二転三転
ハグロ傭兵団が帰還した。
それによって東部の情報が伝わる。
東部にはすでに他国の兵は存在しない。
さらに攻め込んできた小国は政情が安定していないという。
東部にある勢力は2つ。陶軍と一向宗。
一向宗がいるという事に表情が曇る者が多い。
「死兵が相手か。」
「皆殺しにする必要があるなぁ。」
ヤバイ連中らしい。
勢力の分布など大まかに調べてある。
よくぞここまでと思う。
陶軍は2000~3000程度。一向宗は5000以上。
それぞれ憶測がかなり入っているが。
一向宗は予想外だが、陶軍の数も予想外だった。
今まで陶軍1万~1万5千と考えて準備をしていたのだから。
血気盛んな者達が即座の出陣を主張する。
対して経験豊かな者は一向宗への対策を主張する。
多くの意見が出て軍議は紛糾する。
結論は明日に持ち越された。
その夜にある相談をする。
勝手に飛び出しかねない者についてだ。
「暴発しそうな者は?」
「景勝殿が睨みをきかせてますれば、そのような馬鹿はおらぬかと。」
「ただ、一度火が付けば周りが見えぬ馬鹿が多いのも事実。」
一番気になる事を聞く。
「出陣を先延ばしにしても問題はない?
情報収集を大事にしたい。特に一向宗については不明な事が多すぎる。」
「一向宗など放っておいて、弱った陶を討つべし。
そう思っている者もいるでしょう。」
陶を討つだけなら好機かもしれない。しかし、兵数が未知の一向宗は放置していていい相手ではない。
「陶軍を多くみて5000としたら、募集中の傭兵ではどうなる?」
「率いる将にもよりましょう。
集まった傭兵は5000程、兵数だけなら互角。
遠征の疲れ、地の利もありますゆえ、我らの不利な要素も否定できませぬ。」
やはり一度建設中である大砦に入って、そこを拠点に確実に進軍するのが理想的か。
「傭兵達には陽動をさせる。北部から東部に入り、陶に夜襲・奇襲をかけさせる。正面から当たれば負けるだろうなぁ。」
陶晴賢相手に希望的な予測をするつもりはない。
「率いさせる将は誰がいいかな?」
「どのような戦をさせるかによりましょう。」
こうして夜は更けていった。
北上を続けていた足利軍は陶軍の拠点を強襲する。
そこにいるのは負傷者など戦えない者ばかり。戦える者は出陣していた。
虐殺は終わった。侍の死体も転がっている。
何より兵糧、軍資金の補充ができた。
「陶の動きを調べよ。陶の頚をとる。
これで余が勲功第一じゃ。」
ランデルは複数の喪失を感じた。
全て陶晴賢に従った侍達だ。
残っているのは陶晴賢、弘中隆包、魚住景固、千々石直員のみ。
陶軍が一向宗に負けたのか?
東部で何かが起こっている。
「至急軍議を開く、皆を集めよ!!」
「陶についた者達が複数死んだ。
一向宗の勢力は想像以上かも知れない。
ゆえに大物見を出す。」
傭兵はいつでも出れる。
陣立てを言わなければ。
「佐久間大学盛重、尾藤知宣、戸田勝隆、神子田正治、宮田光次!各1000を率いて仔細を調べよ。
すぐに出陣しろ!」
やっぱり、命令とかは緊張する。