誕生の一歩
暗く狭い。苦しく生臭い。
外が何やら騒がしい。うるさい。頭に響く。眩しい光と共に左半身に鈍い衝撃が走る。
とても苦しくて、苦しくて、まとわりついているネバネバした物を剥がしていく。
「ノーバティ!」
その言葉の意味はよくわからない。言葉なのかもわからない。
弾けるような音とともに自分を擦れるように小さな塊が通りすぎていく。
「ノー・・バ・・・?」
自分は何者なのか。そう、聞きたいんだ。教えて欲しいんだ。なんなんだ。
「ノーバティ!くるな!」
どこへ行くんだ。待って。
「ノーバ・・・ティ・・・ノーバティ・・・」
とても、長くて、深い夢を見ていた気がする。水たまりに写る顔は一つ目で、大きく裂けた口、やけどのようにただれた肌。
自分が夢のせいで、もともとこんな体ではなかったと思う。そう、思うからこそ胸が張り裂けそうなくらい辛くて、悲しくて、苦しい。
思うことはできるのに伝えられない。伝わらない。今の自分は言葉を知らない。
「ノーバティ、お前はこの世界にいてはならない。」
誰だ。何だ。なんかいっぱいいる。
「お前の存在によって世界は大きく歪んでしまう」
さっきの、小さな塊がでてきた物だ。アレは、危ない、と思う。危ない。危ない。逃げる。逃げる。
「よってお前を」
遠くに。もっと、遠くに。遠くに。
「天と地に代わり」
もっと。もっと。見えなくなるまで。遠くに。
「ノーバティをノーバティへと還す」
沢山の破裂音とともにノーバティはその場に崩れる。