成人した私へ
少しは思い出してくれましたか?
未来の私が、どれだけ今のことを覚えているのかわからないですけど、でも五年もあとのことですから、きっと色々忘れてしまったこと、あるんじゃないですか?
もしもあの後演劇がどうなったのかも忘れてしまっていたら、それは大変です。すぐにアルバムを見返してください。思い出してください。
さて、五年後の未来ですか。
私にはすごく遠くの未来に思えます。いったい私がどうなっているのか、想像もつきません。
一応コウスケ君と同じ高校を受験しましたけど、その結果もまだわかりません。結果は卒業式の次の日にならないとわからないので、まだ知らないんです。
でも成人したということですから、これを見ている私は大学生になっているのでしょうか。それとも社会人になっているのでしょうか。……まさかニートじゃないですよね?
サキちゃんやユイちゃん、マナちゃんとはその後どうしていますか?まだちゃんと友達ですか?たまには一緒にご飯に行っているのでしょうか?一緒になれる機会がなくても、週に一回くらいは連絡を取り合ったりしているでしょうか?
まだ私は、コウスケ君のことが好きでしょうか。それともだれか違う人に恋をしているのでしょうか。
もしかしたら、中学時代の友達とは離れ離れになってしまって、他の友達に囲まれて日々を過ごしているなんてこともあるかもしれません。
少し寂しいことですけど、そんな日常に満足していて、充実していると感じているのでしたら、それはそれでいいことだと思います。
そんな新しい友達に囲まれて過ごす日常に満足していたら、もしかしたら中学生の時なんてもう記憶のかなたのことでしょうか?
記憶というものは薄れゆくもののようですから、今のこの気持ちも、もしかしたら忘れてしまう日が来るのかもしれません。
でも、それは、それだけは、すごく寂しいです。
この中学校を卒業するまでに本当にいろんなことがあったんですよ?
私もすごく成長したと思います。恋という感情と一緒にたくさんのことを学んだんです。
学んだだけじゃないです。コウスケ君やサキちゃんやユイちゃん、マナちゃんに囲まれた日々はすごく幸せでした。
いいことばかりじゃなくて、変なことで悩んでしまうようなことももちろんありましたけど、それでもかけがえのない日常でした。
だから
そんな日常を過ごして私が抱いた気持ちが
五年後の私にも
十年後の私にも
二十年後の私にも
ほんの些細な思い出という形だけでも残るように
ここに綴らせてください。