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だいにじゅーごわ!【込めた熱意は赤く熱く】

1


 向井の矢が俺の腹部に突き刺さる。


「ッ、ぐぅ……………」


 この試合が開始されてからどれだけの矢の応酬を繰り返したのだろうか。

 お互いの服は自身の血で真っ赤に染まり、元の生地の色を見つける方が困難なほどに濡れていた。

 もう痛みは感じない。

 矢が刺さったと思われる場所はジンジンと熱を持ったような感覚しかない。

 ふと視界に表示されているウィンドウに目をやる。

 俺の残された矢の本数は六。

 得た点数が俺は百二十一で、向井が百四十。

 その点数の差は、普通にやっていれば小さなものであったかもしれないが、身を挺して守ることができるというルールが加わっては、一本矢を的に当てることも難しくなる。


「おい、お前はどうしてそこまでして勝とうとするんだ」


 満身創痍の状態で向井に話しかける。


「ハッ、おめぇには関係ねぇだろ。その言葉をそっくりそのままお前に返してやる」


 俺がどうしてここまでして的を守っているのか、ってことか。

 それはもちろん妹のためだ。

 妹がいないと生きる意味を失うだろうと確信できるほど、妹の存在は俺の中で大きなものとなっている。


「妹を守るためだ」


「ほう、妹のために自身を犠牲にする、か。そんな生き方してたらいつか死ぬぞ、お前」


 それは重々承知している。

 現に今、俺は妹を身を呈して守ろうとするあまり、その十七年の生涯を終えようとしている。

 だが、それでも。


「それでも妹を守りたいんだ。小さな頃から一緒に馬鹿やって、笑いあって、最近は向こうから関わりを絶たれたけど、それでも俺のことを考えてくれてるって知った時、俺は改めてこいつがいることで人生が輝いたものになるって気付いたんだ。だからここで失うわけには行かない!」


 この勝負に勝っても他の勝負が待ってるだけ。

 しかし、負けた時のことはセレナに説明されていない。

 ということは負けた場合は死ぬ可能性だってある。

 こんなところで妹を残していなくなるわけにはいかない。

 残されている殆どの力を振り絞り、矢が貫通するような勢いで投擲する。


「やらせてたまるかよ!」


 彼女は俺の投擲にも俊敏に反応し、矢の描く軌道に体を滑り込ませる。

 もうほとんど何も考えられない頭が、視界をスローモーションのようにして写す。

 俺の矢は、彼女の伸ばした手のひらに向かって突き進んでいくが、手のひらと矢が触れ合おうとした瞬間に一瞬だけ矢が軌道を変え、ふわりと手のひらを避けて的に突き刺さった。

 刺さったのは、十のダブル。

 俺と彼女の点差は、一点になったところで試合終了のブザーが鳴り響いた。

今週は葬式などでバタバタしてあまり更新できませんでした。

今月中はまだ忙しそうなので週一更新になります

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