だいさんじゅーいちわ!【補佐の欠落した一席】
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俺は自分の耳を疑った。
いや、疑いたかった。
「お、おい……。うそ、だろ?だってほら、俺の胸に書いてあるような紋章が、沙夜香には無かったはずだろ?」
俺が先ほどあいつの部屋に入ったとき、半裸だった体には何も書かれていなかったはずだ。
こいつが俺をからかうために出まかせを言っていると信じたい。
「貴方が信じたくないのはわかるけどね、彼女は[被加虐症]なのよ。紋章は肩甲骨のちょうど上、うなじのあたりにあったわ」
「うそだ……、うそだ、うそだうそだ」
てことは俺は沙夜香をいずれ倒さなきゃならないってことか?
「でも」
俺が思考の海に飲まれそうになったところでセレナから声がかかる。
「一つだけおかしいところがあるの」
「……なんだ」
「彼女には選定者の紋章だけがあって、そばにいるべき淫魔がいない」
その発言は俺を驚かせるには十分だった。
「で、でも、契約はお互いの同意で成立するんじゃないのか?俺の時だって、セレナが魔法みたいなのを使ったから紋章が浮かんできたんだろ?」
「私たちの場合は、ね」
「ってことは……」
「そ。淫魔が一方的に契約することだってできる」
ということは、おそらく沙夜香は何者かに一方的に契約させられた可能性が高いってことか?
「でも、それなら沙夜香も反抗するんじゃないか?」
そうだ。
相手から一方的に契約を迫られたってんなら、相手側の顔を見てないはずがない。
「確かに、そう見ることもできる。でも、おそらく彼女と契約した淫魔は就寝中に魔法を使ったんじゃないかしら」
「……どうしてそんなこと言える」
「さっき彼女を診た時に記憶も探ったけど、そんなシーン一切映らなかったわ」
淫魔なのにそんなことまでできるのか。
俺は感心した。
そんな場合じゃないんだけどな。
「てことは、性戦のルールとか、勝利条件は──」
「知らされてない可能性が高いわね」
しかし、それならそれで問題はある。
「ってことは、性戦が俺と沙夜香二人になるまで守り続けないといけないわけか」
「共闘ができそうな分少しは楽だろうけど、それでもきつい試合になることは免れないでしょうね」
「ならまず、沙夜香に事情を説明することから始まりそうだな」
ようやっと最終目標まで見えたのでそれまでひたすら書きます




