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鬼と道化師と悩める者

12話目です。

・・・ではどうぞ。


サブタイトル「鬼とピエロと悩める者」と読んで下さい。

「昨日はごめん。」

「あ、うん別にいいけど・・・。」

出掛けに突然妹に謝られた。

でも、時間が無くてそれ以上の話はしていない。

母さんは『そういう時期』って言ったけど・・・かなりショックだった。

私は妹をかわいがってきたつもりだったのに。

時期って事は、いつまで続くんだろう?

今気にしても仕方ないのかな・・・

「あれ? 美晴も溜息?」

「も?」

葵と二人で川土手を歩き、学校へ向かう。

が、どちらも考え事をしていて会話が無かった。

今まで、その事にすら気付いていなかったのだが。

「葵は何考えてたの?」

彼女は少し躊躇した後、一枚の封筒を取り出した。

「またラブレター?」

「またって言わないで。」

いや、そうとしか言いようが無い。

「見せて、見せて。」

葵の手から封筒を奪い、便箋を出して広げる。

「うわ、酷い字。」

それは人に見せるための文字ではない。ましてや好きな相手に対して、

よくこんなものが渡せるなと、逆に感心してしまった。

「でしょ? 絶対これ読めないと思わない?」

葵は必死に同意を求めてくる。

「んー、ギリギリ読めるかな?」

「うそっ!? 美晴も読めるの? 何で? 美晴も航も変。」

思わぬ所で、過剰な反応を示す。

「で、行くの?」

しかし葵はいい顔をしない。

「じゃぁ、きっぱり振ってきたら? 文句の一つや二つ交えてさ。」

明らかに乗り気ではなかった彼女の顔色が、明らかに変わった。

「そっか、いいねそれ。」

今の葵はとてもいい顔をしている。

きっと彼は酷い目に遭うぞ、いや絶対にだ。



HRが終わってすぐに指定の校舎裏に向かったものの、まだ誰もいなかった。

腕組みをして、言ってやりたい事を頭の中でまとめる。

さあ、早くいらっしゃい!

少しして、二人の男子がおずおずとやって来た。

・・・私のイライラは倍増した。

「どっち?」

機嫌の悪さを隠さず聞くと、一人がもう一人の背中を押し出した。

押し出された彼は、一度後ろを振り返り、

「ぼ、僕です。西山隆志です!」

と、勢いに任せて声を張り上げる。

「へー、一人でこれないんだ?」

極めて冷たい声で言い放った。

「あ、はい・・・」

先程と違い、肯定を示す消え入りそうな声が更に神経を逆撫でする。

「で、何?」

「あっ僕、安田さんの事が・・・その、えーと、あの、・・・す・・・」

「もういい。」

どうせこんなんじゃいつまで待っても、たった二文字の言葉は出てこないわね。

大きく息を吸い込んで、指を突きつける。

「あんたねぇ、一体何しに来たの? 何のために私を呼んだの?

 あ、別にもう言わなくていいから、私あなたみたいな人駄目。

 見てるだけでイライラするから、それに何よあの手紙は? 何なのあの字?

 あんな字で書いた物をよく人に渡せるわね? その神経疑うわ! 私は考古学者

 なんかじゃないから、あんな文字解読できないの!

 あなたの字を毎回読まなきゃいけない先生達に同情しちゃう。きれいな字を書く

 所から出直したら? せめて人に読んでもらえる字をって、ねぇ逃げるの?」

字の汚い彼は、急に背を向けて脱兎の如く逃げ出した。

その後をもう一人が、慌てて追いかけて行く。

まだまだ言いたい事があったのに・・・

まったく、最後までイライラさせてくれるわね。


「ぅくっくくくっ・・・」

見つからないように声を殺して笑う。

本当なら、腹を抱えて大笑いしたい。

私は2号棟の科学室にいる。三人に程近い場所で、窓を少し開けて全てを見ていた。

「ぁ、葵酷すぎ・・・」

笑いが止まらない。告白が終わるのを待つ時間すら惜しんだ。

葵のそういう所が大好きだ。

が、ずっとこうしているわけにもいかない。

すぐ次に向かわなければならない。

何故なら、心配そうに見ている聡太くんを見つけてしまったからだ。

おそらく航くんにでも聞いたのだろう。

よしよし良い傾向だ。


どうせ葵しか見ていないのだろうが、念のためにこっそり近付く。

「安心したかい、聡太くん?」

「み、美晴さん!? いつの間に現れたんですか?」

急いで裏に回り込んだ私を見て、実に良い驚き方をしてくれた。

葵は不機嫌な背中を見せて帰って行く。私はそれを見送りながら

「私は神出鬼没が信条なの。」

と理想を語った。

聡太くんからの複雑な視線を感じ、先を続ける。

「面白い物が見れて、満足満足。

 だが少し言い過ぎかな・・・鬼と呼ばれても仕方ないな。」

「って、何言ってたか聞こえたんですか?」

投げた餌にすぐかかる。相当気になっているようだ。

気になるならこんな場所から見てないで、私みたいに聞こえる場所を

探せばいいのに。いや、彼の立場なら飛び出して来るっていうのもありだな、

・・・って聡太くんには無理かな?

「知りたい?」

「はいっ。」

うんうん、素直でよろしい。

でも、やっぱりもっと頑張って欲しい。

「結果も良かったんだけどね、・・・もったいないから、秘密。」

・・・それにたぶん、話すと葵に怒られる。

「もったいないって何ですか?」

聡太くんは必死だ。まったくどうして分からないんだか・・・。

聡太くん以外の誰が告白してきたって、葵の返事は一緒なのに。

「パズルのピースは、他のじゃ駄目なんだよ、決まった形でないと嵌まらないんだよ。」

それが分かるまで、もう少し考えてみてごらん。


「求める者。」の裏話ですね、

聡太が何話してるんだか聞こえないって言ってたとこです。

あの時点では、はっきり台詞考えてたわけじゃないんですが、


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