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だいにじゅーにわ!【命を賭して】

1


 高校から駅までの道を俺はひたすら走る。

 この性癖戦争、近親性愛インセストのクラスに割り当てられたから近親性愛で戦おうとしているというのに、そのクラスに割り当てられた理由そのものが居なくなってしまっては意味がない。

それでは俺が勝利したとしても残されるのは無のみ。

 他の性癖が消え、俺の性癖がノーマルになったとしても肝心の妹はいない。

 そんなことにはならないため、俺は急いで駅に向かわなければならない。

 妹が誘拐されたのか、家に事実確認をしにいかなくてはならないし、実際に誘拐されたのであれば、家の近くを指定されるだろう。

 そんなわけで、制服は脱ぎ、ロングスカートで駅まで全力疾走中である。

 道行く通行人の奇異の視線にさらされようが、妹の命に比べたら安いもの。

 とにかく第一優先で家の方面へ向かう電車へ乗らなくてはならない。

 その途中、ポケットの中で再び携帯が震えた。

 俺は犯人からの電話であることも考慮に入れ、恐る恐る電話に出た。


『よお、さっきぶりだなぁ。そろそろ駅に着くみてぇだし、降りる駅を言うからな。降りたらまた電話を掛けるからそこんとこよろしく。んじゃ、瑞帆区役所で降りろ』


 俺は電話でそろそろ着くと言い当てられたことに違和感を覚えたが、それを聞く前に電話は切れてしまった。

 かけなおそうかとも考えたが、電話番号は先ほどと同じく非通知。

 嫌でも瑞帆区役所で降りなくてはならなくなった。

 しかし、やはり妹の中学校付近で俺を下ろそうとするあたり、妹は誘拐されてしまっていると考えて動いたほうがよさそうだ。

 そう考えつつ俺は改札を抜け、新端橋方面の電車へと乗り込んだ。


2


 十五分ほど電車に揺られ、指定された駅までやってきた。

 改札を抜け、駅前で指示を待っていると、本日三回目の非通知番号からの着信があった。


『ちゃんと命令通り降りたみたいだなぁ。じゃあ、そこに向かうからよぉ、しばらく待ってな』


「おい、妹は無事なんだろうな」


『まあまあ、焦んなって。ちゃんと連れて行くからよ』


 それを最後に通話は切れ、駅前で待たなくてはならなくなってしまった。

 時刻は五時前。

 下校する高校生や早めに仕事を切り上げたのであろうサラリーマンが、次から次へと改札を通り抜けていく。

 時折、ピンポーンと改札の閉まる音が響くが、俺にはそんな音すら気にしている余裕はなかった。

 妹は本当に無事なのだろうか。無事だとしても、何か身体的、精神的な傷は負っていないだろうか。

 そんなことばかりが頭をよぎり、とうとう耐えきれなくなりそうになったとき、一台のワゴンが目の前で止まった。

 後ろのドアが開くと、そこには薬か何かで眠らされたであろう妹の姿と、運転席に座るマスクにニット帽をかぶった男がいた。


「おい、俺が居ればいいんじゃなかったのか。妹を返せ」


 俺は質問するが、男は微動だにせず乗車を促す。

 しかし、これに乗ったが最後、俺と妹は臓器売買されても気づいてもらうことができない。


「乗ったら妹は返すんだな?」


 しかし、妹のために手段を選んでいる暇はない。

 妹が死なないように兄としてできるだけ守り続ける。それだけを考えて今まで行動してきたはずだ。

 男は俺のした質問に対してうなずき、俺は死を覚悟して車に乗り込んだ。

新年開けましておめでとうございます。

今年も何とかペースを崩さず投稿していきたいと思います。

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