見守る者たち
私の名前はリックル。愛馬のカシードと一緒に隣国から逃れて、野営して焚き火を焚いている。
「お嬢さん。どうされたかな?」
炎を見ていると落ち着けるのは昔からだ。邪魔が入るとカシードが一瞬怯む。
「そう言えば、こんなものをご存じかな?」
と、若い兵士が頭を垂れながら炎の側に寄ってきた。何か手に持っているようだ。
古ぼけた一枚の紙切れだ。
「これはあなたの国のとある城の見取り図だ。どうやって手に入れたのか分かるかい?」
「……どうして其れを私に?」
「少しだけ自慢したいのだかどうかな?…実はな、とある盗賊がだな。こう、城の回りから二手に別れて城門から『こんにちは』と言うだろう?仲間が裏口から、その瞬間こう叫ぶのだ。『此方に美味い物があるよ』相手は混乱して、後ろを振り向く…」
「まるで見てきたように語るのね」
「そしてだな。その相手が振り向いている隙に城門から入ってきた盗賊がピュイっと口笛を吹く。そうすると門番は混乱して持っていた地図を取り落とす…更に後ろの盗賊がこう呼び掛ける『これ頂いていくぞ』門番は更に混乱して城内に戻るだろう?」
「確かに…」
「城門からの盗賊は足元の見取り図を拾って、はいおしまいだ。どうだ?見事な手口だろう?」
私はカシードの様子を伺いながら、兵士から見取り図を受け取る。
回りには敵は居ないようだ。
「有り難く受け取っておくわよ」