だいじゅーさんわ!【落とせない単位のレポートには気をつけよう!】
1
走るようにして小学校から離れた俺は、家に帰って提出が明後日に迫ったレポートの仕上げに手を付けていた。
ここからは校正などをして誤字脱字があれば訂正し、提出に備える。
鞄に手をかけレポートを取り出し、いざやるぞ、と手を付けようとした瞬間に家のインターホンが鳴る。
母は平日は出勤日なので必然的に俺がインターホンに出なくてはいけない。
「はい、どちら様ですか?」
『俺だよ、開けてくれ』
インターホンに映っていたのはこの間麻雀をした服部だった。
玄関に向かい扉を開けると気さくな調子で服部が俺に話しかけてきた。
「いやぁ、家にいてくれて助かったぜ。お前、化学のレポート終わってるっしょ?参考にさせてくんね?」
「いいけどさ、丸パクりじゃ成績落とすぞ?」
「参考にするだけだから大丈夫だよ。それ見た後自分でやるから」
俺は少し考えた後、こいつを家に入れることにした。
2
「いやぁ、助かったぜ。問題は解けたんだけど、その先のこれからわかることなんてちんぷんかんぷんでさぁ」
「あのな、俺に聞きに来るのはかまわないけどさ、俺は詳しく説明できるわけじゃないし、第一俺じゃなくても悠人辺りに聞けばわかるだろ。なんで俺なんだよ」
「あいつはわかりすぎてるからダメなんだよ」
「は?」
「だから、あいつは細かく説明してわけわかんないことまで言い出すから、ちょうどよく教えてくれるお前に頼みに来たってわけ」
俺のところに聞きに来た理由はわかる気がしないでもないが、それでもあいつのほうが俺よりわかりやすく教えてくれるだろうという気持ちは消えなかった。
そんな友人は、俺のレポートを見ながら時折考える素振りを見せて、突然こう言った。
「そういやお前、この間の件はどうなったんだよ」
いきなりこの間の件と言われても俺にはさっぱりわからない。
「この間の件って、いつの話だよ」
「ついこの間だよ、妹がどうとかって」
「ああ、あれか」
友人の話に合点がいった俺は進捗を話す。
「お前のアドバイス通りやったら仲直り出来たぞ」
そういうと目に見えて表情をパッと明るくし、
「やっぱりか!オタクじゃないとあのフィギュアは気にならないもんな!」
といった。間違いは訂正しておくべきだよな。
「いや、オタクじゃなかったぞ」
「は?じゃあなんでお前のフィギュアなんて壊したんだよ」
「俺の部屋の掃除してた時に棚から落としたらしい」
俺がそういうと明るかった表情を苦悶の表情に変え、心底不快そうな声を出した。
「ああそうかよ、結局はブラコンの妹の愛ゆえに起きてしまった事故だったわけだな畜生」
「そんな釣れないこと言うなって。今は喧嘩して元の状況に逆戻りしてるさ」
嘘だけど。
「マジか。やったぜ。人の不幸は蜜の味ってな」
そういうと、それっきりレポートに集中したまま話しかけてくることはなかった。
時折俺のレポートを見て『なるほど』、と一言漏らすことはあっても雑談らしい雑談は修哉のレポートが終わるまでは一切なかった。
3
夕方。
しばらく雑談した後、「そろそろ帰るわ。明日は学校だしな」と修也が立ち上がったのを合図に、疑似的な勉強会はお開きとなった。
「今日はほんとに助かったわ。おかげであんまし理解できてなかったとこもお前のおかげで補完できたしな」
「それはいいんだけどさ、ちゃんと授業聞かないと留年なるぞ」
「大丈夫だって。じゃ」
それだけ言い残して手を振り去っていく修哉を見送り、後姿が見えなくなって家に戻ろうとしたところで服をつかまれていることに気が付いた。
「おにぃちゃん、どうして小学校まで迎えに来てくれなかったのぉ?」
そこには悲しげな雰囲気で立つ幼女の姿が。
「ああ、ごめんごめん。高校の友達が勉強しに来てて、さっき帰ったばっかなんだ」
すると表情をさらに悲しそうにし、
「おにぃちゃんが迎えに来てくれると思っていつもと違う道でゆっくり帰ってきたんだよぉ……?」
と、今にも泣きそうになりながら訴えてきた。
幼女を泣かせたら死刑だぞ、マジで!
幼女を物で釣るのは気が引けるけど、今は手段がこれしかないんだ!世の中のロリコンたち、今だけは俺がすることを許してくれ!
「本当に悪かった。お詫びと言っては何だけど、今日は梨花ちゃんが好きな料理をごちそうするよ。何がいい?」
そういうと顔をすぐに笑顔にし、こういった。
「私、シチューがたべたい!」
俺まで元気になってしまうような満面の笑みで。
「ああ、いいよ。作ってあげるさ」
「ありがとう!大好き、おにぃちゃん!」
その一言で、俺の心臓は撃ち抜かれた。
……真面目モードもいいけど、このモードも年相応って感じがしていいな。
スズメバチが寄ってきそうなタイトルですね(すっとぼけ)
そんなことより、そろそろストーリーも一つ目の山場に入りますよ!




