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侵食  作者: しかないモ腐
1/1

対抗

暗い路地裏をただ全力で走る。

「いい加減に諦めたらどう?」

聞きたくもないあいつの声がすぐ近くでで聞こえてくるきがする。

いやだ。聞こえない。きこえるはずがない。

でも綺麗で透き通るような声が脳を侵食していく。

ぜぇぜぇと切れる息も気にせずただただ走る。その先に何が待っているかも分からずに...。






私立鷲宮学園。そこに通う俺、南川 司は、どこにでもいる普通の高校2年だ。

唯一他人と違うとすれば悪いことが起こったことが1回もないとうことだ。不幸を寄せ付けないというかなんというか。まぁ幸運という訳でわないのだが。


ある昼時、

「なぁ司、苦手なものってなんかある?」

小学校からの親友、智也がはなしかけてくる。

智也はふんわりした柔らかい短めの茶髪に、大きめの目、いつも明るく振舞っているので今はクラスのムードメーカー。

「んーそうだな…...、しいて言うなら、生徒会長。」

そう、我が鷲宮学園会長3年、石清水 直は、学園の誰もが憧れる生徒なのだ。流れるような綺麗な黒髪に吸い込まれそうな薄紫色がかった瞳。よく聞こえる透き通るような声。高身長でスポーツ万能。勉強もできて、人当たりもいい。男女をとわず人気のある、そんな全てが完璧な人。だが俺は、その完璧すぎる゛外見゛に、ゾッとするのだ。

「そーか?俺は結構好きだぞ、会長。」

そうは言われても苦手は苦手なのだ。

...女子の人気があるのも少し気に食わない。

「おっ、噂をすれば!」

廊下から女子の騒ぐ声が聞こえる。

「南川君っている?」

何故か俺が呼ばれる。

「.......はい。」

会長の前に行くまでなにかしたかと内心焦りまくりで頭で嫌な想像がぐるぐるとまわる。やばい。目眩がしてきた。

「な、何か御用でございますでありますか?!」

体が強張り、変に意識したせいで言葉がおかしくなった。会長が一瞬ポカンとして次にクスッと笑う。凄く恥ずかしい。

「いや、用って訳じゃないけど生徒会室に今日新しい本がくるんだ。図書室に運ぶのを手伝って欲しいんだ。南川君って図書委員だよね?」

なんだ、普通の手伝いのお願いじゃないか。焦って損をした。

「はい。分かりました。でも、昼はちょっときついので放課後でいいですか?」

失礼なことと分かりつつも質問をしてみる。

実際は用事などないのだが、単に昼にやるのがめんどくさいのだ。すると会長は、

「ああ、もちろん!(その方が都合がいい)」

「あの...、

「ちょっと!直君の頼みを聞かないってどーゆーことよ!」

「そーよそーよ!」

後ろの女子からギャーギャーと罵倒が飛んでくる。

ああ、鬱陶しい。こっちにだって予定はあるのだ。

「やめないか、君たち。」

会長の一言で女子達は少し納得行かない様子だが、大人しく引いていく。

「それじゃあ放課後に。」

軽く会釈して距離をとる。

そーいやさっきの会長の一言、何か引っかかるけどまぁいいか。少しめんどくさいと思いながらも智也の元へ戻っていく。

「おふぁへり、用事ってふぁんだった?」

戻ると智也は俺の昼飯の焼きそばパンを頬張りながら聞いてきた。

さすがにイラッと来たので1発お見舞いしつつ、さっきのやり取りの説明をした。

「ふーん。じゃあ俺待ってるわ。」

こーゆう事をさらっと言うのがこいつの好きなところだ。

「じゃあ教室でまってて。」

おう!とでかい声で返事をされて不意に笑ってしまった。





放課後、俺は約束通り生徒会室へ向かった。いざ生徒会室前に立つと先生に呼び出された気分になってきて、足がすくんでしまう。意を決して軽めにノックをし、返事が帰って来たことを確認し、静かに入る。

「やあ、わざわざありがとう。」

会長の顔が夕日に照らされより一層輝いて見える。他の生徒なら綺麗だと見入ってしまうだろう。だが、何故か俺は、酷く、恐ろしく見えてしまう。

「あ、あの!本はどこに?」

「向こうだよ。」

指が指し示した方向を見る。すると、

ガチャン!

と、ドアの施錠音が聞こえた。

慌ててドアの方向を見るとドアを背にして会長が立っていた。会長は不気味に微笑みながらゆっくりと近ずいてくる。

「──────ッッ!」

やばい。これはやばい。今すぐ逃げろと本能が危険信号を発している。ガタガタと椅子を押しのけながら逃げる。しかし、歩幅が大きい会長はすぐに俺に追いついてしまう。腕を捕まれ強引に机に押し倒される。

「いっ、やめろ!やめっ、っく!」

必死に抵抗も虚しくガッチリと抑え込まれた腕はビクともしない。

改めて見ると本当に綺麗な顔をしている。まて、何かがおかしい。1度は夕日のせいかと思った。だが、ちがう。会長で夕日が隠れたぶんハッキリと視認出来る。

目が─────紅いのだ。

ただ紅いんじゃない。吸い込まれる、地獄で激しく燃える業火のように。背筋に嫌な汗が流れる。怖い。とてつもなく怖い。今すぐ逃げ出したい。だが逃げられない。

頭でどうすると考えていると、会長が顔をぐっと近ずける。綺麗な整った顔も、今は恐怖を煽る材料にしかならない。

恐怖のあまり固まっているといきなり唇が重なった。驚きのあまり固まっていると、ぬるっ、と閉じていた唇を割り会長の下が入り込んでいた。未知の感覚に我にかえり、暴れると唇を離される。会長の顔を見ると、はぁ、と熱い吐息をはきながら俺を見下ろしていた。何故だか俺は今の状況にも関わらず、今の会長が美しいと思った。

「ひゃっ!へ、え?」

見とれていると今度は会長が俺の首筋にキスを落としながら俺の下半身を弄っていた。自分でもあまり触ったことのないそこは、受け入れがたい感覚に脳が痺れて深く考えられなくなる。

「ふっ、んぁ!やっ、」

一際強く握られ体が軽く痙攣する。首筋に舌が這い、頭がおかしくなる。大きな波が来る一瞬前、いきなり首筋を噛まれ、意識が覚醒し、反射的に足を振り上げ、会長の腹に蹴りが入る。力が抜けた瞬間に会長の足下からすり抜け、ドアの鍵を開けて廊下を駆け抜ける。

「あっ、司。遅いから荷物持ってきた─...

智也の事も気にせず、走る。校舎を出て、ひたすら走る。









その頃智也は廊下で立ったまま困惑の表情を浮かべていた。

「なんだぁ?あいつ。せっかく人が荷物を持ってきてやったのに。なんかあったんかな?」

まぁいいか。と結論ずけ、帰ろうとすると、

「早瀬君だよね?」

不意に名前を呼ばれ、振り返ると、そこには生徒会室から出てきた直だった。

「そーっすけど。何か?」

何か用事かと聞き返すと直は、

「いや、実はまだ本を運び終わっていなくてね、南川君も帰ってしまったから、よければ手伝ってほしくてね、」

「まぁいいっすよ。」

あいつ、仕事放ったらかしにしてかえったんか…と心の中で悪態をつきつつ生徒会室の中へと入っていった。


静まり返った廊下。そこに響く音はドアの鍵の施錠音とどこからか聞こえた透き通るような声だった。



「これから先の時間は僕のテリトリーだ.........」

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