僕の武器
「武器かあ。私も考えたなあ」
僕は早速部屋に帰り、舞に相談にのってもらっていた。
「舞の武器はどんなの?」
「んー?私はこれ」
舞は小さなケースを取り出した。中には黒い粒がいくつも入っている。
「何これ?」
「爆弾」
ザッ!
僕は急いで距離を取った!舞は笑いつつ僕に説明を始める。
「あはは、大丈夫だよ。これはケースが特別製で、この中にある限り絶対爆発しないようになってるの」
「や、でもそれが壊れたら……」
「壊れないよ。なんか源の刀より強い素材でできてるらしいよ」
源の刀、『無神論者』だっけ。多分相当いい素材だ。それに、間合いを操作するという単純極まりないけれど、それゆえに強い特性。多分ああいうのが理想なんだろう。
もしくは、戦闘以外を含む汎用性を高める?
「……んー、わかんないなあ。どうしよう」
「どうって……要の好きにすればいいんじゃない?」
「それはそうなんだけどね。趣味で考えるのも違うじゃん?命を預けるわけだし」
「え、私の爆弾って趣味だけど……」
「……」
なんか空気が冷えた気がする。
僕は空気と共に話題を戻した。
「そういえばこれさ。武器って言ってるけど防具でもいいの?」「あ、いいはずだよ。変わり種の……伊織の『蜂』なんかそんな感じだし」
「『蜂』って……あれ?」
僕は伊織の武器を思い出した。針のついた靴。毒があって、刺されるとそこが動かなくなるという凶悪な性能を持った武器。反面、靴なので防具とも言える。
「あんな本人の性格が表れたようなの使いたくないなあ……」
「……それ、伊織の前で言わないようにね?」
「陰湿だよねえ」
舞は冷や汗をかいていた。案外伊織は怖いのかもしれない。ちなみに僕は特に怖くない。足が使えないハンデまであるのに僕に負けたし。いやまあ、それも武器の性能なんだけど。
しかし、あの毒なんだろ。すごい即効性の割に異様に効果が高い。殺すなら急所を刺せばいいし、多分拷問とか捕獲に使うんだろうな……そう考えるとちょっと怖いかもしれない。
「ん……あれ?そういえば、その爆弾の名前は何なの?」
「『破壊神』だね」
「……んー」
僕は何も言わない。
中二臭いとか、マイナーとか、色々思ったけど言わない。
「そうだなあ……でもなあ、実際戦ってみないと欲しい武器ってイメージできないんだよね」
「戦ってみないと……って、え?要、実戦経験とか……」
「こないだ伊織と戦ったのが訓練以外だと初めてかなあ」
思えば、あれも欲しい武器を見極めるのには適してない。伊織も言っていた通り、暗殺者はあんな風に正面から戦闘なんてしない。目的は勝つことでなく殺すこと。必然的に奇襲が当たり前なのだ。
……というか、正面からにしてもナイフ一本とかありえない。ナイフの強みは携帯性なんだから、最低二本、できれば四本は欲しいところだ。欲を言うなら副砲も欲しい。ナイフ一本じゃ実力者を殺しきるのは無理だ。
「ま、そもそも実戦経験があっても実践経験は無いからね。僕たちがするのは暗殺なんだから」
「う……うん?その二つの言葉、何か変わった?」
口頭では伝わらない違い。舞は「まあいいや」と話を打ち切った。
「希望とかは無いの?なんとなくでも、こんなのが欲しい!みたいな」
その言葉に僕は「うーん」と唸った。
「一応考えてるのは飛び道具にでも軽い戦闘にも使えるような……そう、苦無みたいなものなんだけど」
「万能武器だね。苦無ね……でもあんまり使ってる人見ないよね」
「そういえば……うーん、ということは何か使いにくい所があるんだろうなあ」
僕は頭を抱えた。でも、あれは一本で近接戦闘、遠距離戦、果ては侵入や暗殺、火を起こす道具としても使えるくらい汎用性が高い。使われない理由が思い浮かばないのだ。
僕がうんうん唸っていると、見かねた舞が僕に声をかけた。
「それなら苦無使ってる人に聞きに行ってみる?一人だけ知ってるけど」
「え?まだメンバーが居るの?」
「いや、そうじゃないけどただ……」
舞は僕から目を逸らして頬を掻いた。
「……倉庫から何か武器持っていった方がいいかも」
一体僕は誰に会わされるんだろう。