表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
12/128

3 ローデンファング国

 ローデンファング国の首都は海に面している港街である。

 貿易が盛んで港には多くの船があり、さまざまな物がこの場所で売り買いされている。

 新鮮な魚介料理が目玉で祝勝会では美味しい料理が待っているはずだ。


「とても奇麗な首都ですね!それに海を初めて見ました!」


 馬車から外を眺める。初めての街と海と船を見て興奮する。なんて広い海なのだろう! 大きい船だ! 先王陛下が外を眺めていたオレに言う。


「そうか、知っているか?海の水は塩水なのだぞ」

「はい、知識としてだけですが聞いています。海の水はどのくらいしょっぱいのでしょう

か? 一リットルの水の中に塩が一割くらい入っているのでしょうか?」

「……詳しくは調べてみるが良い。そういえば土産を買うのだったな」

「家族と知り合い達の分を買う予定です」

「……それでミリアリアには何を買う予定だ?」


 ニヤニヤ笑い孫へのプレゼントを聞く先王陛下。今なら好々爺で通りそうな顔だな。


「珍しいモノを買う予定です。出来れば衝撃に強くて壊れない物をと考えています」


 投げられても壊れない物が良いよね。衝撃に強い物を土産にしよう。


「……宝石か? ここで宝石と言ったら真珠が有名だな」


 なるほど、真珠なら御土産にピッタリだな。母親や妹や王妃様や屋敷の侍女たちの分を買って男には何を買うか……。出来れば街を散策したいな。散歩する時間を作って許可を貰おう。


「しかしどうして衝撃に強くて壊れない物なのだ?」

「……投げられても壊れない様にと思って。あっ!大きな時計塔ですね!」

「あれはこの国のシンボルの時計塔だ。何年もの月日をかけて作ったそうだぞ」

「素晴らしいですね!」


 大きくて壮大な時計塔を通り抜けて王宮に着く。

 その後、先王陛下は国王と謁見し、オレは与えられた部屋で待機している。オレはソファーに座り背伸びをしてリラックスした。


「暇だ」


 暇だった。豪華な部屋に一人で居て何もする事がない。人が来るかもしれないのでマナー良くしないといけないし。

 ……よし! 先王陛下から禁止されているが聴力強化して特産物の情報を集めよう。城下町の情報だったら大丈夫だろう!

 確か港町の方角は……。


「……戦力はそろった。後は計画を待つだけだな」

「祝勝会の前夜祭に紛れて兵を配置します。まずは城下町で騒ぎを起こして守備隊を分散させて、その隙をついて蜂起しエルズアリア様を奪還する予定です」

「エルズアリアはどうしている?」

「王宮に閉じ込められていると聞きます」

「ローデンファング国め!我が国の秘宝を奪還する為には皆の協力が必要だ!蜂起まで準備を怠らない様に!」


 ……場所が違ったようだ。他の場所を探そう。


「……これをワインに一滴垂らすと瞬く間に命を失います」

「本当に効くのか?」

「勿論です。この毒の素晴らしい点はあっという間に死ぬ毒です。周りからは心臓発作と勘違いされるでしょう。しかしワインに入れないと効力は発揮しない毒ですから注意してください」

「それを買おう。これでエルズアリアの毒婦を始末できる」


 ……また変な場所だったな。他の場所を。


「……これが暗殺の標的か。奇麗な女じゃないか」

「名前はエルズアリア。王宮内にいるが何処にいるかは分からない。しかし祝賀会やその前夜の前夜祭には出席するらしい。その時が狙い目だな」

「分かった。しかしこの女をさらうのは駄目なのか?良い女じゃないか?」

「駄目だ。必ず殺せ!」

「そんなに怒るな。分かったよ。仕事は全うするからそんなに怒るな」


 ……もう良いや。今度直接見て土産を探そう。しかし物騒だな。蜂起とか毒殺とか暗殺とか。

 何が起きているのだろう? この事は先王陛下に伝えた方が良いのかな?名前はエルズアリアって人か。話から聞くと女性の様だが……。

 ノック音が聞こえる。入って来たのはゴーイングさんだった。


「アルムエルグ殿、先王陛下がお呼びだ。一緒に来てくれ」


 オレはゴーイングさんと一緒に案内係の後について行く。奥に進み王族の生活する場所まで来た。その更に奥の部屋まで案内されて部屋に入る。

 部屋には先王陛下と妙齢の女性、そして顔を布で隠してある女性の三人。側近の人達も居ない。


「遅かったな、アルム、ゴーイングよ。こちらに来い」


 オレは先王陛下の横に座り、ゴーイングさんはオレ達の後ろに立つ。


「紹介しよう。ワシが一番信頼している二人だ。護衛のゴーイングと、非常識少年のアルムエルグだ。アルムよ、ワシの妹でこの国の先代王妃であるファラレストだ。お前の祖母の妹でもある」


 オレの祖母はドックライム公爵家に嫁に来た元王族で、オレが生まれる前に亡くなったので面識はない。


「初めまして、ドックライム公爵家次男のアルムエルグと申します。祖母の事は姿絵しか拝見した事がありませんが、先代王妃様に似て親近感を感じます。どうぞよろしくお願いします」


 先王陛下の非常識少年と言う言葉を無視してこの国の先代王妃に挨拶をする。


「はじめまして、私がローデンファング国に嫁いだ貴方の祖母の姉よ。お祖母ちゃんと呼んでも良いわよ」

「恐れ多い。しかし私は祖母と呼べる方が居なかったのでそのような言葉をかけていただいて嬉しく思います。ファラレスト様」


 先代王妃との挨拶が終わり、今度は顔を隠した女性を紹介される。


「ファラレストの隣に居る者がエルズアリアと言う。ローデンファングに負けた国の貴族の娘だ」

「初めまして、顔を隠す不敬をお許しください。エルズアリアと申します」


 ……確か奪還対象と毒殺対象と暗殺対象の人だよね。


「今回、私がお兄様を頼った理由はこの女性の事なのです。彼女は神からは祝福を授かっているのだけど、その祝福のせいで国が滅びそうなのよ」


 どういう事? 先王陛下の表情が変わる。


「言ってくれ。この二人にも聞かせるべきと思って呼んだのだ」


 ファラレスト様は隣のエルズアリアさんを見る。そして顔を隠していたが悲しそうな声で少しずつ話した。


「今回の戦の原因は私にありました。私が神から授かった祝福は好意を持たれる祝福でした。その対象者は三十代から五十代の異性です。幼い頃からその条件の者達に好かれ、私が年頃になると大勢の方から結婚の申し込みが来ました」

「その結婚相手は中年男性なのだな」

「はい、私の父は断り続けました。しかし国王から側室に選ばれたのです。父は断り続けましたが権力に負け、私は国王陛下の側室になりました」

「苦労したのだな」

「その後、国王を恨んだ父はローデンファング国に情報を流して国に攻めてこさせました。味方する条件は私を助ける事。その後気づいたのですが、父も私の祝福の対象者だと」

「なんと……」

「故郷は滅び、私は父に助け出されました。そしてローデンファング国王に面会させられて、私は人質としてこの国に連れてこられました。国王も祝福の対象者で人質よりも側室にされました。私の祝福は異性には好意を持たれる祝福ですが、好意の対象外の人達には故郷を滅ぼした女と言われて嫌われています。一番嫌われている人は三十代から五十代からの女性です。その女性達から恨まれ続けました。恨まれて当然です。私に好意を持った人達は妻子を持つ中年男性なのですから。妻やその子供に恨まれて当然です」

「そして私の息子がエルズアリアに惚れて権力を使って人質にしたわ。王妃も怒って何度も話したのだけど聞く耳持たず。最終的に私がエルズアリアを保護する事にしたの。それでも納得しないのか今度は私に文句を言ってくるわ」


 エルズアリアさんの説明をファラレスト様が引き継ぐ。……祝福ってすごいんだな?一人で何もしていないのに国を亡ぼすなんて。

 権力も持っている中年男性を魅了する祝福。神様は迷惑な祝福をどうして与えたのだろう?


「そして私に父から手紙が来ました。暗号文で書かれている手紙で内容は「助け出すから待っていてくれ」という内容でした」

「その手紙の内容を聞いて私は息子に伝えたのだけど「心配ない」と言うだけ。そしてこの祝勝会に参加するお兄様に力を貸してもらおうと思って訳を話したの」

「……なるほど。だから今回の話し合いは中年男性入室禁止だったのだな。この場に居るのは年寄りと子供だけ。祝福の対象外だからか」

「お兄様の言う通りです。どうか力を貸してください」

「しかしワシらだけでは……。アルムよ、どうするべきだと思う?」


 座っているオレを見る先王陛下。そしてオレに視線が集まった。先に聞くべき人間は他に居るでしょう! 何を言えば良いんだ?とりあえず先程聞いた事を言うべきだろう。

 

「えーと、祝勝会の前夜祭に紛れて兵を配置して、城下町で騒ぎを起こして守備隊を分散させて、その隙をついて蜂起してエルズアリア様を奪還する予定でしょう。それからワインに毒物が入れられるから飲まない事をお勧めします。後、暗殺者に狙われているから人目に付くところには行かない方が良いでしょう」

「……アルムよ。具体的な話だが何を聞いた?まさかと思うが禁止した聴力強化を使ったな!勝手に使うなと言ったであろう!」

「すいません、暇だったので御土産の情報収集をして」

「だからってどうして蜂起や毒殺や暗殺の話を仕入れる!どこで聞いた話だ!」

「多分、港の方です」

「港のどの辺だ?具体的な場所は?」

「お兄様、まずはアルムエルグさんの頭を持って浮かせる行為を止めません?虐待は駄目ですよ」


 アイアンクロー反対です!先王陛下も案外力あるな、頭をつかんで持ち上げるなんて。


「この程度が虐待になる様な鍛え方をしている奴ではない。遊びの様なモノだ!吐け!どこで聞いた話だ?」


 頭を掴まれ宙に浮いている子供が遊んでいるなんて虐待ですよ。先王陛下は器用に喋れるように頭を掴んでいるし。


「蜂起に関してはネズミの鳴き声が聞こえていたから何処かの広い倉庫だと思います。毒殺に関しては二人の男性が狭い空間で話していて、海鳥の声は遠かったですね。暗殺に関しては良く分からないです。男女の二人が話していて場所は静かな所で、二人の以外の声は聞こえませんでした」

「ゴーイング! お前が指揮を取れ!条件に合った場所を探すのだ!」

「お兄様! 私の護衛の者も使ってください!港の地理に詳しい騎士を派遣させます!」

「頼んだ! そして後はお前の処遇だな。アルムよ」

「……先王陛下、私を掴んで大変ではありませんか?下ろした方が良いと思います」

「ワシの事は名前で呼んで良いと言ったのに。罰が増えたな、アルムよ。ワシは数日前からお前に有効な罰を考えていたのだ。まずはこれを喰らえ!」


 ……結論として先王陛下の罰は効かなかった。罰の内容は御婦人には見せられない様なモノでエルズアリア様は顔を横にして視線をずらした。

 しかし嬉々としてそれを実行した先王陛下は妹に怒られた。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ