だいじゅーななわ!【契約が済んだからっていなくなるわけじゃないから】
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おはようございます。
目覚めの時点でデジャヴを感じている弘人さんです。
……あのー、どうして毎朝のようにギャーギャー騒ぐんですかねぇ……?
『ちょっと、こんなところで何してんのよ!?てか、あんた誰!?』
『あら、自己紹介はしてなかったかしら?私はセレナ。以後お見知りおきを』
『「私はセレナ」じゃなくて!どこから来たのよ、あんた!?』
『私は彼を選定者に選ぶために来たんだけど?』
『選定者って何なのよ!……大体なんでこう、毎日毎日家にいる人間が増えていくのよ……!』
『私は人間じゃなくてサキュバスよ?』
『ねぇおかーさーん!変な人がいるんだけど!!』
……しまった。
昨日の夜は眠すぎて完全に何も考えてなかったけど、冷静になって考えれば朝起きた時にこうなる可能性は充分あっただろ……!
もうだめだ。終わった。もういっそのこと他人のふりしてこれからのことはセレナに任せてしまうか。
いや、ダメだろ!あいつがいないと戦い方がわかんないから結局負けてシスコンは消えて俺は生きがいを失ってしまう……!
とりあえず二人の間に入って喧嘩というか言い争いをやめさせないと……!
ガチャリと扉を開けると、二人そろってこちらを向く。
片方はよくあるデザインのセーラー服を着た妹。
もう片方は昨晩の際どい衣装ではなく、今の時代に適応した私服姿になっている。
ちなみに、チラチラと肌が見えるという点では何も変わってはいない。
「あのさぁ、朝なんだからもうちょっと静k」
「あ、お兄ちゃん!?この人朝起きたら私のお、おお……、おっぱいとか揉んだりして来てたんだけど、お兄ちゃんの知り合いなの!?」
何してくれちゃってるんですかねぇ、このアマは!
大体人の妹の乳をいきなり揉むったあ、どんな思考回路してたらそんな行為に及べるんだよ!チンパンジーかよ!
脳内に寄生虫飼ってるのか疑うレベルなんですが!?
「いや、私には全く関係はございません。彼女は煮るなり焼くなり好きにしてください」
「おかーさん、警察呼んで!!」
警察は草。
とか冷静なこと言ってる場合じゃねぇだろ!
一旦引き留めねば……!
「まて、沙夜香。警察呼ぶ前に俺はどうしてお前の胸を揉むなんて愚行を犯したのか聞くべきだと思うんだ。そのほうが警察が来た時にすらすら説明できるだろうしな」
うん、我ながら即興で思い浮かんだにしてはいい口実だと思う。
妹は少し逡巡した後、こういった。
「いいけど、学校があるからはやくね」
「お、おう」
確かに時間も時間だ。
俺もそろそろ高校に行かんといかんし、長く話をするのは少し厳しいだろう。
一番楽なのは俺が全部昨日あったことを話してしまうのが手っ取り早いが、何とか細かいところをぼやかして使えられないだろうか。
「簡単に言うとね、昨晩は私と彼がつながってたのよ」
うん、まあそうだな……。
「って、はぁああああ!!」
あんたバカじゃないんですか!?なんでありもしないことをでっち上げたし!バカかよ!
「あら、あなたの考えを読んで『簡単に』説明しただけなんだけど?」
「…………」
つながったって、あれか?
魔法線的なやつか?まあ、そんなことはした気がするけどさぁ、せめて言葉選べよ!バカかよ!
「要約しすぎだろ!」
俺がセレナに向かって咎めるように問いかけると、横からとてつもない殺気を感じてぶるっと身を震わせ、急いでそちらに振り向く。
そこには鬼のお面を張り付けたような妹が立っていた。
「兄貴……、こいつとつながったって、ほんと?」
怖い、怖すぎるぞ……!ってかなんで俺のせいになったし!横の人咎めろよ!
「一回落ち着け、な?」
「私は落ち着いてるよ?」
いや、絶対内心怒りの炎が燃え盛ってるだろ!こえぇよ!
「いいから、一回俺の部屋に入って、な?詳しい話は中でするから」
そういうと表面上は怒りを一旦沈めてくれて、安堵しつつ部屋に入れる。
「もうこうなった以上、言うしかないだろうから言う。落ち着いて聞いてくれ」
もうしょうがない。こうなったら全部ぶっちゃける。
「誰にも言わないでほしいんだが……、お兄ちゃん、その、魔法使いになったんだ」
ちなみに、この小説の舞台は愛知県となっております




