第4話 幼馴染
現在、午前10:00。
三島町へ引越しして4日目。
初めての休みだ。
「どうすっかなぁ…」
朝起きてから今日一日をどう過ごすか悩んでいる。
未だ目の覚めない脳みそを動かしてみるが、いい案が浮かばない。
どこに何があるかだけでも散歩がてら覚えようか。
でも、また道に迷ったりしたら…。
う〜んと唸っているとピンポーンと呼び鈴が鳴った。
(誰だ?こんな朝早くから…)
心当たりは…あった。逢瀬だ。
転入早々、下校の時に道に迷ったんだった。
そこへ運良く(?)逢瀬に出くわし帰り道を教えてもらった。
その時に家の位置まで知られてしまったんだった。
「朝飯も食ってないのに…」
とぼやきながら玄関へ。
ガチャッと玄関ドアを開くと元気のいい第一声。
「はぁい!おはよう!相変わらず眠そうな顔ね〜」
起き抜けでこのテンションの高さはキツイ…。
「……今さっき起きたんだ」
少し機嫌悪く答える。
「寝ぼすけねぇ。と言うことは朝ごはんもまだなの?」
「そういう事だ。で、何しに来たんだ?」
そう言った後に思い出す。
『暇になったら遊びに来るね〜♪』
(…本当に来るとは思わなかった)
少し呆れ顔をしてみたが、お構い無しにズカズカと部屋に入られる。
「へ〜。これがなるっちの部屋か〜。何にもないわね…」
あからさまに残念な顔をされる。
そりゃそうだ。
「まだ荷解きが終わってないからな」
「じゃ、今日は荷解きを手伝うよ♪」
(コイツはプライバシーの侵害が趣味じゃないのか?)
ついそう思ってしまう。
小テストの時といい、コイツは何かとオレの事を聴いてくる。
一体どういうつもりなんだか…。
逢瀬の唐突な来訪で今日の予定は荷解きになった。
(衣服は衣装ケースにしまって…)
「あっははは!」
(本は…後でいいか。本棚ないし)
「あっははは!」
「……おい」
「あっははは!」
「おい」
「あ〜、な〜に?」
「何やってんだ?」
逢瀬が見ている物はオレの写真アルバム。
その中の一枚を見て大爆笑しているようだった。
「あんたって弱いのね〜。女の子に負けてるじゃない」
写真には、ツインテールの女の子がおもちゃを片手に持ち勝ち誇った顔。
オレはというと、その女の子の後ろで床に突っ伏している。
「もしかして、この子が昨日言ってた幼馴染?」
「…ああ」
「結構可愛いじゃん〜」
「……」
「この子、今は何してるの?」
「…片付けろ」
「え?」
「さっさと片付けろ」
「え、ええ…」
怖い顔をしていたのか、素直に逢瀬がアルバムを片付けた。
「……」
午後5:00。
やっとの事で荷解きが終わった。
(腹減ったな…)
よく考えると、朝飯も昼飯も食っていない。
「ねぇ…」
逢瀬が口を開く。
アルバムの件をまだ引いているのか、少し話辛そうだった。
「その子と何があったかは知らないけどさ、喧嘩したんなら仲直りしなよ」
「…出来ない」
「え?何で?」
「コイツは…もういない」
「それってどう言う…」
逢瀬か続きを言いかけた所でその場を離れる。
「…腹減ったな。ラーメンでいいか?」
話題を変える。
あいつとの思い出話は辛すぎる。
まだ、話せそうにない…。
午後10:00。
オレはベッドに寝転がり天井を見つめていた。
あの後、逢瀬はオレに気を使ったのか色々と話をしてくれた。
自分のこと、幼馴染の大吉のこと、学校の行事のこと。
「逢瀬、お前はいいヤツだな…」
そう呟き、明日に備え床に就いた。