虎の戦い
王都を囲まれながら信虎はご機嫌であった。
敵は大群。されどたぎる血潮は抑えられない。
魔物達が押し寄せてくる。矢が舞う。ゴブリンどもが倒れていく。されど魔物は止まらない。
後続に押され水堀が魔物で埋まっていく。
2つの水堀が魔物の水死体で埋まり、城壁に取り付いてくる。城門を破られれば王都はすぐに魔物で溢れるだろう。落石や油を使った火計で時間を稼ぐ。
狼煙が上がった。伏せていた小山田達が動き出す。
小山田の魔法により礫が魔物を打ち据える。
頭蓋を砕かれ手足をもがれる。
コモン「米倉重純」が槍を振るう。
気付いていない魔物を後ろから殺し、次の獲物も殺す。飯富道悦も魔物を打ち倒していく。
後背から襲われた魔物は混乱し始める。
その時雄叫びがあがる。
群れを指揮しているオーガジェネラルだ。
混乱を静めようとしている。
「見つけた!!」
愛馬「鬼鹿毛」を駈り敵を蹴散らし愛刀で頸を刈る。一閃。
魔物達は一斉に逃げ出す。
刀を降り下ろし号令を出す。
「追撃じゃ!!」
狩りが始まる。
信虎に撃ち破られた魔物達が戻る先に本隊がいる。
そう考えた荻原達は追跡調査をしていた。
その目に飛び込んできたのは陣である。
森や丘も埋め尽くしている。
さらに巨大な魔物、空を飛ぶ魔物までいる。
その数は20万を下るまい。
さらに先程のように万を超える群れを派遣しているのだ。
「これは勝てぬ。」
荻原が呟く。有利な地に引き込み策を労しても将や兵がいなくては何もできない。
コモン「多田常昌」を大日本帝国への急使として派遣し、急いでコトノ王国に戻る。
この時点で魔物が10万を超えると知ったのは荻原達だけであった。他国の認識は『強い魔物に率いられた5万程度の大群』であり、大国が動けばすぐに片付くと考えていた。
ムスラ王国は対死者を宿老アンデルンに任せ、王族・貴族は東にある城塞都市に移り大将軍パーカーが内政、外交を一手に引き受けていた。
ムスラ王国の面子のために他国に援軍を求める事はできない。さらにムスラ東部にいた魔物を駆逐したら隣に大日本帝国という国ができていた。
国境には数千の兵はいるようだ。
こちらも5000の兵を対峙させる。
動きを封じてから外交に持ち込む。
友好関係を築きムスラの益となる同盟を結ぶ。
ムスラ王国の再興は難しくないはずであった。