だいよんわ!【会議で名案が思い浮かぶと思った?】
1
「……てなことがあってさぁ……」
時は変わり現在は友人宅で先日のことを話していた。
左右には高校に入学してからの友人二人。
右側、正確にいうと右斜め前にいるのが「服部 修哉」。
俺と同じくらいの偏差値で、オープンオタク(自称)である。
左斜め前にいるのが「長谷川 悠人」。
成績は良く(トップクラスというわけではない)、俺はたまにこいつに勉強を教えてもらう。
俺の横にいるその二人は、プレミアがつくフィギュアの話を聞いて押し黙っている。
三人が沈黙を続ける中、聞こえる音はパチパチという音だけ。
やがてしばらくして、修哉が口を開いた。
「それ、ロン。断么平和混一ドラ二、裏は……なし。一二〇〇〇」
「たけえよ。ってかフィギュアについてなんか言ってくれんじゃなかったのかよ。相談乗ってくれるって言ったから麻雀に付き合ってやってるのに」
「わりぃわりぃ。でもよ、そのフィギュア壊したことはいけないと思うぜ?けどだからってその何万って金額を妹に払わせるのはどうかと思うぞ。確か中学生だったろ、弘人の妹。払えんのかよそんな額」
痛いところを突かれる。
確かに沙夜香がそんな額払えるとは思えない。
もちろん、払えるなら払って欲しいと思うが、俺のために月の少ない小遣いをぶん取るとか、体を売ってでも稼いで欲しいとか、そんなことをして欲しいわけではない。
「俺はただ、あいつに面と向かって「なぜ壊したのか」ということと、それに対する真摯な謝罪ということをして欲しいだけだ」
そう、それをしてもらえるだけでいいんだ。
それを聞いて、俺の横で静かに俺たちの話を聞いていた悠人が口を開いた。
「だったらそれを面と向かって伝えればいいんじゃないかな?」
「いや、それができれば苦労しないんだけどなぁ……」
あいつに話しかけようとするとすぐその場から離れようとするので、俺はあいつにこのことすら伝えられない。
伝えられなければいつまでたってもこの問題を解決できない。
俺はその解決方法が思い浮かばないからこいつらに相談しているんだ。
そうやって俺が一人でずっと黙っているのを見越してか、気さくな調子で修哉が話しかけてくる。
「まあ、とりあえず東二局行こうぜ」
こいつはいつも気楽な性格でその性格が玉に瑕だが、今回ばかりはその気楽な性格に助けられた。
台の真ん中にあるスイッチを押すと、それまで卓に置かれていた河が台の中に吸い込まれ、再びボタンを押すと全ての山がセットされる。
カチャカチャと山から四牌づつ取っていき、手牌を作る。
……、悪くない。
高目でチャンタと一盃口が見える。ツモがよければ平和もつくか。
俺がその手についてあれこれ考えていると、ほかの二人も理牌が終ったようで、俺の親番が始まる。
再びトントンという音だけがその場を支配し、静かに局が進んでいく。
そして六巡目を超えたあたりで、修也があっ!と声を上げた。
「なんだよ。趣味だけじゃなくて頭までおかしくなっちまったのか?」
唐突に声を上げた修也に、訝し気な目線を向ける。
「ちげーよ。お前がさっきまで悩んでた妹の件、名案が思い浮かんだ」
しかし、そんな視線にもたじろぐ様子すら見せず、こういった。
「それ迷案じゃないだろうな?」
「大丈夫だ。やる価値はある」
こいつが考えることはあまり信用できないが、今は状況が状況。
聞いておくことがマイナスにつながることはないと信じて、その話を聞くことにした。
「分かった。あと、それロンな。平和純全帯幺九一盃口ドラ一、……裏ニ。ニ四〇〇〇」
「うっそだろお前……」
「倍返しな」
俺は崩れ落ちる修也を横目に、二四〇〇〇点を分捕っていた。
やっと小説を書いててやりたかったことが一つかないました!
……何かって?
そりゃ麻雀を入れることに決まってんでしょうよ言わせんな