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地獄天使  作者: kurogane
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特殊監房2013

特殊監房2013



そこにはベッドと呼ぶにはとぼしい寝床以外何もない真っ白な監房であった

鉄格子もなく、入り口も出口もない。ただ白い壁だけに覆われた一部屋ほどの大きさの場所であり、常人では気がくるってしまうのではないのかと思わせるほどの場所であった

寝床には白髪の青年が横たわっていた



「誰だ」



青年は気配を感じるはずのない監房内に何者かがいるのを感じた



「あら姉さんにその口の聞き方はないんじゃない。ディオちゃん」


その白髪の青年がディオであった

アテネは監房内に空間移動するとディオに話しかけた

ディオは寝床から起き上がるとアテネを見た


「姉貴がなんの用だよ。あとそのちゃんづけするのやめろ!」


「まあひどい口の利き方。お姉さま泣いちゃうわよ」


そういって顔に手をあてて泣いているように見せた


「いや嘘泣きなのわかってるし、はやく用件言えよ」



「もう暇人の癖にせっかちなんだからまずその口の利き方から直さないと教えなーい。もっとお姉さんを敬いなさい」


ディオはアテネがこうなると面倒くさいのはよく知っていた

ここでディオが折れなければ姉の機嫌をさらに損なうであろう

それはディオにとって都合はよくない。なぜかというと姉を怒らせると恐ろしいからである

昔、アテネが大事に飼っていた三つ耳のウサギ ピクシーちゃんをディオが間違って人間界に逃がしてしまったことがある

「ピクシーちゃんを見つけてくるまで帰ってくるんじゃないわよ!!!」

ディオは無事にピクシーちゃんを連れ帰ったが、そのときのアテネにはトラウマを持っている



「すいませんでした。お姉さま。どうかご用件をお伝えください」



最初の乱暴な口ぶりから一変、丁寧な言葉遣いでアテネに話しかけた



「わかればよろしい」



「気まぐれ女神め..」



アテネの品のいい声に合わせてディオがボソッと呟いた



「なにか言ったかしら??」



「いえ!なにも」



「そう。なら用件を伝えるわ。今からあなたには人間界に行ってもらうわ」



「人間界?また急だな。それに俺の残りの幽閉期間はどうすんだよ」



「話を最後まで聞きなさい。お父様から指令が下ったのよ。人間界である組織の幹部を捕縛して欲しいそうよ」



「組織?人間の組織になんの用だよ」



「それがね。人間界のある一部で‘ソウ‘って呼ばれる薬物が流行ってるみたいなのよ。そのソウって薬物。魔蟲の卵でできてるみたいなのよ」



「魔蟲??かなりやばいのが出回ってんだな」



魔蟲とは宿主の魔力を吸いながら生きる寄生虫である

天界や地獄のものは滅多に寄生されることはないが、人間界では別である

人間は元々ディオやアテネたち同様に天界のものであったが過ちを犯し動物界に追いやられ、そこが今の人間界になっている

アテネが使う空間移動。これはアテネの魔力特性であり、天界のもの地獄のものは魔力が使える

人間は基本的には魔力が使えないように退化してはいるが、元々天界にいたため体内に魔力は保有している

その魔力を求め魔蟲が人間に寄生することは必然的である

そして厄介なのは魔蟲に寄生された人間は凶暴性が増すと言われている



「その魔蟲退治に俺を狩り出そうってか?確かに俺の能力なら人間を殺すことはないが、他に手の空いてる奴はいないのか?天界の奴らはそんな忙しそうには見えないぞ」


ディオは笑いながら言った

ディオの天界の者たちのイメージはまさに人の中で言う政治家と一緒である。自分の立場や体裁のことばかり考えているお堅い連中である

彼らにとって大事なのは天界と地獄の秩序であり、人間界のことなどどうでもいいのだ



「ただその魔蟲ちょっと特殊なのよ」



「特殊??」



「その魔蟲に寄生された人間の中でごくまれに魔力を覚醒させる者がいるみたいなの。おまけに魔力を保有していないものは、その人間の精気を食いつぶして廃人にする。依存性も高くて多くの人間に出回る前に対処しろってお父様が言ってましたとさ」



ディオはその話を聞いて自分のところに話が来たのにいくつか納得した

まず天界のものが人間を殺すことは禁じられている。天界のものが本気で魔力を使えば人間を死にいたらしめるのは必然的であり、ましてや魔力特性が強力なものほど人を殺しかねないであろう

人を殺さず、魔力を使う人間と戦う可能性になれば天界の人間にとって煙たがるのも当然である

その事を踏まえて自分の魔力特性を考えれば自分が適任であるのを納得するのに充分であったが、それ以外にディオには少し引っかかる点もあった

だが今、アテネにその事を問いかけた所で簡単に答えが出てくるとは思えなかった

それだけこの指令には真の理由があると感じていた



「じゃあそのソウをばら撒く組織を俺がつぶせばいいのか?」



「まぁ簡単に言えばそんな感じ、厳密に言うとソウの顧客名簿の奪取、組織幹部の捕縛とボスの捕縛かしらね。販売ルートと組織の上層部をたたけば壊滅するでしょう。

廃人になった人間の魔蟲駆除は名簿を元に他でやるみたいよ」



「指令報酬は??」


「残り109年の幽閉期間の免除と天界復帰だそうよ。よかったわね。ディオちゃん」


そういうとディオの首筋に刻まれた地獄印にハデスから預かった(正式に言うと勝手に持ってきた)解除用の札をあて印を解除した

この印があると監獄(厳密には敷地内)からでると印に食いつぶされ消滅してしまう

この印はハデスしか刻むことができない



「10年いたがここには何の愛着もわきそうになかったからちょうどよかった所だ。あとちゃん付けやめろ!」



「はぁ。なれない説明で疲れちゃった。私は天界にかえるからあとはがんばってね。組織の名前はアースだから地道に探してね」



アテネは飽きたのか淡々と話始めると、ディオに手をかざした



「ちょちょ!いきなり飛ばすのかよ!」



「そのとおり!それではいってらっしゃーい!がんばってね」



アテネはディオを人間界に送った



「さて。帰ってお茶の続きでもしよう」



そういってアテネは天界に飛んだ

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