生じた均衡
補給線の確保はなった。
今行われているのは論功行賞である。
称えられているのは3人の聖騎士団副団長であり、戦闘の口火をきった傭兵団だ。
対して、逃げ出した聖騎士団団長や聖騎士は自己弁護をしている。
ただ、各国が観戦していた中での逃亡であり、誤魔化しは難しい。
終戦時に戦っていた者は戦場におり、逃げ出した者は本陣付近にいたのだから。
「本陣を守るために退いたのであって逃げたわけではない。」
聖騎士団と本陣の間には悪魔払い部隊が待機しており、無防備ではなかった。何より、本陣には各国の軍がいる。
「1度、軍を立て直す必要があったのだ!」
本陣まで逃げてへたり込んでいたのは、皆が見ていた。
各国の将軍の前で醜態を晒していく。
「今回の戦いは勝ったのだ!誰かを責めてどうする?」
「責任は汚れた平民がとるものだろう!そうだ!副団長の首を斬れ!!それで終わりだ!!」
各国でも敗走は許されている。しかし、敵前逃亡は厳罰である。厳しい国では死罪となる。
罪を逃れたい権力者の身内と、罰する事で権力者に睨まれたくない聖王国軍首脳。
どちらもうやむやに済ませたい。
それがアリアリと判る。
聖王国の威信は地に墜ちた。
「よろしいでしょうか?敵前逃亡ではなく、後退しただけなら問題はないのではないでしょうか?」
弘中隆包の発言に場はざわめく。
各国は「お前は何を言っているんだ?」と思い、聖王国の面々は「助かった」と考えた。
事実「そのとおりだ!」と主張するバカもいたのだから。
「彼らは『ドラゴンゾンビに敗走など騎士の恥だ。』と言っていた面々です。逃亡などしないでしょう。しかし、敵前逃亡の疑惑が出ているのも事実です。ならば、彼らだけでこちらに迫るドラゴンゾンビを打ち倒し、逃亡ではないと証明していただいてはいかがでしょう。」
弘中の意見を理解した各国は賛同の声をあげる。
逃走した聖騎士達の顔は真っ青だ。
結局各国におされ、逃走した聖騎士達だけで出陣する事になった。
出陣後、彼らは集団で聖王国に逃げ出した。
しかし、食事の準備や馬の世話、哨戒などを自分達でできるはずもなく、すぐに動けなくなる。
数日後、補給線の再確保と補給のために国境付近までさがった全軍に発見され、恥を晒すことになった。
この話は各国の軍により、すぐに世界中に広がる。
聖王国の象徴たる聖騎士団の醜聞により、聖王国は求心力を失っていく。聖王国は岐路に立たされていた。
また、リッチ達にも動きがあった。
数十体のドラゴンゾンビが瞬く間に倒された事に研究者「バナボルン」が興味を持ったのだ。
軍が退いた後に現地を訪れ、調べる。
わからなかった。わからなかったからこそ知りたくなった。大地を調べ、泉を調べる。
しばらくしてバナボルンは国を抜ける。
「研究対象が見つかった」と。
国境を境に均衡が生まれていた。




