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だいにじゅーいちわ!【はじめての】

1


 その後の授業も滞りなく行われ、帰りの時間がやってくる。


「じゃあ……、行こっか」


「急にテンションどうした」


 初めて女性をラブホテルに誘うチェリーボーイかよ。


「いいだろ、別に!そんなことよりスタバだよ、スタバ!」


 ……、いや、行くけどさ。女装っぽい感じでスタバとかマジかよ。

 明日から学校休みたいんですが。


「俺とスタバ行って楽しいのかよ」


「楽しいとか楽しくないとか関係ないんだ。女装した男と一緒にお茶をする、これに意味があるんじゃないか。相手が美しければなお良し!」


 こいつ性癖やばすぎ。

 こいつと合致する性癖があったら確実に代行者に選ばれてんだろ。

 こわ、近寄らんとこ。


「じゃあ、早速……」


「お、おい、何するつもりだ……!」


「?何って、エスコートに決まってんだろ。いくら女装が好きだからって掘ることに興味はねえよ」


 怖。いきなり肩抱こうとすんなや。

 反射的に三歩くらい後ずさっちゃったじゃねぇか。

 掘ることに興味ないってのも、建前で言ってるだけかもしれないしな。こいつは十分警戒するに当たる要注意人物だ。様子を見ながら行動した方がいいな。

 襲われそうになったら逃げる。

 いや、それじゃあ遅いか?

 ちょっと動いたら逃げた方がいいか?


「――おいって」


 うわ、肩叩かれた!逃げろ!


「ちょ、なんで逃げんだって!」


 うわ、このゴリラ追いかけてくるんですけど!?


「携帯なってんぞって!!」


 ……、え?携帯……?

 俺はポケットからスマホを取り出す。

 そうすると、スマホには非通知番号から電話がかかっているという画面が表示されていた。

 俺はいたずら電話だろと思いつつ、しかし、架空請求とかだったらどうしよう、という不安に苛まれながらスマホを耳に当てた。


『貴様、松井 弘人だな』


 声にノイズのようなものが混ざり、テレビやネットの犯人でよく聞くような感じになっている。

 これはあれだ。架空請求で、本人確認とってお金を騙し取るってやつだろ?おれしってる。


「インヤァ?違いましゅよぉ↑?」


 これで完璧だろう。


『声を変えようとしたところで無駄だ。[近親性愛インセスト]の松井さんよ』


 え、なぜバレたし。

 こいつあれか、契約のサキュバスに唆されて戦闘仕掛けてきたタイプのやつか?


「何の用だ。悪戯なら切るぞ」


 悪魔で俺が松井 弘人である事、インセストである事は肯定も否定もせずに語りかける。


『まあまあ、焦りなさんなって。君の行動の源は私が握ってるんだからよ』


 その言葉に、一瞬、嫌な予感が頭をよぎる。

 そんなはずないと頭では否定しながら、背後から聞こえる鎖のようなジャラジャラ、という音が嫌でも最悪のシナリオを想像させる。


『君の妹は私が誘拐した。返して欲しければ、今から私が指示する場所に一人で待て』


 そして予想した中で最も最悪な答えが相手から紡がれる。


「本当に、妹なのか確認させろ」


 静かに、こみ上げる怒りを堪えて問いかける。


『そういうだろうと思ったさ。さあ、こっちへ来い』


 背後で今までなっていたジャラジャラ、という音が徐々に近くなり、受話器の近くで止まる。


『お兄ちゃん、きちゃダ』


 そこで通話が無理矢理切断される。

 残ったのは受話器から流れるプー、プーという断続的な機械音だけ。

 俺は一人目の選定者と戦うことに、そして下手をすれば妹を失うことになるだろうという恐怖と葛藤に苛まれた。

突然のシリアスパート(白目)

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