戦略の変更
「ふざけんな!!」
使者の前で声をあらげる。
アントン王国の軍が敗走だと?
数万の魔物に襲われたと言うが、戦場を検分した冒険者によれば魔物の数は2千から3千。
ゴブリンとオークだけなら倍の6千あれば充分だ。
それが2万出して敗走だと?
一度後退して野営をしているかと思えば敗走だと?
「使者どのは数は数えられるのか?百の上がいつから万や億になった!!」
暗に知っているんだぞ、と匂わす。
使者の顔色が赤くなったり、青くなったりする。
考えている事がモロバレだ。こんなやつが使者じゃ駄目だ。斬られてもいいやつを寄越したのか?
「アントン王に伝えろ!!せめてどこかの街を囲んでから約定を果たしたと胸をはれ!!兵の数を揃えて行進させただけなら遊びと変わらん!!」
怒りが収まらないなかで考える。
アントン王国は駄目だ。うちの王子の手紙からも宴と女の話しか出ない。もう出兵は無理だな。
せめて国境を越えたところでオーガ共を引き付けて欲しがったんだが。
そしてダッカのジジイが死んだなら、あの国は滅んだ。つまり、ムスラ王国の軍はすぐにはこれない。
頼りとするムスラ王国の事を考える。
約定では、ムスラ3将軍の誰かが兵を率いてくるという事だった。
大将軍パーカーは政治、外交、軍事とバランスよくできる。 飛び抜けたものがないともいうが、何でもできるヤツは貴重だ。全てを任せて他国に派遣するならコイツだろう。
宿老アンデルンは経験豊かな老将だ。
今の王とは折り合いが悪いとはいえ、攻守に優れた国の要だ。国の護りに残すだろう。
隻眼将軍サントスは猛将だ。
攻めて攻めて攻める。他国を攻める今回には向いている。
兵力は5万から7万か。
この国に来るまでは時間がかかる。
「クソッ!!」
戦略の破綻だった。
他国の兵を囮にして国内の魔物を引き付けてもらう。空いた王都を俺達がもらう。
王都の攻略は無理になった。
だが出兵の取り消しはできない。
国民が国の奪還ができないと思ってしまう。
近場で拠点を獲るか。
海の街か鉱山都市か。
海の街は攻められたら護りきれない。
鉱山都市は攻めにくいが護りやすい。
鉱山の魔物の排除も必要だが、それ以上に鉱物は魅力的だ。
鉱山都市の攻略だな。




