他の貴族達にも叔父は自慢の息子と言っている。
クルックスが屋敷に来た事により使用人の変更が起きた。王都で働いている者達は公爵領の屋敷で働き、公爵領の者達が王都の屋敷で働く事になった。叔父は両親から許可を得ていると言っているので何も言えなかったしその時は大丈夫と思っていた。
そして叔父に屋敷の離れの家を勧められた。経費削減の為だそうだ。特に疑問を持たなかったのでオレは屋敷の離れの家に移り住んで、叔父と従兄の二人が屋敷で生活を始めた。
離れの家では使用人が料理を居間に置いて偶に掃除に来る。そのような場所でオレは一人で生活を始めた。ラッキーと思った。これで朝からローデンファング公国に行ける!仮病も使わないで済む!使用人に注意しなくても良い!一人暮らし万歳!これで自由に生活が出来る!今度日保ちする食材を買っておこう!
王城に先王陛下とゴーイングさんが帰って来た。ローデンファング公国は大変だったそうで先日会いに行ったときに愚痴を言われた。
「こんな老人に働かせるなんて酷い息子だと思わないか?」
それを肯定したら王族批判で罪に問われませんか?ゴーイングさんも笑ってないで助けてください!
ミリアリア様は神殿で本格的な神聖魔法の修行を始めた。その数日前にお茶会をして久しぶりの毒舌に気落ちした。王妃様と先王陛下が同席したお茶会で久しぶりに毒舌を聞いた気がする。
成長するにつれて毒舌も成長するんだな……。本当に思った。途中で王妃様が体調を崩してお茶会は中断となった。先王陛下はオレを連れて自室に行き、頭を下げて謝る。
「すまん!ミリアは恥ずかしがっているのだ!」
そのセリフは王妃様からも聞きましたよ。大丈夫です。慣れていますから。それよりもファラレスト様は元気ですか?手紙では元気みたいですけど。
「ファラレストは領地経営を頑張っているぞ。今度行ってみるか?」
「まとまった時間が取れるなら是非」
「それで王宮の罪を犯した者達の件だが……」
「報告書を持ってきました。私は現場を押さえて捕まえた者達は簀巻きにしましたが、それ以外の者は簀巻きにしていませんが報告書に記載しています。証拠も不十分なので捕縛出来ませんでした」
「そうか……。それはこっちで対応する。そしてお前が前に言っていた特定聴力強化だったな。頻繁に使って大丈夫なのか?」
「大丈夫です。睡眠不足にも慣れましたから」
「そうか。しかしお前はまだ子供だ。危ない事はするなと言いたいが。国を守る為にお前の力が必要な時が来るだろう。その時は頼む」
「私はドックライム公爵家の者です。国を守るのは当然です。そのような心配など無用です」
「感謝する」
頭を下げて謝る先王陛下。その後、ゴーイングさんと三人で話した。
※
フルブルーグ・バルデハイムは頭を悩ませる。目の前にいる恩人のアルムエルグの事だ。
私がローデンファング公国に行っている間に起こった事を思い出す。まずはアルムの噂の件だ。一旦は抑え込んだが再発した。今度は落ちこぼれの公爵家次男として。魔法が使えず、頭も悪い、ドジで何もない所で転ぶ。権力を使ってミリアリア姫の婚約者になったが嫌われている。そんな噂だ。噂の発信源は王宮で貴族達やその関係者は耳にしているそうだ。これはどうにかしないといけない。
次にバルテハイム王国の貴族達に蔓延る犯罪。私も苦労をした。国王時代に何人もの貴族の首を物理的に切ったものだ。アルムはその罪人を秘密裏に簀巻きにして捕まえている。そして報告書にはその予備軍が多い。これは息子に渡すか……。
最後に今回のお茶会の失敗だ。失敗した原因は一つ、私がお茶会に急遽参加したからだ。恩人と孫のお茶会に参加する。普通は良いと思う。しかし普通のお茶会ではなかったからだ。
ミリアリアのお茶会は台本に沿って流れている。私がお茶会に参加した事で台本通りに行かなかった。ミリアリアが毒舌を吐きアルムを落ち込ませる。王妃や側近や学友がアドリブで台本通りの流れを戻そうとしたが失敗した。そして最後の手段、王妃の体調不良によるお茶会中断作戦。これでお茶会は終わった。……後味が悪いお茶会になった。
私はアルムを自室に招き入れて今までの事を聞く。そろそろ息子や側近達に小さき守護者の正体を教えた方が良いだろう。噂の件もある。上層部がアルムを信頼できると思えばその者達もアルムの噂を信じなくなるし消す事も出来るだろう。しかしアルムの正体を明かすのにもタイミングというモノがある。いつ打ち明けようか……。
アルムが退席をして王妃の使いが今回のお茶会の報告書を持ってきた。それに目を通していると来客との知らせが来た。誰であろう?
「お久しぶりです。お爺様」
「久しぶりだな、ベルファルトよ。大きくなったな」
「ありがとうございます」
「して急にどうしたのだ?」
「はい、私の学友を紹介しようと思いました。宰相の息子のデーデルと騎士団長の息子のラーブスです。デーデルは魔法の才能があり頭も良いです。ラーブスは剣の腕は私より数段上です」
アルムから話を聞いている。悪い噂もな。ゴーイングに噂の確認をしてもらっておる。良く私に挨拶に来れたものだ。
「初めまして、先王陛下。ラーブス・ギンガムと申します」
「お初にお目にかかります、先王陛下。デーデル・ダンムレイと申します。この度はご尊顔を拝見でき誠に……」
「やかましいぞ! 青二才。親のコネで学友になった分際でよく私の前に顔を出せたな!」
「お爺様?」
「私が王都に居ればお前達など学友にはしなかった。ベルファルト! お前はこいつらを有能と思っているがそれは間違いだ! 同年代でこの青二才どもよりも有能な奴は何人もいる! ベルファルト!お前もだ! この程度の者が有能な者? お前は人を観る観察力を身に着けろ!人は才能が全てではない! 信頼や思いやりが出来る人格者も有能な者達だ。今後はそれを自身が身に着けるのが課題だ! そこの青二才ども!私に名前を呼んでほしければ私が信頼しているアルムくらいの優しさと思いやりと忠誠を身に着けろ!」
ふむ、顔を真っ赤にして俯いている。性格の修正は不可能かもしれん。こいつ等の評判は良くないし、アルムにした悪辣な事を考えると間違った人選だと思わないのか?こいつ等の親は知っているのか?
「ベルファルトよ。今日はお前に人の見極め方を教えよう。そこの盆暗共は帰って良いぞ。ゴーイング、送ってやれ」
二人をゴーイングに命じて退出させる。さて久しぶりに二人で話すな。
「お爺様?」
「偶には私が教師となりいろいろと教えよう。まずは人間関係からだ」
※
「何を怒っている。デーデル。感情を表に出すな。その様な顔は食事中にする顔ではないぞ。何かあったのか?」
食事中に父から咎められた。ベルファルト殿下に紹介されて先王陛下に言われた事に苛立ちを覚えて表情に出ていた。
「今日、先王陛下とお会いしたのです。それで私をお気に召さらず……」
「なるほど。まだ子供だから仕方がない。私もそうだった。陛下の学友となって挨拶に行ったら青二才と言われたモノだ」
「そうなのですか!」
「先王陛下は気難しい苛烈な方だからな。私も良く怒られたものだ」
「しかしアルムと比較されたのですよ!あの欠陥魔法使いと!このような侮辱はありません!しかもコネで学友になったと言われたのです。アルムだってコネで学友になったのに!」
「アルムエルグは陛下の願いで学友となったのだ。彼は下位だが王位継承権を持つ公爵だ!私達とは違う」
「そんなことありません!私よりも能力が下です!」
「お前よりも前に王宮に上がれる礼儀作法を身に着けた子供が無能な訳がないだろう。現にお前は礼儀作法を覚えるのが遅かった。それに彼が学友となってからはベルファルト殿下の教師達から評判が良い。信頼されている証拠だ」
「しかし!」
「お前が何と言おうと勝手だが彼は公爵の御子息だ。学友とはいえ無礼な真似は許されないぞ」
食事を終え自室に戻る。父から言われた事を思い出して怒りがこみ上げる!
「あの無能が私よりも上だと! 冗談だろう! あんな奴よりも私の方が何倍も有能だ!」
これほどの怒りは生まれて初めてだ!アイツを蹴落として私がミリアリアと婚約して王族に入ってやる。そしてアルムをこき使って苛め倒してやる!
※
「ラーブス、訓練中に何を考えている。そんな集中力で訓練をするのではない。何かあったのか?」
訓練中に父から咎められた。ベルファルト殿下に紹介されて先王陛下に言われた事に苛立ちを覚えて表情に出ていた。
「今日、先王陛下と会ったのですが、私をお気に召さらず……」
「なるほど。まだ子供だから仕方がない。私も言われたからあまり気落ちするな。陛下の学友となって挨拶に行ったら青二才と言われたモノだ」
「そうなのですか!」
「先王陛下は気難しい苛烈な方だからな。私も良く怒られたものだ」
「しかしアルムと比較された!あの欠陥魔法使いの無能と!こんな侮辱を受けたのは初めてです!しかもコネで学友になったと言われた。アルムだってコネで殿下と学友になったとのに!」
「アルムエルグは陛下の願いで学友となったのだ。彼は下位だが王位継承権を持つ公爵だ!私達とは違う」
「爵位なんて関係ない、オレよりも能力が下の無能だ!」
「お前よりも前に王宮に上がれる礼儀作法を身に着けた子供が無能な訳がないだろう。現にお前は礼儀作法を覚えるのが遅かった。今でもコレートから礼儀作法が疎かだと聞いているぞ。それに彼が学友となってからはベルファルト殿下の教師達から評判が良い。信頼されている証拠だ」
「しかし!」
「お前が何と言おうと勝手だが彼は公爵の御子息だ。学友とはいえ無礼な真似は許されないぞ。今度そんな口調で喋ったら礼儀作法の授業を増やしてやろう」
訓練を終え自室に戻る。父から言われた事を思い出して怒りがこみ上げる!
「あの無能が私よりも上だと! 冗談だろう! あんな奴よりも私の方が何倍も有能だ!」
これほどの怒りは生まれて初めてだ! アイツを蹴落として私がミリアリアと婚約して王族に入ってやる。そしてアルムをこき使って苛め倒してやる!
閑話 姫様頑張る~花束編~
「この花束は如何されたのですか?」
「知らない方からの贈り物です」
「……これはアルムエルグ様からの贈り物ではありませんか?」
「そんなはずはありません!アルム様がこんな当たり前な花を贈る訳ありません!」
「さようですか。では誰からの贈り物でしょう?」
「どうしてアルム様は私に花束を贈ってくれないのでしょうか?」
「前のお茶会で花の話をされたら「花を切るなんて残虐な事をするのですか!この卑劣漢!」と言ったからでしょう」
「そんな事言っていません!」
「言いましたよ。ほら報告書には記載があります」
「……私はアルム様から一生花束を貰えない運命なのね」
「他の殿方から貰えるのでは?」
「他人から花束は要りません」
「……今度、私がアルムエルグ様と話す機会がありましたら手土産に花束を準備させましょう」
「本当!」
「その代わり、毒舌を言っては駄目ですよ、貶す言葉も駄目です! 気落ちする言葉を吐いてはいけません!」
「分かったわ!」
「それでミリアリア様の花の好みを教えてください。アルムエルグ様にお伝えします」
「私の好きな花はアルム様が持ってきた花よ!」
「……その花の種類を教えてください!何でもいいですから!」
「ファム! アルム様が持ってくる花束が何でも良い訳ないでしょう!」
「ではアルムエルグ様が用意する花束は私の好みの花を伝えますよ。これでミリアリア様は花の趣味が私と一緒になりました!」
「ちょっとそれは駄目! 待って! 少し考えるから!……そうだわ! アルム様の好みが私の好みにしましょう! お揃いです!」
「アルム様は花が嫌いになっていますよ。ミリアリア様のせいで」
「では私も花が嫌いになりました!」
「それでは花束を貰えませんよ」
「……ゆっくり考えるから時間を頂戴」
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。




