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第5話 大吉の思い

―夢。

久しぶりに夢を見ていた。

オレは交差点に立っている。

(またあの夢か…)

しかし、すぐに違和感を覚える。

オレの隣に立つ少女の姿はいつも見ている顔…。

「逢瀬?」

横断歩道の信号が青になると同時に走り出す。

(!!)

凄まじいブレーキ音が響く。

「逢瀬!!」

そう叫びながら目が覚める。

「何で逢瀬が夢に…」


時間は午前8:00。

いつもと同じ登校風景。

いつも以上にげんなりしているオレ。

(一体、いつになれば忘れられるんだろうか…)

「ふぅ…」と一息、ため息を吐く。

ぼんやりと歩いているといつもの如くタッタッタと足音が聞える。

「おっはよ〜!」

逢瀬がいつもの様に声を掛けてくる。

が、オレは朝見た夢の事を思い出し、言葉に詰まる。

「………」

「なるっち?」

「………」

「お〜い。生きてるかぁ?」

「あ、ああ…」

はっと我に返る。

すぐ目の前には逢瀬の顔があり、オレを疑問顔で見ている。

一瞬目が合い、少し顔が赤くなる。

(何考えてるんだ、オレは!)

「なるっち?どうも今日は様子がおかしいわねぇ」

少し怪訝な表情で言われた。

「そんな事ない。いつもと同じだ」

取り繕うように言う。

「そう?ならいいけど」

逢瀬には余計な心配は掛けたくない。

たとえ小さい事でも…。

それが今の本音だ。


C組の教室内。

またしてもオレの席で熟睡している大吉を発見する。

「…おい」

「zzzzz」

「おい」

「…んあ?」

「時間だ」

「そうけ。んじゃ、お休み〜」

「〜〜〜」

顔に手をやる。

「どったの?」

昇降口で別れた逢瀬が来た。

オレは無言で大吉を指差すと「なるほど」と一言。

「ほら大ちゃん!なるっちが困ってるから自分の席に戻って!」

「あと1分〜」

「ダ〜メ!」

「あと1日〜」

…時間が延びてるぞ

「逢瀬、いいよ。オレがあっちに座る」

この分だとまだ起きそうにない。

仕方なく大吉の席へ。

結局、大吉は2時間目後半で起床した。


昼休み。

「購買、行こ!」

逢瀬が声を弾ませる。

「…ああ、そうだな」

この学院に来て昼休みに購買へ昼食を買いに行くことが日課になっている。

逢瀬は普段は弁当らしいのだが、今日は材料が無かったらしい。

「購買って初めて!楽しみだね!」

(購買が楽しみなんて変わった女だ…)

教室を出たところででかい熊…じゃなくて大吉にであった。

オレの顔を見るなり、

「俊介!すまん!」

大吉が両手を合わせて深々と頭を下げている。

「別に気にして無い」

まぁ、どこの席でもオレには同じことだ。

「所で俊介…」

大吉が急に真顔になり、厳つい顔がさらに厳つい顔になる。

「…何だ」

「ここじゃ何だ。場所移すばい」

「…ああ。逢瀬、購買はまた今度だ」

「分かった!じゃあ、買ったら教室で待ってるから!」

「ああ…」


大吉へ連れられ、屋上へ。

今日も快晴で太陽が眩しい。たまに吹く寒風を除けば昼寝には最適だ。

「お前、逢瀬の事好いちょうとか?」

「…すいちょう?何だそれ」

「すまん。好きなんかっち聞いとるったい」

突然の大吉の言葉に耳を疑うオレ。

まさかコイツにそんな感情があったとは…。

だけど…。

「馬鹿馬鹿しい」

「何!?」

大吉の目の色が変わった。

まるで仇を見つけたような目だ。

「好きも何も、まだここに来て5日しか経ってないんだぞ?」

「そげな事関係なか!1秒あれば十分たい!」

どっかで聞いたなこの台詞…。

「…何故そう思う」

当然の質問だ。

確かに逢瀬とは隣席だから最近では色々話すようにはなった。

だからと言ってこれだけで好意と結びつけるのはどうかと思う。

しかし、大吉は意外なことを口にした。

「おーせのヤツ、たまにお前の顔見て悲しそうだか辛そうだか、そんな顔するっちゃん…」

「………」

「俺はあんなおーせの顔見るの初めてばい。俊介、お前何か変な事しとらんやろうね?」

「心当たりは…ない」

(たぶん…)

「そうか…。俺はおーせが好きっちゃ。もしお前もおーせの事を好いちょうなら負けんけんね」

「…そうか」

「んじゃ、戻るばい!遅れたら厄神さんに※がられるけんのぉ!」(※がられる=怒られる)

(…厄神にがられる?)

C組の教室へ戻る。

逢瀬がオレ達の姿を見つけると鬼神のように迫ってきた。

「も〜!どこに行ってたのよ!待ちくたびれて先に食べちゃった!」


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