とある決戦
各1000の傭兵を率いる5人の将は傭兵達の情報により大日本帝国東部で起きていた事の真相にたどり着いた。足利軍にも接触して陶軍の情報も手に入れた。それらを纏めてランデルに報告の使者を出した。
各軍も偵察任務を終了して帰還する。
足利軍は陶軍に備えるという理由で留まったが。
そんな中、ワインバッハ王国と陶軍の決戦が行われようとしていた。度重なる襲撃に我慢できなくなったワインバッハ王国軍が仕掛けてきたのだ。
拠点にしていた山を包囲されそうになり、兵糧攻めになる事を嫌った陶軍が平地での戦いを挑む形となった。
ワインバッハ王国軍は2万。横陣を敷いている。
対する陶軍は2000。兵に陣形を仕込む時間はなかった。
ワインバッハ王国軍は前列に奴隷槍兵を配置して壁にしている。その後ろには重装歩兵も控え、さらに弩兵を配する布陣だ。両側には騎兵もいる。
対する陶軍は陣を組む時間と練度がなかった。
強大な軍勢を見て士気もない。
「ここまで、ですかな?
物見もできない兵ばかり。その兵すら失おうとは。」
嘆息する弘中。彼には敗戦がわかっている。
「いかに死ぬか。」
自分を討つために2万の兵がいると思えば心も踊る。
敵から一斉に矢が放たれる。
陶軍の兵は倒れ、逃げ出す。
そんな中で弘中は風を身に纏わせ矢避けとする。
駆け出し敵陣へ向かう弘中に対し魔法が降り注ぐ。
しかし質量のある岩等は風の魔法では防ぎきれない。
広範囲に拡がる炎も肌を焼く。
水魔法で癒しつつ敵陣にたどり着くと、待っていたのは一面の槍である。魔法で切り崩し突入しようとするが陣は崩れない。
1対1なら間違いなく勝てる。1対10でも勝てる。
しかし、軍という集団が相手では難しかった。
弘中はほとんどの魔力を使って数多の風刃を作り出す。
それを解き放つ。風刃が敵兵を切り刻む。
次々と刻まれる味方を見てワインバッハ王国軍の陣が綻びる。
それを見逃す弘中ではない。
その綻びに飛び込み、陣を切り崩す。
敵の槍を奪い、振り回し、投げつける。
「弘中隆包也!この頚とって手柄とせよ!!」
高らかに名乗りをあげる。
「見事也。弘中隆包。」
開戦時から動かぬ陶晴賢が呟く。
思い浮かべるは燃え落ちる大寧寺。
強大な魔力を込めた渾身の大規模魔法。
黒き炎が敵軍を包む。
予め知っていた弘中は風と水を纏って身を護っていた。それでも多少の火傷を負ってしまう。
だが、ワインバッハ王国軍の兵達は骨まで焼かれ灰となる。焼かれていない者も火傷を負ったり、炎を避けるために逃げている。
もはや軍ではない。烏合の衆となっている。
1人でも多くの敵将を討ち取る。そのためと魔法の発動の時間稼ぎのために危険を冒して前線にいたのだから。弘中はさらに斬り込んでいった。
陶と弘中によりワインバッハ王国軍は4000を超える死傷者を出していた。
普通なら戦線が崩壊してもおかしくはない。
ワインバッハ王国軍が持ちこたえている理由は死傷者のほとんどが消耗品である奴隷兵だったからである。
陶も馬を走らせ大将首を狙う。
炎により熱された大気により雨が降ろうとしていた。