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第1話 隣人

執筆第一号の作品です。

もし宜しければ、感想や改良点など頂ければ

今後の参考になりますのでどうぞよろしくお願いします!

―夢。

そう、夢を見ている。

いつもと変わらない風景。

いつもと変わらない生活。

いつもと変わらないアイツの笑顔、仕草、癖。

その一つ一つが現実と全く変わらない。

出来るならこのままこの居心地のいい夢を見続けていたい。

現実は辛過ぎるから…。

しかし、夢は覚める。

夢を現実に変える事は出来ない。

オレは未だ自分に起こった現実を受け入れられずにいた。


ピロロロロ…

「………」

目覚ましが鳴る。

現在、午前7:00。

目覚ましを止めベッドから体を起す。

(また、あの夢か…)

アイツが事故で死んでからというもの、

毎晩のように昔の夢を見る。

そして、目が覚める度に『あそこでオレが引き留めておけば』

という後悔の念が渦巻く。

「…転入早々から遅刻もないか」

そう呟き、まだ重い体を動かし身支度を始める。

オレは昨日、この三島町へ引っ越してきた。

あの町にはアイツとの思い出がいっぱい在り過ぎて辛いから…。

半ば夜逃げ同然で住んでいた葛西町を出てきた。

新しい街へ行けばあの辛い出来事も忘れられると思った。

でも、オレはアイツのことを本当に忘れられるのだろうか…。

アイツと過ごしてきた日々を忘れてしまっていいのだろうか…。


午前8:20。

三島学院。

オレの転入する学校だ。

「失礼します」

職員室へ入ると、担任になると言っていた中年の先生が

オレの声に気付き返事をする。

「あ〜君か。ようこそ三島学院へ。今から教室へ案内するからね」

「…はい」

短く答えて歩き出す。

この校舎は3階建て校舎で上から1年、2年、3年の順番だそうだ。

担任が校内の説明をしているうちに2階に着く。

「さあ、ここが君のクラスだよ」

そう言って担任が立ち止まった。

2年C組。

新しいクラスだそうだ。

教室へ入ると少し騒がしい。

転入生が来る時はどこの学校でもそうだろう。

興味や怪訝な表情等が入り混じった教室で担任がオレの紹介をする。

「今日からこのクラスに転入した成瀬(なるせ) 俊介(しゅんすけ)君です。

みんな仲良くして下さいね」

何の返事も無いところからこの教師はあまり信用されていないのだろう。

「君の席は…丁度、二列目の一番後ろのが空いているね。そこに座ってください」

「はい…」

一言で返事を済ませると席へ着いた。

早速、隣人から声を掛けられる。

「初めまして!私、逢瀬(おうせ) 一美(かずみ)って言うの。ヨロシク!」

肩まで伸びた黒い髪。

ぱっちりしたブラウンの瞳に、整った顔立ち。

座高から見るにオレより少し背が低いだろう。

何より元気のいい挨拶。

直ぐに活発な女の子だと分かる。

しかし、その元気の良さがかえってオレの気力を減退させる。

今更友人を作る気は毛頭ない。

逢瀬の挨拶も「…ああ」の一言で返事をすると逆襲されてしまった。

「あのね〜。人が挨拶してるんだからあんたもちゃんと挨拶できないの?」

鬱陶しい。

オレにそんな事を求めるな。

無言の返事を返すと逢瀬は気分を悪くしたらしくムスッとした顔になった。

他の生徒との挨拶も無言で返していると授業が始まった。

数時間後…。

やっと放課後だ。

担任から「部活の見学をしてみては?」と言われたが、断った。

別に部活をしたいわけじゃない。

アイツのことを忘れられれば…それでいい…。

教室にはまだ数人が残っていたが、

挨拶もせず学校を後にした。

学校を出て10分後…

(ここ…どこだ?)

オレとしたことが…。

道に迷ってしまった。

ボーっとしていたのがよくなかったようだ。

幸い、日はまだ沈んでいないが時折寒い北風が吹く。

こんな時、自販機でもあれば暖かい飲み物を買う事ができるのだが…。

住宅地の真ん中でそんなものは無い。

「ねえ」

少し悴んだ手を擦り合わせていると不意に後ろから声がした。

振り向くと顔からしてまだ機嫌が悪い逢瀬が立っていた。

「どうしたの?」

「道に迷った…」

「迷ったぁ!?きゃははは!」

笑われた。

それはそうだ。

下校途中で道に迷うほど恥ずかしい話は無い。

しかし、さっきまで機嫌が悪かったのにこんなに笑うとは…。

「きゃははは!」

まだ笑ってやがる。

「笑いすぎだ」

「ゴメンゴメン!で、家どこなの?」

「メゾソフィアってアパート」

「あ〜。あそこら辺なの?」

……あそこら辺ってどの辺だ?

「オレは引っ越してきたばかりだ」

「それもそうだよね。私の家もその近くだから一緒に帰りましょ♪」

「………」

こいつと話をすると何故か口数が多くなってしまう。

「な〜に?また黙秘権発動?」

「………」

「また迷っても知らないわよ〜?」

「…分かった。帰るよ」

偶然出会った逢瀬のお陰で無事に家に帰ることが出来た。

でも、厄介なヤツに家の場所を知られてしまった…。

『暇になったら遊びに来るね〜♪』

とか言ってたし。

…本当に厄介だ。人の気持ちも知らないで…。

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