だいさんじゅーよんわ!【やべ、変な奴に目つけられた】
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「……は?」
俺は突然の出来事に目を丸くする。
「母さん……?でも、母さんは梨花ちゃんと一緒に拉致監禁されてたんじゃ……?」
「はぁ?何馬鹿なこと言ってんのよ。今梨花ちゃん家まで送って帰ってきたの。いいからお客さん部屋に案内しなさいよ。いつまでもリビングにいられちゃ邪魔でしょ」
「は、はぁ……」
俺は母さんの言うことに従いつつ、ゆっくりとした動作で部屋に戻る。
その後ろを当たり前のようについてくる向井。
とりあえず廊下でごちゃごちゃ言い合いするのも変なので一旦部屋に入る。
「母さん、いたな」
「お母さん、いたでしょ?」
「ああ、いたな」
「私はほんとのこと言ってたでしょ?」
「ああ、ほんとのこと言ってたな」
ってことはこいつは真性のドМで、本気の本気で俺に告白してきたってのか?
……、わからない。こいつの考えてることがわからない。
「それで、私の告白の返事はいつもらえるの……?」
少し頬を朱に染めた向井は、若干上目遣いでこちらをうかがう。
「あのな、普通ほとんど初対面の男に告白するかぁ?大体そういうのは幼馴染だとか、同じクラスでよく勉強を教える教わる関係の男子とかって相場は決まってるだろ」
一つ訂正しておくが、俺はこいつと付き合うつもりは今のところない。
それは数年間一緒にいれば覆る可能性があるってだけで、現時点ではその可能性はゼロだ。
だからこそ、俺の精神衛生的にもこいつのためにも、こいつが付き合うのはこいつと長い付き合いの男のほうがいい。
それを見越した発言だったんだが……。
「……私の身近にいる異性は、みんな私と仲良くなると優しくするの」
まあ、そりゃ普通にしてりゃこんなに美人な女なんだ。相手としてはなるべく優しく、なるべく融通してあげて好感度を勝ち取りに来るだろう。
よく見てみれば体型もボンキュボン程ではないものの、モデルの様な体系をしている。
これは惚れない男はいないだろ。
あれ、これって俺超ギャルゲ的展開なんじゃね?
いや、でもクラス的には俺[近親性愛]だしなぁ……?どうしたもんか。
「それで、私はその優しさに不満を感じて、みんなの告白を振ったの」
「はぁ!?」
おい、こいつ馬鹿かよ!?
いや、真性の馬鹿だったわ!
「え、で、何人ぐらい振ったのさ!?」
「あんまり数えてないけど、十何人くらいだと思う」
えげつねぇ……!果たしてそんなモテキが訪れた人間がこの世に何人いるのだろうか!
「だから、男に困ったことはないんだけどね。この間、初めて私は異性に惹かれるってことを知ったの」
そこで向井は一度言葉を区切り、こう続けた。
「私のことを躊躇せず傷つけてくれる男性はあなたしかいないの!お願い、私と付き合ってください!」
いや、二人っきりというシチュエーションは最高だけど、告白としては最低レベルの内容だろ、これ。
全く進展しないストーリー……。




