さいしゅーわ!【信用の果てに】
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俺は既に動かなくなってしまった妹に近寄り、声をかける。
「おい、実は寝たふりをしてるんだよな?起きろよ……!頼むから……、目を、覚まして……ッ!」
沙夜香の頬には、俺の瞳からこぼれた涙の雫がポツリ、ポツリと筋を作る。
俺の涙を浴びてなお、沙夜香が目を覚ます気配はない。
「……ック、ククク、ハッハッハハッ!」
「おい、何笑ってんだ、セレナ!?」
俺が必死に呼びかけているのがそれほど面白かったのか、突然笑い出したセレナ。
しかし、状況が状況。
簡単に許せる訳がない。
「何って、あまりにもあんたが滑稽だからよ!」
突然笑い出し、俺を滑稽だと言い出した。
「お前が、お前が沙夜香を殺したんだぞ!?よく笑ってられるな!」
「だって貴方、ずっと私たちの掌の上で踊らされてるのを知らずに、私が味方だって絶対的な信頼を寄せるんだもの。滑稽ったりゃありゃしないわ!アハハ!」
俺は、この時初めて、俺がこいつの掌の上で踊らされてると知った。
「じゃあ向井も、悠人も、お前らの仲間だったってことかよ……!」
「いや、向井ちゃんはユウトの口車に乗せられただけじゃないかしら。でも、ユウトはこっち側ね」
驚愕と同時に、怒りが湧き上がる。
俺は、今まで、こんなやつと、一緒にいたのか。
「そんな貴方に、いい提案があるわ」
「誰がお前なんかの……!」
「あらそう?ならいいけど。沙夜香ちゃん、生き返らせたくないの?」
唐突な提案。
こいつの提案することは全て信じられないが、聞くだけ聞いてみてもいいだろう。
「殺戮戦争、それに参加して最後まで生き残りなさい」
殺戮戦争。
これに参加すれば、妹が生き返るかもしれないのか。
こいつの言葉を信じたくはないが、妹のことになれば何も考えずに行動してしまう。
「参加、する」
「アハハ!それでこそ私の見込んだオトコね!」
その言葉を最後に、俺は家からいなくなった。
部屋の中には、セレナの高笑いだけが反響し続けていた。
そして物語は新章へ──




