見つからないなら?
天井に続き、ダンジョンコアの置かれている台座を調べていくがそれらしきものは無く、ないとは思うがコア自体が偽物という可能性も考え、よく観察してみたが不自然な点は何も見つからなかった。
[触るなよー]
[ダンジョンコアは本当に何が起こるかわからないからなぁ]
[あの事件以降、同じようなニュースは出てないしそもそもダンジョンコアを持ち出したことが原因なのかも不明なんだよな]
[一応事件が起きた国のギルドがほぼ確実にそれが原因って声明を出していたぞ]
[本当かどうかは定かではない]
「俺もその場に居合わせたわけではないし、実際にやったことがあるわけでもないから絶対とは言えないが、ダンジョンコアを持ち出したらダンジョンが崩壊するっていうのはおそらく間違いないと思う」
ダンジョンコアはダンジョンが存在するために必要な存在だ。
いうならばダンジョンコアはダンジョンにとっての心臓のような物であり、そのコアが無くなった場合、どうなるかなんてわかりきっていることだろう。
今目の前にあるダンジョンコアもコア自体から大量の魔力をダンジョンに送り出しており、それが無くなったとすれば、ダンジョンは形を維持できなくなり最終的に崩壊という結果になるのは想像に難くない。
[やってたら困るわ!]
[もしかしてやろうと思ったことはあるのか?]
[言い方からしてちょっとくらいやってみようとか思ったことありそう]
[まあ、ダンジョンのコアっていうくらいだからな]
[画面越しだとただの少し浮いている光る玉にしか見えないんだけどな]
「ないわ。明らかに触ったら何か起きそうなやばい物だぞ。触ろうとも思えん」
ダンジョンを維持できるだけの高エネルギー体を、何の準備もなく触るなんてご法度だし、そもそも動かしたどうなるかわからない物に手を出すこと自体、論外な行動だろう。
それにこれだけの高エネルギー体に触れて俺の体が持つかどうかもわからないしな。
[よかった。その位の常識は持っていたようだ]
[実際目にしたことないから何とも言えんが、こいつがそう言うってことは相当なんだろうな]
[ほんとかぁ?]
[でも気にはなるでしょ?]
「俺、お前たちにどんな風に見られているんだ?」
本当に俺はどう思われているんだろうか。まあ、この反応からしてあまり良いように思われていなさそうではあるな。
少し聞いてみたい気持ちもあったが、詳しく聞いたら無駄に傷つきそうな気配がしたため、それ以上話を広げずに調査の方に戻った。
あーだこーだ視聴者とやり取りしながら台座やその周囲をよりしっかり調べていくことにした。
「やっぱりないな」
隅々まで台座を調べたが残念ながらギミックの手掛かりを見つけることはできなかった。
ダンジョン的にはまだ次の階層へ繋げるギミックを見つけるまでもう少し時間を掛けろということなのかもしれない。
ただ、少なくとも今回の調査で少し違和感のある壁は見つけられているので、一応進展はしているのだから良しとしておくか。
本音を言えば、できれば今回見つけたかったが、さすがにそう上手くは行かないようだ。
「ここが何かありそうな感じなんだが、うーん。開けるためのギミックがマジで見つからん」
違和感のある壁を触りながら、諦めきれずもう一度その場所を調べてみる。しかし、その違和感以外に新しい何かを探し出せなかった。
[やっぱりそこが底なんだよ]
[先は存在しないんじゃない]
[何かギャグ書き込んだ奴いた?]
[多分その違和感勘違いかも]
[あるわけないんだよなぁ]
結局1時間以上調査しても見つからなかったことで、視聴者たちの多くは次の階層はないと判断したらしく、チャット欄には次の階層に対して否定的なコメントが多く流れていた。
「あると思うんだけどなぁ」
見つけられていない以上、そのコメント達を否定することはできず、そう言葉を返すことしかできなかった。
本当にあると思うんだが、ギミックの手がかりすら見つかっていないからな。何を言っても信憑性に欠けるし、負け惜しみにしか聞こえないだろう。
[もう認めてもろて]
[あきらめも肝心ですよ]
[何かちょっとおとなしくなっているの草]
[本当にあると思っているならいっそ、そこを壊してみればいいんじゃない?]
[見つからなかったからまた今度ここで配信してね]
「この空間の壁どころか床や天井も傷つけることはできないようになっているんだよ。見た目は普通の岩っぽいけど、これは全く別の物質。後、配信はしない」
ダンジョンコアが置かれているこの空間はダンジョンコアと台座を除いて一切傷かつかないようになっている。実は深層前のあの空間も、ギミックが見つからなさ過ぎて強引に先に進もうと壁の破壊を試していたのだが、残念ながら傷一つ付けることが出来ずに終わっている。
[やってみないとわからないでしょ]
[頑な!]
[マジで壊そうとするのは止めろよ。何が起こるかわからん]
[流れ弾がダンジョンコアに当たるとかないよね?]
「やってみないとわからないって、まあ確かにそうだな。……それじゃあ1回試してみるか」
確かに構造や見た目が同じだからと言って、すべてが同じとは限らないか。それにやる前からできないと判断するのもよくない。
調査するなら無理だとわかっていても1度は試さないといけないよな。
[え、マジでやるの!?]
[ステイステイステイ!]
[何が起こるかわからんから止めてくれ]
[誰だやってみろって言ったやつ!]
「いきなりぶっ壊すなんてするわけないだろ。ちょっと傷つけられるか試すだけだ」
前にやってしまった時は、なかなかギミックを見つけられなかったことでイラついて殴ってしまったわけだが、さすがにあれは短慮だったと今でも反省している。
さすがに今回は上手くいくとも思えないので、思い切りぶち壊そうと考えていない。ただ、傷が付きさえすれば壊せる可能性は出てくるので、今はその確認さえできればいいのだ。
鞄の中から調査用の小型ピッケルを取り出し、その先端を違和感のあった壁に押し当てて少し力を入れながらこするように下へスライドさせた。
するとガリッという音と共に壁の一部が削れ、削り取れたものが床の上に落ちていった。
「は?」
一切想定していなかった結果に思わず声が漏れ、俺は床に落ちていく壁の一部だった破片をただ眼で追っていた。




