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だいいちわ!【俺の妹は】

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 この世界には『妹』、と呼ばれる嗜好の存在があるのはもちろんご存じだろう。

 世の中の健全男子諸君なら誰しも抱く理想と妄想の塊だ。

 しかし、実際に妹を持っている人間は皆口をそろえてこう言う。『こんな妹なら弟が良かった』、『どうせなら姉が欲しかった』と。

 それはまるで俺たちの理想の妹はどこにいるのだ、と訴えかけているようにも思える。

 確かにこれは彼ら個人の感想であり、実際は義理の妹とゴールインしてしまったいけないお兄様たちもいるだろう。裏山けしからん。

 だが、恵まれない妹を持っているお兄様たちが多いことも事実である。

 かくいう俺もその恵まれないお兄様たちの中の一人だ。

 俺には今年で中二になる『沙夜香サヤカ』、という一人の妹がいる。

 成績優秀、スポーツ万能、完全なプロポーション。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花、眠る横顔は紫陽花の如く。そんな完全美少女で、どこかのギャルゲーなんかに出てきてもおかしくないほどハイスペック。

 小学生までは仲良く話をしていたし、一緒にお風呂に入るのも日常茶飯事だったのだが、俺が中学生になると部活が忙しくなり、ほぼ毎日帰ってくるのはいつも八時過ぎ。

 その時間に食卓を囲むのはいつも俺と父さん、母さんの三人だった。

 母さん曰くすでに母さんと沙夜香は食事を済ませていて、晩飯を食っていないのは俺と父さんだけだと言っていた。

 そんなこともあり、俺と沙夜香は徐々に会話しなくなっていった。

 中学校三年間は俺も部活一筋でやってきた。たまにある俺の試合に初めのうちは沙夜香も付いてきて一生懸命応援してくれた。

 しかし、時が経つにつれて徐々にその回数は減っていき、中学を卒業する頃にはその回数はゼロになっていた。

 やがて俺は高校に進学し、妹は中学に進学した。

 俺は中学の頃から続けていたバスケを高校でも続け、妹は吹奏楽部に入部した。

 二人とも部活に追われる日々が続き、やがて二人の関係は急速に疎遠になっていってしまう。

 それでも俺は妹と復縁したいと考えていて、中学生の頃よりかは暇になった時間を使って妹とコミュニケーションを図るも、すでに俺のことは妹の中ではアウトオブ眼中らしい。

 話しかけても『忙しい』、『うざい』、『近寄らないで』等の返事ばかりが続き、うまくコミュニケーションも測れない始末。

 過去の可愛かった妹とはなんだったのか、と思うほどに冷たくなってしまったのである。

 高校に入ってから妹に冷たくあしらわれることが多くなってきて、俺はついに禁断の領域に踏み込んでしまう。

 ズバリ、『妹が甘えてくる』という内容の大きなお友達向けゲームの購入だ。

 はじめてのえろげというサイトでおすすめの妹モノのエロゲを検索したところ、『妹だからってHはしないの?』という作品がヒットし、さっそくそれを買ってプレイした。

 感想としてまず最初に出てきたのは、『最近の技術ってすごいのな』だった。

 いや、だって今まで日常シーンはテキストをずっと読ませてきて後ろで女の子の立ち絵が変わるだけだったのに、唐突の3Dシーン。

 まあぬるぬる動くわけだ。アソパソマソが勤務先で頭を断りもされずに蒲生君にいきなりえぐり取られた並みの衝撃だよね。

 画面の中のゆいちゃんが喘ぐ姿を俺は右手を動かすことも忘れて画面に食いつきながら集中して見た。

 やがて濡れ場が終わり画面が暗転すると、黒い画面の中には先ほどのエロかわいいゆいちゃんではなく、食い入るように画面をにらみつける目つきの悪い男がいた。

 誰だこの男は?という疑問が浮かんだ。俺だった。

 先ほどまでの衝動は何処へやら、画面が再びテキストシーンに戻るころには俺の下半身に棲むマツタケは完全に戦意喪失していた。

 嘘だろ……お前、さっきまで元気マックスファイヤーでスタンドアップしてただろ!と、悪態をついたところで時すでにお寿司。

 仕方なくゲームをセーブして画面を閉じ、そっと電源を落とした。

 しかし、このゲームが後に俺の人生を大きく変えてしまうことになるとは思っても見なかった。

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