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見えない翼 短編集

シロツメクサの花言葉

作者: 森野涼子

「おねーさまー」


「どうしたの?」


「私、おねーさまの昔のこと聞いてみたいです―!」



時刻は午後12時を回ったところ。よい子は寝ないといけない時間ではあるのだが、私たちは布団にもぐりこんだままお互いに話をしていた。

ときどきトイが私の体を触ってくるのだけれど、この際その辺は気にしないでおく。

私もやり返したりとかしてるから、お互い様だからね。



「私の・・・昔話?」


「はいです!おねーさま、全然昔のお話ししてくれないです!私凄く聞きたいです!」


「でもトイ、私の羽のことは知ってるわよね?」


「はいですよー?」


「それなら―――――」


「私それ以前のお話し聞きたいです―!フッキーも知らないような、そんな話を聞きたいです!」



吹雪も知らないような話?あの子にはだいぶ話してはきたけど――――



「……あっ、一つだけあったわ」


「ほんとですかー!?」


「えぇ、一つだけね。嫉妬とか、なしよ?」


「もちろんです!」



懐かしいな、あの頃はまだ、私は「人間」が、「男」が好きだったんだもの。




「そうね、確か私が男を嫌いになる2年くらい前の話かしら―――――」





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「おーい!由愛香(ゆめか)ー!」


歩く私に声をかけてきたのは、一人の男性。

人間にどこにでもいそうな、本当に平凡で普通な人。


しん?なによ急に」


彼の名前は烏丸湊(からすましん)、普段から一人で行動している私にしょっちゅう付きまとってくる、凄くお節介でどうしようもないほどのお人よしな人。誰かだけ、というような偏見を全く持たない人で、人間界で浮いている私にめげずに話しかけてくれる、そんな珍しい人だった。


「今日、暇だったりする?」


「今日?」


私にこれと言った予定はまるでない。むしろ毎日こうやって徒労を繰り返すことが、『監視任務』としての役目でもあるのだから。


「別にないけど――――」


「んじゃさ、近くに新しい洋服屋が出来たんだ!レディースのかわいいのがあって、由愛香には絶対合うからさ!一緒に行こうぜ!」


「ち、ちょっと――――」



私の承諾もなしに私の手をぐいぐいと引っ張っていく彼は、人間界にいて唯一と言っていいほど、主導権を握ることのできない人間だった。大体の人間は私が少し強く出れば弱気になって言うことを聞いてくれるのだが、彼だけは違う。なんども食い下がって私が最終的に折れて彼の言う通りになることが多かったわ。



「ぜったい由愛香には合うからさ!いってみようぜ!」


「いや、これじゃあ普通に私行くことに――――」


「さぁレッツゴー!」


「ち、ちょっとー!!」



こんな日々が、ずっとずっと、続いていた。

だけど不思議な話し、私はそれが全然嫌じゃなかった。


嫌だったらあのタイミングで「離してよ!」ともいったし、「近づくな」とも言えたのに言っていないのだから。

私自身も、彼が気になる存在であったことには間違いない。

いや、きっとこのころから私は、『好き』だったのかもしれない。


認めたくな自分がいて、ずっと目を伏せてきた事実だから。



だけどその日に、私は自覚してしまったんだ。

好きだって。湊のことが、ね。




「ゆーめーかー!」


「なによ、騒々しいわね」


「ちょっとこっちきて!」



まだ洋服屋までの道中だと言うのに突然公園の茂みに呼び出されて何かと思ったら――――




「これだよこれ!俺が見せたかったの!」


「洋服じゃないの?」


「ちげーよ!あれは由愛香のこと誘うための出まかせ☆ホントはここに連れてきたかっただけなんだよ」



そうやって彼が茂みから出したものは―――――



「――――四葉の……クローバー?」



なんら変哲もない、そこら辺に生えていそうな四葉のクローバーが一つ、彼の手元にあっただけだった。



「何でこんなもの―――――」




「なぁ由愛香、知ってるか?

四葉のクローバーってさ、見つけると幸運になれるって言うじゃんか。あれ、なんでか知ってるか?」


「え?」



「三つ葉の中から四つ葉を見つけるのって、相当疲れるだろ?苦労するだろ?もしかしたらそこには四葉のクローバーなんてないのかもしれないんだから。でもそれでも見つけようとして、見つかった時にはもう、その時点で幸せを手にしてるんだよ」


「そ、そうね―――」


「四葉にそれぞれ意味があってさ、信仰、希望、愛情、そして幸福。人間はこれらを全て得た時、誰よりも幸せを感じることができるんだ。

そして、これは俺が噂程度でしか聞いたことないんだけど――――――



好きな奴とみると、その幸福が移るんだってさ。だから、お前のことを連れてきたんだ」




少し照れくさそうに笑う彼の顔は、私が今まで見てきたどんな人間の顔よりも輝かしく見えて、その時に胸が一番高なったのは、凄く覚えてる。

好きなんだなって、思えたんだ。



「そっか――――うん、ありがと――――」


「へへっ、さっきの話、ちょっと恥ずかしいから他のやつに言うのなしな―!」


「わかってるわよ!」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「おねーさまも人間が好きだった頃があったんだなんて――――」


「今は嫌いよ?ホントに」


「その湊って人も、ですか―?」


「えぇ、多分この世で一番」


「へ?なんでですー?」




「私のこの羽をちぎった人間を、恨まずしてどうしろというのかしら?」




「!!!」


「さぁ、もうさすがに1時を回ったわ、もう寝ましょう?」


「お、おおおおおねーさま!?」


「いいから寝るの、私のいうことを聞きなさい?」






言えない傷は、心の底に。

消えない記憶は、残り続けて。



今日も眠れない日が、続いて行く。





「あなたは最後に、こういったわよね―――――」



湊の顔を思いだしながら、彼の最後の言葉を思い出す。








『由愛香、ごめんな。

あのときの、四つ葉の話を覚えてるか?

あれにはさ、もう一つだけ続きがあって。


四葉のクローバー、シロツメクサの花言葉は知ってるか?

復讐、ってんだ。


変な話だな、お前は俺に復讐されるようなこと、してもいないのに。

なんで、こんなことしてるんだろうな。

どうして俺は、お前の大事な羽を、こうやって……



ごめんな、由愛香。ごめん―――――――――』

















「―――――湊のバカ」

いかがでしたか?

これは友人と話をしている時にふと思いついたネタなので凄い乱文かと思いますがw


では、失礼いたします

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