だいにじゅーろくわ!【死線を越えて】
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キュンキュン……と電子音のような音をたてて半球状になっていた電脳空間のような背景の頂点から元の公園に戻っていく。
周辺は俺が降ろされた公園と全く変わっていない。
ドサリと音を立てて向井が倒れる。
全身は痣だらけになっていたが、血は全くついていない。
どうやらあの空間は痛みを再現するだけの空間だったようだ。
俺も顔を下に向け、自分の体を確認する。
俺は多少赤くなっているが、痣になっていそうな箇所は見当たらない。
「いやはや、彼女が得意だったダーツで初戦敗退することになるとはね。松井弘人という男は捨て置けないみたいだ」
そう言った悠人はその場で一回転するような動作をして、消えた。
去り際に「次に会う時にはよろしく」という言葉を残したが、それが俺にはとても不吉なことが起きる前兆のように感じた。
しかもあいつとは同じ高校の同期。
再開するのは時間の問題だろう。
俺は目の前に転がる向井に目を向ける。
露出している部分を見るだけでも痛々しい。
こういう場合は早く救急車などを呼ぶべきなのだろうが、そうなると事情聴取は待ったなしだろう。
大変不本意ではあるが、彼女は彼女自身が乗ってきた車に置いていくことにした。
◇◆◇
「おい、起きろ~」
俺は後部座席に寝かされている妹の肩を揺すりながら呼びかける。
ああ、妹の寝顔を拝むのは何年ぶりだろうか。最後に見た時とは顔つきもずいぶん変わって、幼さが抜けて大人っぽくなっている。
可愛いのは変わらないけどな!
おっといけない。ついつい頬が緩んでしまった。
今はこんなことしてる場合じゃなくって、家に帰る時だろうが。
しばらく肩をゆすってみるが、全く起きる様子がない。
しょうがない、おんぶして電車で帰るか。
俺は妹の体を抱き上げ、背中に乗せる。
予想していたよりも重かったが、それを言うのは無粋ってもんだ。
「あんた、よくそんな暢気にしていられるわね」
車から下ろし終わると、セレナにそんなことを言われた。
「暢気って、捕まった妹を助けるのは兄として最優先事項だろ。暢気も何もない」
妹には優しくしなきゃね。
そういうと、あきれたようにセレナはため息をついた。
「たしかにね、アンタのクラスが[近親性愛]だから妹を大切にしたいと思うのもわかるわよ。でもね、ここで[腐女子]に襲われてんだから、ほかが来る可能性とかも考えなさいよね」
なるほど、確かに言えてる。
俺は急いで妹を落ちないように担ぎ、駅まで向かった。
速足気味になっていたが、それもしょうがないと思ってくれ。
やっと一回戦が終わりました。
まだたくさんクラスが残っていますが、その辺は追々。
これ、ギャグを目的で書いてるのを忘れそうになってました。




