表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/21

それぞれが出した答え

20話目です。

・・・ではどうぞ。


「あ、絵描いてる。何か久し振りだな。」

いつものように勝手に上がり込んできた美晴が、

パーカーのポケットに両手を突っ込んで真後ろに立っていた。

そしてキャンパスを真っ直ぐ見据えていた。

「これは何の絵?」

「中途半端。」

「それ何?」

「俺の心象風景。」


挿絵(By みてみん)


たくさんの大人の中で、一人だけ子供の格好をしている奴がいる。

配色も暗めだ。目の前の問題に向き合おうとしない自分はこんな色だ。

「ふーん、この絵だとピーターパン症候群ぽくない?」

大人になりたくない、子供のままでいたい。

成長する事を拒む人達を心理学的にそう呼ぶ。

「別に子供でいたい訳じゃないんだけどな。」

ただ、決心がつかないだけだ。

「ならいいじゃん。」

一体何がいいのか分からず振り返ると、自信満々に答えてくれた。

「自分を客観的に見てる。それに、一歩は進んだろ?」

全く美晴は強い。

「なあ、もし俺が家に戻ったらどうする?」

「どうするも何も、仕方が無いんじゃないか?」

平然として言われると、俺としては少し寂しい。それが顔に出ていたらしい。

「ん? 戻っちゃ嫌だ! とか期待した?」

美晴は俺の首にするりと腕を回し、頬を指でつつく。

その通りなんだが、何か悔しいから答えない。

「学校の近くに一人暮らしってわけじゃ無いし、自分で家賃出してるわけでも無い、

 生活費もそうなんでしょ? 今が不自然なんだよ。」

その通りです。返す言葉もありません。

「自分で稼いでるんじゃ無い限り、この状態を続けてちゃ駄目だよ。」

ああ、耳が痛い・・・どころか心臓にグサグサ突き刺さる。

「どっちにしろ近いんだし、会えなくなるわけじゃない。」

・・・はい、美晴の意見はよく分かりました。

やっぱり自分で向き合うしかないんだな。



チャイムが鳴って、お昼の休み時間になった。

「和歌ちゃん、今日も交換しよ?」

理佐ちゃんがイスを引き摺って来た。

私はカバンから出したお弁当を見つめて、芳彰さんとの話を思い出していた。

あんなに優しい、あんなにいい人に、あそこまで言わせるおねぇちゃん。

今朝もいつもと変わらず、おねぇちゃんがお弁当を作ってくれた。

私は甘えてるんだな、おねぇちゃんが優しいから図に乗ってたんだ。

当たり前ってわけじゃないんだ、ちゃんと『ありがとう』って、

そういう事は、ちゃんと言わなきゃ駄目だったんだな。

いいおねぇちゃんか・・・やっぱり私は敵わないのかな?

「ねぇ、和歌ちゃん?」

「あ、ごめん。」

ふいに目頭が熱くなった。

「理佐ちゃん・・・ごめん、今日は自分で食べる。」

「うん、いいけど・・・ごめん和歌ちゃん、泣くほど嫌だった?」

「ううん、違うの、ごめん、これは違うの・・・」

拭っても止まらない涙を、一生懸命拭っていたら

理佐ちゃんがハンカチを渡してくれた。


和歌奈がそわそわしている。

台所で食器を洗っている美晴を気にして、何か言いたそうにしながらも結局動かない。

そうしているうちに、片付けが終わった美晴はお風呂に行ってしまった。

目的の人に逃げられた和歌奈は肩を落として、溜め息を吐いた。

喧嘩してから上手く行っていないのは分かっていた。

和歌奈は変化に対応できずに苛立っていた。

コントロールできない感情を、変化を起こした本人に・・・つまり美晴に向けていた。

美晴は戸惑いながらも和歌奈を見守っていた。

だから私もそんな二人を放っておいた。

こういうのは親が入ってもうまく行かないものだ。

・・・面倒だってだけじゃないのよ?

しかしようやく、その心に何らかの変化があったのだろう。

だが、時間が経ち引っ込みがつかなくなって、立ち往生している・・・

と、そんな所なのだろう。

仕方がない、少し背中を押してあげますか。

「久し振りに和歌奈も一緒に入ってみたらどう?」

「えっ、お風呂に?」

少し驚き、どうして? と言わんばかりに私を見返してきた。

「小さい頃は仲良く入ってたじゃない?」

そう促すと、少し考えて急に笑顔になった。

「そうだね。」

そういい返事をして行ってしまった。

まったく世話の焼ける子なんだから。


「おねぇちゃん、一緒に入っていい?」

「いいよ。」

少し響く返事が聞こえて、すぐに入った。

ダメと言われても入るつもりだったから、服は既に脱いでいる。

「久し振りだね。」

洗い場で泡だらけのおねぇちゃんが、少し緊張気味に笑った。

「タオル貸して、洗ってあげる。」

もうほとんど洗い終わってるのは見れば分かる。

「だから、私の髪洗ってね。」

精一杯笑って、タオルを奪った。

「わかった。背中よろしくね、」

やっぱりおねぇちゃんは優しい。


結局、「ありがとう」と言うシーンはあえて書いてないのですが、

裸の付き合いで、元に戻るという感じで。


絵の内容が、ストレートかなーっという思いはあるんですが。

私が描くならこうだなと。


(2011.02.04 改)

結局、挿絵入れてみました。

絵のサイズでかいかも・・・

適当な絵ですみません。

もともと、バレンタインの話用に描いてまして、

こっちはついでなので、つい手抜きに・・・(オイ)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ