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不死後衛の苦悩  作者: すろれっさー
国を飛び出す後衛です。
5/66

勇者と英雄の話が終わりました。

気が向きましたらブックマークをお願い致します。

あ、ブックマークよりも感想の方がうれしいです。

 いよいよ戦争です。迫りくる敵を英雄様が倒します。英雄様は正確に敵を一瞬で殺すように攻撃しました。少しでも痛みを与えないためです。しかし、敵の数が多い中、精神力と集中力をすり減らす英雄様。あるとき、急所を外してしまいました。苦しむ敵兵。止めを刺してあげようと剣を上に振り上げたときで

す。苦しんでいる兵士が言いました。


「ごめんなミリア。お前のところに帰れそうにない。幸せになってくれ。」


 瞬間、英雄様の目から熱い何かが溢れ出しました。前が見えなくなったその目で、苦しむ()()に別れを告げます。そんな目では、戦いは続けられません。しかし、戦わなければなりません。そこで英雄様が思います。〝今、逃げ出したら大切な奥さんが死ぬかもしれない。〟逃げてもわからないような状況であるのに、英雄様は逃げませんでした。目に熱いなにかを溜めながら、剣を大切に使っていた英雄様ですが、手元が狂い、とうとう剣が折れてしまいました。そこで英雄様は思います。〝店頭に並んでいるあの剣ならば、無茶苦茶に振りまわしても折れないのに・・・

 転がっている同類たちの剣を手に取り、同類を殺します。心から何かが抜けていくような感覚に耐えながら、ただひたすら剣を振りまわします。横の方を見ると、勇者が戦っていました。まるで素人のような剣の使い方です。自暴自棄になった英雄様よりも下手な剣の使い方でしたが、高性能な剣は折れません。それどころか、刃零れすらしないのです。

 英雄様は腕を無くしてしまいました。勇者をかばったあと、()()()斬られたのです。

 片腕を失くした英雄様は王の命令によって、敵国を攻める駒として使われました。家には一度も帰りません。恰好も変わりました。顔と失くした腕を隠せるローブです。全てが嫌になり、人気のないところに移動します。その通り道で、信じられないモノを見ました。奥さんの一人が勇者と仲よく歩いています。口づけもしていました。それだけではありません。英雄様を心配し、涙を流していた奥さんが、色街で客引きをしています。その首には奴隷の首輪がありました。

 全てが嫌になる英雄。その目からは熱いなにかではなく、冷えたなにかがこぼれ出します。

 〝何故、自分がこんなにも辛い思いをしなければならないのか。何故、自分は幸せではないのか。何故、あの時は幸せだと思ったのか。何故、自分は死にそうなのか。〟その時見上げた空には、星が光っていました。あれほど美しかったのに・・・

 最前線。魔法が飛び交い、もっとも死ぬ確率の高い場所。そこで英雄は思いました。〝このまま逃げ出しても、ばれない。〟当時の英雄はもう()()にはいませんでした。

 戦場から逃げ出した元英雄は《死の森》や、《不死の樹海》などと呼ばれる森の近くにやってきました。一人になりたくて移動している間にたどり着いた場所。元英雄はみすぼらしい恰好でしたが、鎧だけは美しいままでした。剣が無くて魔物が倒せません。生きていくには食べ物か、食べ物を買うお金が必要です。そんな時、二人の子供が目の前に現れたのです。周りには誰もいません。悪魔の囁きに従って、彼は子供の弱そうな方の首を絞めました。大人と子供では力の差がありすぎました。子供は抵抗し、逃げ出した彼に向かって言うのです。


「おい!離せ!俺たちは不死人族だぞ!」


 それを聞いた瞬間に脳裏は()()という単語で埋め尽くされてしまいました。


「死なないのか・・・それならどんな痛みを与えても大丈夫そうだな。ほら。お前たちの国に戻って金を持って来い。それまでの間、こいつに苦痛を与えておく。親には言うなよ?なるべく早く戻らなければ、こいつが何度死ぬかわからんぞ?」


 彼に捕まった子供が腕を折られている間に、もう一方は全速力で森に帰って行きました。木々が避けているような錯覚を起こします。

 暴れる子供を国に引きずり込み、奴隷として売り飛ばしました。珍しい奴隷は高値で売れます。奴隷商から金を受け取り、もう一人の子供が戻るのを待ちます。誘拐したその場所で待っていると、子供がやってきました。手には重そうな袋があります。

 彼が言います。


「親には言ってないだろうな?」

「ああ。それよりも・・」


 彼が金の入った袋を奪い、また逃げながら言いました。


「あのガキならもう売れちまったよ!いろんな国を探すんだな!」


 彼は自国の敵の国に逃げました。汚い金は女に使ったため少ししか残っていませんでしたが、彼はすでに悟っていました。〝命はもう長くない。〟路上で寝泊まりするようになってからよく耳にすることがあります。それは〝不死人族の子供を探しに不死人族が総出で国々を潰して回っている。〟という話です。

 数日後。〝昨日、隣国が消し炭になった。〟という話を聞きました。あまり動かなくなった足で故国を目指します。そのころには煌びやか()()()鎧は身につけていませんでした。思い出の鎧は欲望に変わったのです。

 魔物にもう片方の腕を食いちぎられても、故国に向かって急ぎます。その目には温いなにかが溜まっていました。睡眠、食事、休憩を忘れ、ただ思い出の場所に行きます。

 それは、国を一望できる丘でした。あの時と変わらない美しい草花がありました。彼の目には温かい()()()が溜まりました。

 丘に登り切り、国を見ます。

 そこに国はありませんでした。彼の目には熱い()()()が溜まりました。表現できない感情に支配されるまま膝を地面につけます。そして、長い間ナニカを地面にこぼしていたのです。


 物音がしました。彼は当時のことが頭に浮かびました。〝あの時は、俺を驚かせようと忍び寄る奥さんがいた。〟期待を胸に振り返ります。そこには褐色の肌に銀髪の髪、真っ黒な眼の怪物たちが立っていました。あの時とは違うと理解した瞬間に彼の目からは熱すぎるなにかが溢れ出しました。同時に彼の首が思い出の場所に転がります。動くはずのない口を動かして声にならないはずの声を出して言います。


「すみませんでした。私は()()に憧れていました。あの子が不死人族だと知って、私も不死になりたかったです。」


彼は不死になりたかった。そして永遠の幸せを手にしたかったのです。〟


 と、言う話です。実は作り話ではないのです。魔法で当時の様子を見て書かれたものなのです。【時空魔法:喪失した思い出の再現】という魔法です。必要なのは、当事者の骨です。使われた骨が英雄の骨だったので、英雄視点で描かれた話です。すごいですよね。実話ですよ?


 卵に大量の魔力を送りながら獲物を探していました。森に住んでいる魔物は強すぎるのでなるべく遭遇したくないのです。身代わりと偵察を兼ねて硝子を使いました。意識を集中させても3つしか同時に操ることができません。あ、いい事を思いつきました!自動で動くようにすればいいのですね!魔法で硝子を自動で動くようにして森全体を見ます。魔法の力がいかに偉大なのかが分かる瞬間ですね!一度に何万もの風景から状況を判断することができるのです。自動で動かすようにしましたが、必要な時は操作できます。私が干渉しない限りは勝手に動いてくれるのです。限界まで数を増やして魔物を探します。


 いました。人型ですね。【鑑定魔法】。


『ゴブリン。魔物の代表的な存在の一種。変異体はめったにいない。ただ、人族と同様に職業を持ち、武器を使うほどの知能を持つ。集団戦が得意。ただし、集団となるには上位種のゴブリンが必要。ゴブリンの進化条件は同族の数であることが知られている。進化条件が特殊な魔物である。また、数が揃えば国を作ることもある。その時の知能は人族と同様、またはそれ以上である。』


 この森にゴブリンがいるとは珍しいですね。本当ならばすぐに他の魔物に殺されてしまうところですけど・・・ゴブリンの首を硝子で斬り、ドロップを拾いました。ゴブリンは食べられませんので次の獲物をを探します。ちなみに私が手を触れなくても硝子がドロップに触れることで私の前に転移するという効果を付けました。んー。ドロップしたら異空間に自動で入るようにすればもっと効率がいいのですよね?【回収魔法:私的ドロップ】。いい魔法を創りました!


 次の魔物を見つけました。今回も人型ですね。【鑑定魔法】。


『ミノタウロス。人族の体に牛の頭が付いている魔物。牛人族との違いは体が完全に人族でないこと。ミノタウロスは知能が低く、殺すとドロップすることから、人型の魔物と認定された。力が強く、斧を持っていることが多い。単独行動をするが同種に仲間意識を持っているようだ。同種殺しはしない。稀に国を造ることがある。

追記。自然発生もする。男性器のようなモノを持つ魔物しかいないことから雄しか発生しないことがわかる。人族を襲い、種付けすることもある。女性は注意が必要。母体から生まれる魔物は全てミノタウロスである。』


 いやな魔物ですね。だいたいの人型の魔物は人族の雌を襲います。不死人族は死なないので、うまく衝撃を与えてもらえるように誘導する。しかし、一度でも犯されたくない女性は自殺・・・つまり永遠の死を選択します。どこからが自殺で、どこからが他殺なのか。不死人族の場合、目的の違いで判断されます。

 さて、魔物を倒さなければなりませんね。どうしましょうか。私は魔法使いですので、前衛が必要です。詠唱が要らないのでとても速く魔法が使えるのですが、それでも森の魔物を倒すにはそれなりの数が必要なはずです。それとも、強い魔法を使うか・・・

 考えた末に硝子で騎士団を作ることになりました。【硝子魔法:硝子の騎士団】。

 透明な騎士団です。この硝子たちは私を守りながら戦います。偵察とゴブリン殺害に使った硝子では質量が足りず、強い魔物を倒すことはできないのです。しかも大きな硝子だと、浮かべるのに大量の魔力が必要なので現実的ではないです。一度に大量の魔力を使うと倒れてしまいますからね。魔力の量に制限はありませんが、一度に使える量は限られるのです。その量をどうにかしなければなりませんね!今後の課題です。

 さて、騎士団のいい所と悪いところを発表します。まずはポジティブにいい所からです。いい所はその強さです。一撃で木々を伐採できます。小さいと刺さるだけだったのです。他にもあります。壁や囮として使うことができます。他には・・・属性を付けることができるようになりました!〝属性を付ける〟とは・・・説明が難しいので例を出しますね。一般的なのが火属性を付けることです。剣に火属性を付けますと、斬った時にモノが燃えます。もしくは焦げます。止血などに便利です。さらに斬撃を飛ばすことができるのです。剣士が剣を振ると見えないはずの剣筋が光りますよね?あれは属性を付けているからなんです。剣が光っている場合もそれです。普通は光りませんから。

 さて、デメリットです。浮きながら移動ができなくなりました。ジャンプなどはできますが、浮遊できません。つまり罠に引っ掛かることがあるということです。足を引っ掛ける罠はもちろん、落とし穴、スイッチ式罠などです。水にも浮かびませんので、水に沈める罠なども有効になってしまいます。あとは、狭いところを通れなくなりました。

 とにかく、今回に関しては問題ないです。ミノタウロスの体は硬いので偵察型の硝子では刺さることもできません。なので騎士団の剣で殺します。【硝子魔法】全体のメリットは不可視であることですね。魔法やスキルを使わないでも硝子が作れます。しかし、光の反射によって見えてしまいます。魔法で作り出された硝子は純透明です。なので見ることができません。騎士団の場合は足跡が付いてしまいますが・・・

 斧を振り回すミノタウロスを無視して騎士たちはやつらの首を切り落としています。ミノタウロスも騎士が見えているようです。どうしてでしょうか?高ランクの魔物はやはり強いということですね。この森では低ランクでも強いようです。私単体で戦ったのなら勝てる相手ではないでしょう。


 ミノタウロスの肉をゲットしました。魔物は強くなればなるほど、ドロップの種類と量が増えます。結構な量になりました。ミノタウロスを倒したことでレベルとジョブレベルが上がりました。そして、一度に使える魔力の量も増えたのです!魔力を使いすぎると一時的に魔法が使えなくなりますからね。

読んでいただき感謝です。

ミノタウロスの肉はかなりの高値ですが、セルゼルフは知りません。


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