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君と僕の幸せを掴むため。  作者: 獅子印
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質問(できたらいいな)

「さあ、行こうか」


 言いつつ舞は扉から入って行く。


「ちょ、ちょっと待って!」

「へ?なに?」

「これ、目的地はどこなの?」

「えーっと……真ん中の塔の頂上だね」

「だったらさ……」


 僕はリュックから巻いてあるワイヤーを出し、フックにくくりつけた。それをくるくる、と回して反動をつけ、投げる。

 照準はばっちり、窓に入った。そのまま一気に引くと窓に引っ掛かる。これで登れるようになった。


「さ、舞も。手袋忘れないようにね。手切れるよ」

「あ、うん……」


 「なんで元表の子がこんな……」と舞は首をかしげるが、僕は知らないふりをして登りだ……そうとしてやめた。


「どうしたの?」

「いや、舞が先に登って」


 舞はまたも首をかしげた。


「私今スカートじゃないよ?」

「覗かないよ……いいから、早く登って。あ、そうそう舞。敵に会ったら殺しても構わないの?」

「うん……?じゃないと刃物なんて持ってこさせないし」

「ん、ありがとう。じゃあ登って。登りきったらこれ回収してね」


 そう言って僕は走り出した。理由は簡単だ。遠くから、光が反射した。おそらく狙撃手スナイパーだ。

方向的に舞は射線が通ってないからとりあえず大丈夫として、僕は一つのケースを取り出した。舞からスリ取った、黒い粒がたくさん入ったケース。舞は10ケースほど持っていたから困りはしないだろう。

 僕が舞と別れた理由は簡単、陽動だ。見つかった以上、舞に攻撃させるわけにはいかない。男として。


 中央塔とはちがう、向かって左側の塔に入る。螺旋階段のようだったので、三階まで上がり、中央の吹き抜けに向かって爆弾を十粒ほどぶん投げた。

 派手な音がして僕のもとまで爆風が届いた。うわっ……やばいな、これ。現代科学で到達できるレベルを越えている気がする。


 窓から中央塔を見ると、舞はまだ半分ほどしか登っていない。窓に入れたら安心なのに……しかし「もし」を言っても意味がない。ちなみに僕が引っかけた窓は塔全体の半分くらい。ちょうど今僕がいるくらいの高さだ。舞も連れてこっちから行った方が良かったかもしれない。


 吹き抜けから下を見た。随分と敵が来ている。陽動は成功しているようだ。

 しかし彼らは忘れている。こちらには超威力の爆弾があることを。

 ケースには残り40粒。どうやひとケース50粒入っているらしい。僕はまたも十粒下に投げた。爆風に吹かれつつ階段をかけ上がる。四階。目の前の扉から大男が出てきた。


「あ……?ガキ!?」

「うるさい!」


 あらかじめ抜いていた刀を振る。彼は二つになって倒れた。僕は通り抜けざまに後ろに蹴る。そのまま落ちていくと、その巨体が落石のように後続に襲いかかる。……やっぱり居たか、追っ手。

 窓から舞がラペリングを終え、窓に入る姿が見えた。もう一階登っておきたい!

 休むことなく走る。途中、働いているだけであろう職員の方が居たので刀の柄で殴って気絶させておいた。足止めにもなるだろうし、殺すのは忍びない。ベストだと自分で思う。

 五階に到達した!


「よし、これでーーー」

「『これで』なんだっつーんだ?ガキ」

「!」


 刀の風切り音を受けて、僕は跳ぶように後ろに下がる。さっきまで僕が居たところを通りすぎる刃。そこを過ぎると、刀は滑らかに鞘へと戻った。


「なんだァ、日本刀好きの同志か?殺すにゃぁ忍びねえなあ」

「……生憎、これは繋ぎの武器だよ。入ったばっかりでまだ自分の武器を持ってないんだ」

「あァ?てことはてめえ……別のチームのやつか!?かかか、ここが『チームB』のアジトだって知った上で入ってんのか!?」


 ぎゃははは、と下品にわらう。僕は笑わないで正面の敵を見ていた。

 こいつ、強い。

 少なくとも伊織より上だ。


「じゃあやるか……俺はチームB、No.3『油刀デスリザー・エスパーダ』だ。てめえは?」

「僕は……まだコードネームを持っていないんだ」

「あ?本当に入りたてなんだな……じゃあ名乗る名前無いのかよ」


 頭を掻く男……『油刀』。フケが豪快に出て気持ち悪い。油ってのは彼の肌を表すんじゃないだろうか。


「須藤要だ」

「は?須藤要……って本名かよ。いいのか?そんなの名乗って」

「問題ないよ」


 僕は刀を抜いた。


「ーーーどうせ、君はすぐに死ぬ」

「……上等だ」


 油刀は構えた。僕も構える。そんな戦いはーーー

 下から聞こえた悲鳴で、途切れた。

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