だいさんじゅーななわ!【苦しみ、倒れ、そして彼女は何を思う】
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ここで沙夜香を脱落させる。
たった十文字程度の文字の並びが、俺の鼓膜の奥で何度も何度も跳ね返って意識に強くその存在を刻みつける。
俺の目の前で静かに俺を見つめるセレナの顔は言外にそれ以外の手段はないといっているようで、更にその文字列は俺に重くのしかかる。
俺も頭の中ではその方法が現状を打破できる唯一の手段だと理解しているのかもしれない。
もしかしたらこれ以上に効率的な手段があるのかもしれないが、今現時点でとれる最優の手段はこれ以外に考え付かない。
だがしかし、この方法をとるということは確実に沙夜香は傷つくだろう。肉体的にも、精神的にも。
そして、それを行うのは間違いなく俺自身。
そんな事実を[近親性愛]である俺が作っていいはずがない。
「確かに彼女はあなたが愛してやまない女性かもしれない」
心の裡で葛藤に苛まれているところで、セレナの一言が耳に入る。
沙夜香は依然としてベッドの上で苦しそうに喘いでいて、ハッ、ハッという息遣いが断続的に聞こえる。
「それでも時間は有限なのよ?今ここで性戦を行わなければ間違いなく彼女は暴走する。もしかしたらその暴走は死ぬことよりひどい状況に陥るかもしれないのよ?」
確かにそうだ。
今俺が決断しなければ、沙夜香は苦しみ続けてしまう。
どんなに俺の手が汚れようと、沙夜香の悲しむ顔だけは見たくない。
俺はこの命に代えても、沙夜香を、
「愛する人を、この舞台から引きずり落とす」
それで君が助かるなら。
俺はどんな苦行でも、甘んじて受けよう。
もし嫌われることになっても、それで命が助かるなら御の字だ。
「セレナ、やろう」
ベッドの前に立ち、性戦を開始する準備を整える。
横たわるその横顔は苦しみに耐えきれずとうとう気絶してしまったようで、見方によっては安らかに眠っているようにも見える。
「いくわよ」
その一言から数秒後、部屋の頭上に見覚えのあるスクリーンが現れた。
そのスクリーンに書かれていたのは──
「デス……、ゲーム……」
始まるはデスゲーム──




