だいごわ!【いもうとのへやのべっどのしたのせいいき】
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今日の夜は珍しく紗夜香がリビングでテレビを見ていた。
画面の中では芸能人らしい二人が何やら餅つきのようなネタをやっていて、禿げた男が「やっちまってるなァ!」と連呼している。
そのネタに妹はハハハ!と普段俺には向けない方向の顔をテレビには向けていた。
しかし、俺にはこの間修也に言われた迷案がある。
俺は二階に上って妹の部屋に音もなく忍び込む。
奴曰く、『意味もなくお前の部屋に入ってフィギュアぶっ壊しただけで帰ったってのは考えにくい。ズバリお前の妹はオタクなんだよ!!それも隠して隠して隠し通した生粋の隠れオタク!!大方リア友から白い目で見られたくないがための隠れオタクだったんだろうが、俺の目は誤魔化せn(ry』
だそうだ。
俺からすればにわかに信じがたい話なんだが、確かめて見ないわけにも行くまい。
そういうわけで俺は今、妹の部屋にいるってわけだ。
「よぉ〜し、お兄ちゃん張り切っちゃうぞぉ〜」
まずは王道にベッドの下だろうか。
まあ、出てきたとしてもファッション雑誌とかだろうが。
そうやってごそごそと漁っていると、お、なんかコードみたいなのが掴めた。
ドライヤーかなんかだろうと俺は一思いに引き抜いて、
「ぶほっ……!!」
これ、どこからどう見ても怪しげな健康器具なんですが!?
……い、いや、まだ分からない。
正規の用途で使っている可能性もあるはず……!
と、先端の膨らんだ部分に触ると、ねっとりと謎の液体、しかも粘性のものが手に付着した。きったね!
まずいですよ!と思いつつ、その怪しげな健康器具は自然と俺の口に近づいてくる。
俺の意思じゃないからね!しょうがないね!
「うっわ、まず!」
ローションじゃねえか!これ!
しかし、ローションが塗ってあったってことは、ますます怪しくなってきたぞ。
ひとまず怪しげな健康器具は置いといて、再びごそごそと漁る。
すると次は本のようなものを掴んだ。
「ほらやっぱりファッション雑誌じゃ──」
ないか、と続けようとしたところで息が止まる。
取り出した雑誌は明らかにファッション雑誌ではない。
いや、まだ分からない。
この『なかデキ!〜兄と過ごした三週間〜』というタイトルでも、ファッション誌かもしれない。
そう祈りつつ、半ばヤケクソにページをめくる。
『お兄ちゃん……//いいよ、来て//』
アウトおおおおおおおおおお!!
妹がこんなもの持ってるなんて知ってしまったらお兄さんもうお嫁に行けません!
「ねぇ、何してんの?」
唐突に頭上からかけられる殺意の篭った声。
こうなってしまってはしょうがない。俺は覚悟を決めて本心を伝える。
「割とむっつり?」
「でてけ!!」
この小説の作者は正気なのか!?