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ステータスプレートを観る前に深呼吸します。緊張の瞬間ですね。
セルゼルフ Lv2
種族 人種 不死人族
ジョブ 未設定
ジョブ履歴 無し
スキル 魔法創造・作成 神器所持
神器 無し
人種スキル 不滅 魔素操作・変換 再生・復活 自然操作・改変 非生物物質操作・創造・改変
称号 神の使い 最高神の監視対象
ステータスは他人に教えてはいけませんし、聞いては駄目です。これは人族共通の常識だそうです。なので私も誰にも言いません。しかし、わからないことが多いです。・・・気にしていては始まりませんよね!〝監視〟とか、危ない単語は見なかったことにします。
他に気になるのは【神器】です。神のウツワなのか、神の機器なのか分かりませんが、とにかく謎です。スキルも聞いたことがないものがあります。【魔法創造・作成】って、いいのですか?作っても。確認に長く時間を取られると無駄なような気がしますので、先に自分の部屋から出ようと思います。
「おはよう。」
「おはようです。」
「今日だった?」
「はい!」
母は毎日同じ質問をしてきます。それの回答もおなじだったのですが、今日はちがいました。
「セルは私のような立派な後衛になるのよー?脳筋の道を辿っては駄目!」
「はい!」
意識を集中させてジョブを設定します。後衛職と言えば魔法使いですよね!なので私は【魔法使い見習い】を選択しました。他にもあったのですが、まあ、いいでしょう。【魔法使い見習い】のLv20が上限です。このジョブにするだけで【魔力操作】と【魔力維持】が取得できるのです。この二つのスキルはとても有用です。いえ、それ以前にこのスキルが無ければ魔法が使えないか、使う時にとてつもない魔力が必要となります。他にも、魔法が体のどこから放出されるかわからないのです。敵に魔法を当てるつもりが背中から魔法が出現し、後ろにいた見方にあたることも考えられます。
魔法使いが杖を持つ理由は目標物をはっきりさせるためでもあるわけです。・・・杖がないです。
「あー!!私としたことが!何故魔法使いを選びながら杖の存在を忘れていたのでしょうかー!ばか!馬鹿!私のばぁかぁ!」
「そんなあなたに朗報ですよ。セル。」
「母さん!どういうことですか!」
「いや!プレゼントは俺からだ!」
「父さん!」
「ほら。お前にこの剣をやろう。」
「・・・剣ですか・・・」
貰ったのか刀という剣です。剣ですよね?刃があるものは剣ですから!しかし、剣ですか・・・どうしましょうか。
「セル。杖でなければ後衛ではないというのは間違いよ。杖は伝達能力と目標指示の役目を持てていればいいのよ。」
「そうですか・・・やってみます。」
嘆いていても悩んでいても仕方が無いのです。と、言う訳で今から特訓開始です。私たちの種族の特性上、子供でも危険なところへ行くことが許されています。理由は死なないからです。〝怖い思いをして帰ってこい。〟それが私たちの種族です。どこで特訓をするのか。外には強すぎる魔物ばかりですので、ダンジョンに挑もうと思います。ダンジョンのことを迷宮と呼ぶ人もいますね。しかし、迷宮とは一体なんなのか?
〝迷宮とは、生き物である。〟
カアサイスデリアムスという学者が遥か昔に迷宮をそう表現しました。こんなに長い名前を覚えている理由は一番初めに見た本の学者だからです。他の学者は覚えていません。この歳になるまで本に噛り付いてきましたので、魔法に関する知識に関しては一般ほどにはあります。その中に迷宮に関する魔法の存在が仄めかされていました。一番興味を惹かれたのは【迷宮成長魔法】です。まだ長老の見た目が変化したころに使われていた魔法です。失われた魔法というやつですね。しかし、迷宮は成長するのでしょうか?結果から言いますと、迷宮は成長します。深く広くなるのです。それに伴って魔物も強くなります。迷宮の成長の仕方は少し特殊です。一階層の上に塔のように新たな迷宮ができるのです。そして、その上にまた迷宮ができます。塔が大きくなり、重くなると塔が地中に沈みます。その繰り返しなのです。一階層というのは入り口を通ってすぐの場所です。階段か坂か転移によって次の階層に移ります。成長するので生き物なのか?それならば、木々も生き物なのか?植物は生き物なのか?生物と非生物についてある学者が言いました。
〝体内に魔力を作り出す器官が無いものは、生物ではない。〟
生物の定義です。実際、私たち不死人族は自然を操作する力を持っていますが、魔力を作り出すものは操作できません。
話を元に戻します。この国の中央には王城があります。その地下に迷宮につながる穴があるのです。塔のダンジョンが出来上がると魔法で地中に無理やり沈めます。私たちの日々の食べ物は迷宮で自然発生する魔物のドロップです。もしくはこの国を囲う・・覆う・・森。通称《不死の森》《死の森》《不死の樹海》《死神の寝床》の魔物のドロップを食べています。何が魔物で何が魔物ではないのか?
魔物の説明はとても複雑です。学者ごとに様々な定義が存在します。
〝死んだ時、何かだけを残して消えるもの。〟
よく覚えていませんがこんな定義だったような気がするのです。他にも説があるのですが、魔物がどんな存在であっても私が倒す生物は私に刃向かうものですから。
10歳になると、親は食べ物をくれなくなります。私も今日から自分で食料を確保するのです。しかし、私にできるのでしょうか?食料がもらえなくなるのはきついのです。
王城の地下です。この剣でうまくやれるのでしょうか?剣なんて使ったことが無いのです。いえ、剣として使わないのですが・・・
入り口でしばらく悩んでいますと後ろから声をかけられました。300歳ほど年上のお兄ちゃんです。彼もお兄ちゃんと呼ばれたいようです。
「おい、セルー。まずは、スキルの確認だろ?ちょっと中に入って、やってこい。鑑定魔法使うんだぞ。」
「そうだった!確認しないと!ところで中に入る必要はありますか?」
「ない。」
私は朝に見ただけで細かい確認はしていませんでした。なので、これから魔法を使って確認します。
【魔法創造・作成】はどんなスキルだろう?こんな時にあれです。少し詠唱が長くなってしまいますが、気にしません!それが後衛というもの!
「・・・・天の意思に任せて。我、真実を知る者。鑑定魔法、我がスキル!」
『セルゼルフの独自スキル、魔法創造作成とは、この世に存在する魔法、または、存在しない魔法をつくることができるスキルです。セルゼルフのレベルやジョブに関係しない。
セルゼルフの独自スキル。神器所持とは、神が持つものを所持することができるようになるスキルです。すべての神器をその身に宿すと神となる。』
魔法というモノは条件を揃え、詠唱を正しく口に出すことによって魔力と引き換えに現象を引き起こすことができるのです。私はこの現象を気に入っています。普通ではありえない現象ですからね。
どうやらジョブに関係なく魔法が手に入るようです。え?〝努力せずに手に入れた魔法を使って楽しいのか?〟ですか?楽しいですよ?いいじゃないですか。楽しいです。
さて、始めに何を作るか。どこまで作れるのか。まずは魔法の基礎である【火魔法】ですね。
「・・・・異なる術を発動させよ。魔法作成、火魔法!」
試しに作ってみました。結果はどうなのでしょう?楽しみです!
「・・・ステータス。」
セルゼルフ Lv2
種族 人種 不死人族
ジョブ 魔法使い見習い Lv1
ジョブ履歴 無し
スキル 魔法創造・作成 神器所持 魔力操作 魔力維持 火魔法
神器 無し
人種スキル 不滅 魔素操作・変換 再生・復活 自然操作・改変 非生物物質操作・創造・改変
称号 神の使い 最高神の監視対象
成功です!つまり、魔法大百科のすべての魔法が使えるということです!知識は頭に入っていますからね!
次に存在しない魔法です。どんな魔法があるでしょうか?いえ、考えるしかないのですね。さあ、どうしましょう。
気が付けば何時間も悩んでいたようです。あーあ。一度にいくつもの事を考えることができたら、もっと時間が短縮できるのに。
ん。ん!?いいことを思いつきました!
「・・・・異なる術を発動させよ。魔法創造、同時思考魔法!・・・ステータス、スキル欄。」
スキル 魔法創造・作成 神器所持 魔力操作 魔力維持 火魔法 同時思考魔法
成功してしまいました。さっそく使います。思ったような魔法なのでしょうか?
「・・・・同時思考魔法、発動!」
スキルに魔法が表示されている時、詠唱は自動的にわかります。私が魔法を使うと、頭がきれいになりました。2つ以上の事を考えることができます。すごいですね。この感覚は私にしかわからないでしょう。同時に複数の事を考えます。しかし、詠唱を毎回しなければならないのがとても残念です。強力な魔法はその分だけ詠唱も長くなりますから。あ、じゃあ、この魔法使い最大の悩みを解決しましょう!
「・・・・魔法創造、詠唱破棄魔法!・・・・詠唱破棄魔法発動!」
これで詠唱無く魔法が使えるはずです。手始めに【水魔法】を作成しましょうか。【魔法作成】【水魔法】。【水魔法】は水を使う魔法です。飲み水にもできますし、勢いよくぶつければ敵を倒すことができるのです。さて。ステータスを見ましょうか。
ステータス、スキル欄。
あれ?おかしいですね。ステータスが出ません。【詠唱破棄魔法】の効果はまさか1回だけですか?となるとあまり使えない魔法ですね・・・奇襲には使えますね。
「・・・ステータス、スキル欄。」
スキル 魔法作成・創造 神器所持 魔力操作 魔力維持 火魔法 水魔法 同時思考魔法 詠唱破棄魔法
やはり、一度きりの魔法でした。考えようによっては強力な魔法ですが、一度しか使えないのなら意味がありません。効果を持続させなければ。【魔法創造】は結構単純な魔法なので創造できるかもしれません。効果の持続ですね・・・
「・・・・魔法創造、効果持続魔法!・・・・効果持続魔法、詠唱破棄魔法!」
【同時思考魔法】・・・おお!一度に複数のことが考えられる!さっきはいつの間にか効果がなくなってしまったこの魔法。いつまでも続けば成功ですね!効果を確認するためにしばらく待ちましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
いよいよダンジョンですね。