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まくあい【妹】

1


 俺は今、夢を見ている。

 それが過去の記憶なのか、それとも予知夢なのか、はたまた空想みたいな出来事で実際には起きないことなのかはわからない。

 しかし、白昼夢だということは火を見るより明らかだろう。

 なぜなら、浮かぶような感覚を感じているし、何もない真っ白な空間の真ん中に浮かぶように映像が流れているからだ。

 いつの間にか、俺の体からは服が消え、生まれたままの姿になっていた。

 しかし、不思議なことにそれを隠そうという気は毛頭なかった。

 その現象はおそらくこの空間のせいだろうと決めつけ、他に誰が見ているわけでもないのでそのままにした。

 先ほどからずっと映像が流れ続けていた画面に目を向け、内容を確認する。

 その映像に意識を向けると、すぅっとそこに吸い込まれる感覚がした。


◇◆◇


「ねぇ、お兄ちゃん?」


「ん、どうしたんだ、沙夜香」


 懐かしい。

 この光景はいつだったか。

 沙夜香が小学校四年の頃だから、大体俺が中一のころだろうか。

 母さんが食器を洗ってる最中に突然言われたんだっけ。


「あたしね、おおきくなったらね、お兄ちゃんのおよめさんになるの!」


「え?お、嫁さん?」


 何だこの顔。

 昔の俺を見るってのも面白い体験だな。

 まあ、言われるってわかってる今の俺でもドキッとしたけどな。

 可愛いからしょうがない。可愛いは正義。


「あら~」


 母さんはキッチンから俺たちの様子を見て、微笑ましいものを見るような視線で見ている。

 しっかり食器を洗ってるあたりすごい。


「え、ああ。大きくなったら、な」


「ほんと?やったぁ!さや、お兄ちゃんのおよめさんになる!やくそくだよ!」


 ニコニコ笑顔で飛び跳ねる沙夜香。

 なんか俺も微笑ましくなってきた。

 ってか過去俺、なんでそんな無責任な発言したんだよ。

 そりゃ、できるもんなら結婚したいさ。

 でもな?法律とかいろいろ考慮したら無理だろ。

 一回本気で気になって調べたりしたさ。

 結果、法律をかいくぐっての結婚は無理。子供ができたとしてもその子供が障害を持って生まれてくる確率は八割以上。

 それを知ったときはショックだったけど、でもそれを知ったからこそ、一時の感情によって妹の命が危険にさらされてしまうときつく自分に言いつけて、何とか自制することができた。

 そのおかげで過ちは犯さなかったが、結局それを知ってから自分でも距離を置くようになってしまったんだろう。

 そのせいで妹は俺に嫌われてると勘違いしたとかで避けるようになってしまったのかもしれない。


「わーい、わーい」


 俺は飛び跳ねて喜ぶ妹を見て、可愛いと思う気持ちと、なんとも言えない気持ちに支配された。

 俺のこのよく考えない軽率な返事で妹を傷つけてしまった事になるのだから。

なんだか悲しい感じになってしまいました……

本当ならギャグパートを書く予定だったのに……

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