だいはちわ!【妹 あんど 幼女】
1
「んで、結局君は誰なんだよ」
開口一番、俺はリビングのソファーに我が物顔で腰掛ける幼女に声をかける。
「あれぇ、お兄ちゃんにメールしたって言ってたけど、読んでなかったのぉ?」
そういいつつ幼女はテレビをつける。
「確認してない。あと家主の許可もなく勝手にテレビつけるな」
そういいつつ俺はメールを確認する。
……てかこいつ俺の話無視してテレビ見てるし。
まあいいや。
俺は携帯電話に目を移し、新着のメールからそれらしいものを探す。
『件名:覚えてる?
本文:私のこと覚えてる?小学校のころ同じクラスだった唯だよ!(^▽^)/
今どうしてるのか気になったから連絡しちゃいました( *´艸`)
最近欲求不満だから一回会っていろんなことしたいな///
お返事ください(^_-)-☆』
うん、これじゃないな。こんなやつは絶対に知らない。
てかこんなメール送るとか何年前のいたずらだよ。次。
『件名:オリオンショッピングより
本文:入会金、及び会員費が滞納しております。本メール送信から一週間以内にご連絡が無いようでしたら法的措置をとらせていただきます。090-xxxx-xxxx』
これも違うな。ってかなんで迷惑メールしか届いてないんだよふざけんな。
次。あ、次は母さんからだな。じゃあこれか?
『件名:なし
本文:今日は帰るのが遅くなります。沙夜香のご飯よろしくお願いします。
PS、私の姪が泊まりに来るそうなので、姪が来たら入れてあげてください』
「姪っ子……?」
「あ、気づいたんだ」
いや待て、落ち着け、餅つけ。
ここでテンパって大声出して妹と近隣住民が集まってきたら事情を知らない皆さんはすぐに警察とか呼びかねない!まずいぞ……!
「お兄ちゃん、何だったの?」
そこにやってくる件の人物。
弘人社長の人生はおしまいです!お疲れさまでした!
なんか妹が性犯罪者を見るような目でにらんでるんですけど。つらい。
「……ねぇ兄貴、誰この子」
「あぁ、母さんの妹さんの娘さんだって」
「……へぇ」
妹はそれを信じたのかどうか知らないけれどその目を母の姪っ子に向け、全身を嘗め回すように観察している。
……大体なんで母さんの妹はこんな年端もいかないような女の子を一人で家に寄こしたんだよ!母親も一緒に来いよ!そうすれば俺もこんな目で見られることなかったのに!
そんな俺の内心を知ってか知らずか、沙夜香は姪っ子に近づいていき、
「かわいぃぃぃ……!」
「え?」
突然破顔し、幼女に抱き着いた。
「あぁ、苦しいよぉ、お姉ちゃん」
「ハッ、お姉ちゃん!?今、お姉ちゃんって言った!?」
「言ったよぉ、だから一回離して、お姉ちゃん」
「あっ、ごめんね」
好きなだけ抱き着いた後、妹は名残惜しそうに幼女から離れた。
……おい、妹よ、俺の隣で小声で「はぁぁ、お姉ちゃん……」とか「あっ、写真撮ってSNSに上げちゃおうかな」とか言うな。俺よりお前のほうが変質者みたいじゃねぇか。エキサイトしすぎだろ。あとSNSはやめろ。あれは危険をいっぱいはらんでるんだ。
「で、君。あぁ、いや、君じゃああれだな。名前は?」
「梨花だよぉ」
「梨花ちゃん、ご飯は食べたのかい?って、その様子じゃ食べてないみたいだな」
梨花ちゃんは俺が質問し終わる前に「きゅるる」とおなかを鳴らし、恥ずかしそうにした。
「なにかたべたい」
なんだこの可愛い生き物。そう思いつつ例のエプロンをつけ、台所に立って料理を作る準備をする。
あの可愛い生き物は果たしてどんな料理で喜んでくれるのだろうか。腕が鳴るな。
よっしゃあ、お兄さん張り切っちゃうぞぉ!
珍しくまとも回(錯乱)