勧誘
火曜と木曜の週二投稿の予定にしよう……かなー……できるよう頑張ろう。
「どうだい、君。僕たちの仲間にならないか?」
「……は?」
僕は考える。これは罠か、あるいは本気か?
確かにさっきまで僕は仲間になりたい一心で戦っていたけれど、いざ認められると不安になってきた。いくら僕だって死ぬよりは退屈に日常を送っている方がマシである。
僕が迷っていると、美少女……舞とかいう子が目を覚ました。
「ん……私……」
寝起きで頭が働いていないのか、とろんとした目で僕を見る。
……そういえばいつから寝てたんだろ?さっき僕が蹴られたとき頭でも打ったのかな?悪いことしたなあ。肩脱臼してるし。
……しかしかわいいな。
「えーっと……そう、変な男の子に追われて……って、わあっ!?」
反応が遅い。さっき戦ったときの反応速度とは天と地ほどの差がある。……天然?プロとしてどうなんだろう。
しかもオーバーリアクション。両手を上げ……て、左肩の痛みに腕を下ろした。
……ちょっと、流石に可哀想かなあ。
僕は彼女に近付いた。
「ちょっとごめんね」
僕は彼女の肩に手を置き、力を込めた。
ごきり。
「いったぁ!」
「てめ、舞に何して……痛ぇっ!」
「……やれやれ」
こっちにも怪我人が。
「流石に包帯とかないと止血はできないよ」
「そりゃそうか……てか、お前も結構な怪我だな」
男……伊織は僕を指差して笑う。なんて失礼なやつだ。だから僕は聞こえよがしに言った。
「怪我はいいよ、それより毒抜いてくれない?」
「……は?何お前、毒効いてたの?」
「効いてたよ、効かない人間なんて居ないでしょあれ」
「でもお前今だって歩いて……」
「動かないなら別のとこで動かせばいいんだよ」
僕は腰、背中、尻の筋肉を順に指差す。伊織はすっかり口を開けていた。
「……じゃああれ?俺って……」
「ハンデ背負った相手に負けたことになるね、伊織」
和服の男が伊織の肩にぽん、と手を置く。……なんか、様になってて格好いいなあ。卑怯だなあ、着物って。
「で……僕の勧誘って、本気?昨日まで……っていうかつい三十分前は普通に表の世界で暮らしていたんだけど、僕」
「え!?今そんな話になってるの!?」
舞が驚く。そっか、寝てたから知らないのか。
「本気だよ。見たところ、君にはこっちに必要なものをきちんと持っている」
「必要なものって?」
「信念と、覚悟と、実力だ」
その言葉には、重みを感じた。
何故だろう。この人は僕に伝えたいものがある気がする。
男として。
殺し屋として。
そして、師として。
「……仲間って、あと何人居るの?」
「うちのチームはあと二人だね」
「二人……え、五人!?」
殺し屋とはいえ全面戦争とかすることもあるだろうに、そんな一桁な人数でいいんだろうか。
……いいんだろうなあ。
この場にいるメンバーは全員強い。万全なら舞や伊織には負けないだろうが、特にこの着物の男には勝てる気がしない。
……舞、どうなんだろう。一般人よりは格段に強いだろうけど、なんか心配になってきた。
「人数が少ないから、仕事は二回に一回くらいはこなしてもらうことになってる。激務といえば激務だけれど、頑張って」
「頑張って……って、僕が入るのは確定事項なの?」
「そりゃそうさ。君は入るべきだ。……なんだ、ここまで来て嫌なのかい?ならこっちにも考えがあるよ?」
「っ!」
即座に構える僕。そんな僕に苦もせず近付き、彼は僕の耳へ顔を寄せた。
「……君が舞のこと好きなの、ばらしちゃうよ?」
ぼふ、と僕の顔が赤く染まった。男は楽しそうに笑う。
「やっぱり図星?なんとなくそうかなーと思ってたんだよねえ」
「ちょ、ま……そ、そういう?」
「入る?」
今度は優しく聞いてきた。まあ、もとより僕は知ってしまったのだ。帰してくれる道理もない。
それに、ここまでお膳立てしてもらったのだ。
「入ります。よろしく」
「はい、よろしく」
「よろしくね!」
「歓迎はしねえぞ」
こうして、僕の物語は始まった。
ここから、僕の伝説は始まったんだ。