呆れた彼女と慣れた彼
ラストです。
これで終わりです。
・・・ではどうぞ。
買い出しのため外に出かけたら、途中で美晴を見つけた。
携帯開いて、メール? の確認?
返事を送って、って感じかな・・・
うわ・・・あれは何か企んでる顔だ。
どこに行くのか気になったが、向こうは自転車だ。
南北に伸びる道を、海へ向かう南側に向かって疾走して行った。
・・・仕方ない。
携帯を出して、和歌奈ちゃんに電話してみた。
港の公園に来た。
何かとても久しぶりに来た気がする。
それに、これだけ走ったのも久しぶりだ。
明らかに運動不足だな、以前であればここまで足にきてないだろう。
・・・生活態度をきちんと見直そう。
和歌奈ちゃんも行く先は知らなかったようだが、心当たりがあったらしく、
他に確認して改めて連絡をくれた。
さて、どこにいるものか・・・この公園は結構広い。
しかし、その心配は無用だった。
門をくぐるとすぐに腕を捕まれて引っ張られた。
「でっかい図体は目立つんだからこっち来い。バレるじゃないか!」
囁き声で怒られ、そのまま引っ張られて木の陰に連れて行かれた。
探す手間が省けたな。
美晴は何を張り切っているのか、やたらとテンションが高い。
無言で眺めていると、
「いいから、しっかり隠れてろ!」
やっぱり囁き声でそう言い、腕を引っ張られてしゃがむ事を強要された。
そして、いつもより気合いの入ったカメラがカバンから出てきた。
特大の望遠レンズが嵌め込まれ、バランスが悪い。
そして、そのレンズを向けた先には一組の男女の姿があった。
「おいおい、盗撮かよ・・・。」
こいつはそんな事までしてるのか?
さすがにこれは呆れた口が塞がらない。
「うるさい、カップル誕生の記念写真だ!」
見ているうちに二人の距離が縮まり、女の子が抱きついた。
そして男の方も、手を背に回した。
「やっとくっついた・・・」
何か知らないが、美晴は満足げだ。
って、あぁなるほど、あれが聡太ってヤツか。
キスシーンまで写真に撮られ・・・本当に哀れになってきた。
横の美晴は嬉々として、シャッターを切っている。
まったく・・・何やってんだか。
その姿を見ていると、溜息しか出てこない。
『自分の彼女はパパラッチです。』
・・・そんな紹介は嫌だな、我ながら妙な事を考えて苦笑した。
「ほらここまで、もう十分撮っただろ?」
そう言って、カメラを取り上げた。
「あ、何をする!」
俺は立ち上がり、カメラを持つ手を上に上げる。
なるほど、長身はこういう時に役に立つんだな。
必死になって奪い返そうと飛び跳ねる美晴を見下ろして、そう思った。
「こら見つかるじゃないか!」
・・・そこかよ?
「俺は、あいつらに面識無いんだから隠れる必要は無いぞ。」
「あぁ、そういえばそうだな。」
俺の言葉でようやく冷静になり、飛び跳ねるのを止め俺を見上げている。
どうやってもカメラは取れないと諦めたのか、
あるいは、他の手段を模索しているかだ。
「とにかく、俺は他人のキスシーン見てても楽しくない。」
「芳彰が勝手に来たんだろう? 私は、達成感でいっぱいなんだが?」
片手を握り締めて主張してくる。
「私がどれだけ苦労したと思ってるんだ? 両方つついてやっとなんだぞ?」
力説されても、そんな事情は俺にとってはどうでもいい。
カメラを落ちないように肩にかけて、握る手を掴んで引き寄せた。
そして、濃厚にキスをする。
「んっ、んっんーっ!?」
うん、やっぱりこっちの方がいい。
美晴は顔を真っ赤にして、崩れ落ちた。
・・・まったく相変わらずだ。
「ひどい、いきなり何で!?」
地面に座り込んだまま文句を言ってくる。
「俺はこっちの方が良い。」
平然と言ってみたら下から睨みつけてきた。
「あーもう、芳彰のバカっ!」
「あれ~? 立てない?」
こいつは、こういう言い方が一番嫌いなんだ。
「・・・もう少しすれば歩けるから、放っといてくれ!」
顔を背けて見事に拗ねている。
「じゃあ、歩けるようになったら一緒に帰ろう。」
跪いて見張るの両手を取った。
「あっ、でも、せっかく・・・。」
赤くなってしどろもどろになりながらも、未練たらたらだ。
「どうせ写真でからかうんだろ?」
「う、うん。」
「じゃぁ、もう今日はこれで十分・・・な?」
「いや、まだ何かあるかも知れないし・・・。」
しぶといな、仕方無い。
「これ以上は野暮だ。」
強い調子で言った。これで効くだろう。
「うっ・・・」
やっぱり、言い返せないようだ。
視線を彷徨わせて逡巡するさまが可笑しい。
「さ、早く帰って続きしよう。」
「なっ!?」
「あははっ、真っ赤だ真っ赤っ、」
「バカっ!」
「ほら、大声出すと見つかるぞ?」
ちなみに俺は本気だ。
*---Epilogue Bridge---*
チャイムを鳴らすも返事はなく、ドアも開かない。
何で芳彰いないのよ!
まぁいいわ。合鍵借りてきてるし、それにこっちの方が好都合ね。
鍵を開けて上がり込み、廊下からリビングへ。そして目的のアトリエへ。
あらまた何か描いてるのね。
でもまあそれは置いといて、結構描きためてるからいくつか持って行っても平気よね、
ええっと・・・美晴ちゃんのはさすがに置いといた方がいいわよね。
さて、どれにしようかな・・・
「お母さん、お母さん、この間ね、おねぇちゃんの彼氏に会ったよ。」
「あら、いいわね、ねえ、どんな人だった?」
「えーとね、優しい人で、おねぇちゃんの事大好きって感じで、私も嬉しかった。」
「そっか、お母さんも是非会ってみたいわね。」
「えへへ、あのね、・・・実は番号交換してもらったの。」
「でかした~和歌奈。じゃあ美晴に内緒で連絡取れるわね。」
最後まで読んで頂きありがとうございました。
この話は、前回から来るとこの設定は実は重いよね?
という事から始まりました。
まぁ基本的にキャラが勝手に動いてくれるんですが、
キャラの気持ちが固まれば・・・ですが、
私は自分の中に無い事は書けないタイプのようです。
母親の問題でよく分かりました。
芳彰の親に対するウジウジしてる部分も、美晴の短気なとこも、
言動も自分がモデルなので(あと部分的に旦那)
こっちの2人はよく動きます。
でも兄弟の関係は、イメージなんですよね。
私は一人っ子なので、実感としては無いんです。
うちの子供達や、旦那の兄弟、
今まで見てきた友人のとこから出来てる、イメージ像なんですが、
どうなんでしょうね、こんな感じでいいでしょうか?
書いてて、自分に刺さる部分がいっぱいです。
次は、この写真を葵に渡すとこから始まります。
草稿は書いてるんですが、完成はいつでしょうね?
まぁ、そのうち。