誘引
魔物を引き連れた侍達が隘路に入っていく。
魔物達は止まる事なく追撃する。
「今よな。」
佐久間信盛が刀を降り下ろす。
それを合図に隘路の高所を抑えた兵達が矢を放つ。
矢と魔法により魔物が殲滅されていく。
侍達にも突撃を禁じており、それぞれが大弓や魔法で仕留める。
ようやく魔物もここが死地であると気付く。
逃げ始めるが少し遅かった。
隘路に入らなかった魔物が逃げていく。
佐久間信盛は追撃を禁止した。追撃した先には魔物の大群がいるからだ。今回の一戦でおよそ1万を仕留めた。自分達の損害はほぼ0である。悪くはない。
「さて、次の一手よ。」
1日後、大きく迂回した侍達がまた攻撃を仕掛ける。今度は北へ北へと誘引していく。
そこには広い路が出来ていた。この路を行けば街や村に当たる事なく大山脈まで行く事になる。
そこまで誘引できれば、途中の小国を護る事になる。兵を失わずに目的を達成できるならそれがいい。
もちろん魔物が途中で追撃を止めれば失敗となる。
魔物も戦闘の熱気が覚めれば追撃を止めるはずである。また魔物は大群であるため、一部しか誘引できない可能性もある。
ゆえに7000の兵を小分けにして絶えず戦闘を仕掛ける。小数しか率いた事がない者は50人程度を。
その他の者は数百人を率いている。
この策に対しては佐久間信盛は反対した。
しかし多くの侍達が賛同したため承認するしかなかった。
佐々孫介は木の根に足をとられる事もなく疾走する。付き従うは50の傭兵。狙うは戻ろうとしている魔物達。
地を蹴り飛び掛かる。
そして一閃、二閃。
静寂、そして悲鳴。
一拍おいて怒号があがる。
瞬く間に戦場と化した。
「退くでね!」
即座に北へ誘引する。北へ行きすぎると前の魔物の集団ともぶつかってしまう。突撃しなかった傭兵達の弓矢の援護に魔物の追撃速度が落ちる。
そして佐々孫介達は姿をくらます。
南下して動かぬ魔物を誘引するために。