ホ―ムレス
10月の寒い中、大きなスポ―ツバッグを背負いワ―クブ―ツでひたすら歩き続けた。しかし、あまりにもスポ―ツバッグが重過ぎたので、バスタオル一枚取り出し、スポ―ツバッグは、空き地に捨てた。夜も寝ずに、ひたすら歩き続けた。もちろん、幻覚、幻聴はつきまとう。おばさんの声で
「電車の車掌をやったらどうだろう。」そんな幻聴が聞こえてきた。途中、バス停に座り、バスタオルをかぶり、百円ライターに火を灯し温まった。寒かった。大井川の川原を歩いていると頭の中で、
「尾崎豊」の
「俺が這いつくばるのを待ってる全ての勝敗の為」と聞こえた。前に見える山並みが綺麗だった。そして、また、歩き続けた。熱海に着いた。海岸沿いの車道を歩いているとカップルがなにやら寝転んで絡み合っていた。全く気にせず、歩き続けた。山の中へ入って行った。すると、世界救世教の建物の入口があり、
「工事中の為入れません。」と書いてあった。山道を歩いていると、車が止まり
「乗っていきませんか。」と言われたが不気味だったので断った。
しばらく歩き続け、明け方
「小田原城跡」と書いてある所に着いた。
「ここなら何かあるかもしれない。」そう思い、小田原城へ向かった。すると、道端にタバコが何本か落ちていた。久々にタバコを吸い、味を思い出した僕は、シケモクを拾って吸っていた。
小田原城に着いた。
夜までうろうろしていた。
そして、目の前に段ボール箱が積み上げられているのを見つけた。
空腹で何か食料が欲しかった僕は、箱の中を覗くと、なんと、幕の内弁当が新品同様に六箱程捨てられていた。
急いで、それを、上まで運び全部たいらげた。
それから、がむしゃらに落ちている食べ物はないかと探し回った。
石垣の上にうどんの生麺が袋に入って落ちていた。
僕は、おもむろにそれをとり、かぶりついた。味は、どうでもよかった。空腹さえ癒されればと、また、城内を食料を求めて歩き回った。色々と見つけた。片っ端から飲み食いした。そして、しまいには、ゴミ箱をあさって食料を探し、見つけては胃袋に放り込んだ。もう人間としてのプライドなんかなかった。虫けら同然だった。
ある夜、上に上がると動物園を見つけた。おりの中にネズミがたくさんいた。その中の一匹が、
「私がここの長老です。」と言ったように聞こえた。幻聴だ。そして、警備員が見回りをしていたので見つからないように坂を降りて行くと、枯葉の入ったゴミ袋の山が積んであったので、寒さをしのぐ為にその中に埋もれ一晩寝た。
目が覚めると、腕時計は5時をさしていた。そこから外へ出て、海岸へ向かって歩いて行った。海岸に座っていると、そこでホ―ムレスをしているおじいさんが、僕の所へ寄ってきて隣に座った。僕は、
「どこから来たんですか。」と聞くと、
「真鶴の息子の家を出てきた。」と答えた。
「こっちにおいで。」と言われ、ついて行くと、青いビニ―ルの小屋があり、その中へついて行くと、おじいさんは、収納ケ―スから、
「ブリヂストンの赤いジャンパー」を出して僕にくれた。
「すみません。」
それを着て海岸沿いに移動した。海に浮かんでいる自衛隊の船を眺めていると目の前にトンボが止まった。首を振り、僕に攻撃してきた。僕は、逃げた。
「トンボにまでばかにされている。」
その夜、小田原駅に行った。一人の女の子が男共に囲まれていた。何をしているのかわからず、僕は、近くのミスタードーナツの裏口から階段を上り、出口に食べかけのド―ナツがたくさん入った袋を見つけた。店員に
「この袋くれませんか。」と言うと断られた。もう少しで、贅沢な食事にありつけることができたのにとガッカリした。そして、また、小田原城へ戻った。すると、駐車場に
「寺内タケシ」と書かれたトラックが、止まっていた。どうやら、ミュ―ジシャンらしい。僕は、池の淵の柵にもたれ池を覗きこんでいた。すると、一人の男が声をかけてきた。適当に会話を交わし、その場を離れた。雨がポツリポツリと降ってきて一気にザ―ッと降ってきた。僕は、雨の中、バスタオルをかぶりしゃがみこんでいた。幻聴が聞こえてきた。父方のおばあちゃんの声だった。僕は、一体、何をしているんだろう。誰かに助けを求めたかったが、どうにもならなかった。しばらくして、雨がやんだ。灰皿のシケモクはびしょびしょに濡れて吸うこともできなかった。下では、暴走族が車をビュンビュン走らせている音がしていた。恐くて上の方へ登って行き、しばらく息をひそめた。しばらくして、静かになり太陽がのぼってきて空が白み始めた。