表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/21

大事な人と大変な事

3話目です。

・・・ではどうぞ。

「じゃあもっと俺に慣れてみる?」

「はぁ?」

美晴はわけがわからず聞き返してきた。

慣れていないと言うのだから、慣れてもらおう。

そう都合よく解釈することにした。

「一応返事もらったし、」

『たぶん』だとか『だと思う』とか、余計な言葉が付いているが、

それは今後外していけばいい。

髪に、頬に、手に、ゆっくりと指を這わせ、軽く唇を当てていく。

「よ、芳彰・・・それヤらしい・・・」

「もちろん、そうしてるから。」

美晴はいちいち反応が良くて、止める気になれない。

実に楽しい。

触れるたびに、声が上がる。

うなじに触れると、ビクッとした。

「あれ? 感じやすい?」

「知らん!」

真っ赤な顔で即座に否定する。

まあ、そうだな。

それでも首筋を執拗に攻めると、

「やっ、あっ、」

声が艶を帯び始め、そして次の瞬間崩れ落ちた。

膝の力が抜けたらしく、慌てて支えた。

「あ? ちょっとやり過ぎたか?」

美晴が崩れなければ、俺はどうしてただろうか?

それを思うと、冷や汗が出る思いだ。

美晴は俺の腕にしがみ付いたまま、

涙目で見上げてきて、悪態をつく。

「・・・芳彰のバカ」

ドキッとした。

・・・俺いつまで我慢出来るかな?

そう内心苦笑した


「悪かった。」

何度その言葉を口にした事か。

しかし、美晴は黙り込んだままだ。

俺は不機嫌な彼女を抱えて座り、機嫌を窺う。

逃げようともしないが、喋りもしない。

本当にどうしたらいいのだろう?

髪を撫で、時折唇で触れる。

「・・・口は?」

ずっと黙秘の美晴が、突然乱暴に言った。

「は?」

「あれだけ色んな所にキスしまくっておいて、口は無しなのか?」

俺に向き直って、そうまくし立てる。

さすが、美晴。

「ははは、やっぱお前面白いな。そんな事考えてたのか?」

「あっ、いや・・・えっと・・・」

自分が何を言ったのか気付いたのか、目が泳ぎ始めた。

俺に異論があるわけがない。ありがたく頂くだけだ。

「ご希望とあらば・・・」

「・・・うん。」

あごに手を当て上を向かせ、顔を近付けた。

「んっ・・・」

唇が触れる瞬間に声が上がる。

軽いキスから、段々と深く、

俺は久し振りの行為に、つい夢中になった。


「キスってスゴいんだな・・・」

力の抜けた体を俺に預け、肩で息をしているが・・・黙らない。

朱に染まる顔と潤む瞳で見つめられると、

ついその先へと手を出したくなるが、そうもいかないだろう。

実は今も何度か出しそうになった。

「この先もっと色々有りますが?」

自戒と期待を込めて、ふざけた口調で言ってみると、

「い、いや、まだそこまでの覚悟は・・・」

と、しどろもどろで、噛み付いてくる余裕はない。

そこは普通の女の子という所か。

別に無理強いする気は無い。

・・・本当にどれだけ美晴が大事なのだろう?

実は今まであまりそういう事は、自分の中に無かった。

そこに気付いて驚いた。・・・最低だな俺。

「覚悟できたら是非教えて。待ってるから。」

本心だったのだが、それはどうやら伝わらなかったらしい。

「・・・芳彰、絶対性格替わっただろ!?」

さっきも思ったのだが、美晴の中の俺のイメージはどうなっているんだ?

「あのさ、美晴から見た俺ってどんなヤツなんだ?」

「ずっと黙ってて、機嫌悪くて、何してんのかわかんないやつだった。」

だった?

「だけど、実はよく喋って、打てば響くような会話ができて、

 結構格好良くて、私を振り回してくれる飽きないやつ。」

これは最大限の褒め言葉・・・だと受け取っておこう。

「俺も美晴に振り回されてるよ、本当に飽きない。」

「ありがちな台詞はいらないからな。」

何だそれは?

「男だから、奇をてらってばかりはいられないんだけどな。」

笑いかけて抱える腕に力を込める。もちろん痛くない程度にだ。

「そうなのか?」

「そういうものだ。」

たぶんこいつ誰とも付き合った事無いな、ふざけている時は普通にしてるが、

男と女として向き合うと、急に落ち着かなくなる。

美晴の始めての彼氏とは光栄だ。

いや、二番目に譲る気はさらさらないから、表現が間違ってる気がするな。

「あのさ、えーと・・・さっきから後ろに何か当たってるんだけど・・・。」

痛いところを付かれた。

「聞きたい?」

「・・・遠慮する。」

彼女は、赤い顔を更に赤らめて否定した。



部屋に戻ると、真っ直ぐベッドに倒れこんだ。

まだ腕に芳彰の感触が残っている。

右手を伸ばし見上げる。

手の大きさも、筋肉の付いた腕も、硬い胸板も、力の強さも何もかも違う。

女だけで生活しているから、そんな事考えた事も無かった。

唇を指でなぞると、ゾクゾクとした感覚が頭によみがえる。

そしてその先・・・

あー無理だ! 想像力が追いつかない!!

横向きに丸くなって、大きく息を吐く。

知らない事は調べる。やってみないと分からない。それが信条なのだが、

今回の件は、そんなに簡単な事じゃない・・・と、思う。

再び溜息をついて目を閉じる。

頭の中は収集がつかないまま、ぐるぐると堂々巡りを繰り返した。

この辺がR15です。

あともう一箇所。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ