蠢く策謀
灼熱の大地、揺らめく蜃気楼。
ここは砂漠の国。
暗き天幕の中、謀議は行われる。
1人は砂漠のサソリの異名を持つ「ムー・ラ・スーン」。この国の王だ。
神経質そうに眉を潜め、引き締まった細身の肉体。
その姿を将の前に見せる事も稀であり、謀略、調略、暗殺、煽動により国を大きくした策謀家である。
滅ぼしたり降した国や部族は「○○将軍さえいれば、○○様さえいれば。」と言う。
ムーに言わせれば、いればと言われる相手だからこそ事前に排除したのだ。厄介な相手と正面から戦うなど愚の骨頂である。
1人はその弟である「ジード・ジ・スーン」。
爽やかな笑顔と流れるような話術で交渉や内政を行っている。王が最も信頼する弟であり、王が最も警戒する野心家でもある。
スーン家の男であり、ムーの兄弟で唯一ムーに暗殺されなかった男だ。ムーが危険性と必要性で考えた時に必要性が勝るのだ。
さらに1人。闇の中に男とも女とも判らぬ者が佇む。王の闇。暗殺集団の長。
薬により痛みや恐怖を消し、己の命を顧みずに暗殺をする者達を統べる。代々の長は「無」を名乗る。
初代が遥か東方の暗殺者から奪った名だ。
狙うは子供のオモチャにはもったいない広大な領土。
「まずは混沌を数滴。波紋は拡がり、ぶつかり合う。波荒れた池に飛び込む阿呆鳥も。」
小国を挟んでいるが、だからこそ我等を警戒はしていまい。サソリは静かに近づいていた。
大日本帝国東部は混乱していた。
相次ぐ挙兵と賊の出現。
それに乗じて国境を窺う複数の小国。
安芸国虎と家城之清の2人は少ない兵力を民を守るために使わざるえなかった。
村の復興は元々できていない。
街の復興を中止して、3つの都市へと民を集めて護る。一番大きな都市で安芸国虎が指揮を執り、家城之清は1人で各都市に近付く斥候を排除していた。
彼らに都市外の情報を得る術はすでになかった。




