第99話:楽しさが生む真の理解
雲の上の、とある華やかな朝。
天界の大広間は、たくさんの人で賑わっていました。
文化交流イベントの当日です。
ノエルは、ガブリエル嬢と一緒に会場の入り口に立っています。
「すごい人ですね」
ノエルが、驚いて言いました。
「ええ」
ガブリエル嬢は、少し眠そうに頷きます。
「でも、嬉しいことです」
天使も、悪魔も。
みんなが、楽しみにやってきていました。
「では、見て回りましょうか」
ガブリエル嬢が、ゆっくりと歩き出します。
「はい」
ノエルは、彼女に続きました。
最初のブースは、天界の工芸品でした。
雲細工の展示です。
「これ、綺麗ですね」
魔界の若い悪魔が、感心しています。
「ありがとうございます」
展示係の天使が、嬉しそうに答えました。
「触ってみてください」
悪魔が、そっと手を伸ばします。
雲の工芸品に、指先が触れました。
「わあ、柔らかい」
彼の表情が、明るくなります。
その様子を見て、展示係の天使も笑顔になりました。
ノエルは、微笑ましく思います。
次のブースは、魔界の音楽でした。
不思議な楽器が、並んでいます。
「これ、弾いてみても良いですか」
若い天使が、興味深そうに尋ねます。
「もちろん」
魔界の係が、楽器を渡しました。
天使が、弦を弾きます。
美しい音色が、響きました。
「すごい」
周りの人たちが、拍手します。
「魔界の楽器、初めて触りました」
天使は、嬉しそうでした。
ガブリエル嬢とノエルは、その様子を見ていました。
「楽しそうですね」
ガブリエル嬢が、優しく言います。
「ええ」
ノエルは、頷きました。
みんなの顔が、笑顔です。
それは、とても温かい光景でした。
少し進むと、お茶のブースがありました。
ウリエルが、お茶を淹れています。
「いらっしゃいませ」
彼女の声は、いつもより明るい。
「お茶、いただけますか」
ベルゼブブが、訪れました。
「もちろんです」
ウリエルは、丁寧にお茶を淹れます。
ベルゼブブが、一口飲みました。
「美味しいです」
彼女は、満足そうに微笑みます。
「やっぱり、ウリエル様のお茶は最高ですね」
「ありがとうございます」
ウリエルは、少し照れています。
二人の会話を聞いて、ノエルは温かい気持ちになりました。
「私も、お茶をいただきたいです」
ガブリエル嬢が、小さく言います。
「では、並びましょう」
ノエルは、提案しました。
二人は、列に並びます。
前には、何人かの天使と悪魔がいました。
「あら、ガブリエル様」
順番が来ると、ウリエルが驚きます。
「お茶、お願いします」
ガブリエル嬢は、優しく微笑みました。
「はい」
ウリエルは、特別に丁寧にお茶を淹れます。
「ノエルの分も」
ガブリエル嬢が、付け加えました。
「もちろんです」
ウリエルは、二つのカップを用意します。
お茶を受け取って、二人は休憩スペースに座りました。
「美味しいですね」
ノエルが、言います。
「ええ」
ガブリエル嬢は、ゆっくりとお茶を飲みます。
その仕草が、とても優雅でした。
ノエルは、心の中で呟きます。
尊い、と。
休憩スペースには、他にも何人か座っています。
天使と悪魔が、混ざって話していました。
「魔界の工芸品、素敵でしたね」
ある天使が、言います。
「天界の雲細工も、綺麗でした」
隣の悪魔が、答えます。
二人とも、楽しそうです。
「良い雰囲気ですね」
ガブリエル嬢が、静かに言いました。
「ええ」
ノエルは、同意します。
お茶を飲み終えると、また見て回ります。
次は、魔界の食文化のブースでした。
有機栽培の野菜や果物が、並んでいます。
「これ、試食できますか」
ラファエルが、尋ねていました。
「どうぞ」
ベルフェゴールが、元気に勧めます。
「自信作です」
ラファエルが、一つ食べてみます。
「美味しい」
彼は、驚いたように言いました。
「とても優しい味ですね」
「努力の成果です」
ベルフェゴールは、誇らしげです。
サタンも、そばにいました。
「この野菜、育てるの大変だったんですよ」
彼は、穏やかに説明します。
「そうなんですか」
ラファエルは、興味深そうに聞いています。
二人の会話が、とても和やかでした。
ガブリエル嬢は、少し疲れたような顔をしています。
「ガブリエル嬢、休憩しますか」
ノエルが、気遣います。
「ええ、少し」
彼女は、小さく頷きました。
また休憩スペースに戻ります。
今度は、人が少なくなっていました。
「賑やかですね」
ガブリエル嬢が、目を閉じて言います。
「そうですね」
ノエルは、優しく答えました。
「でも」
彼女は、目を開けます。
「みんなの笑顔が見られて、嬉しいです」
その言葉に、ノエルは頷きました。
少し休んでから、また会場を回ります。
訓練場のコーナーでは、ミカエルが実演をしていました。
たくさんの人が、集まっています。
「では、飛行の基本を」
ミカエルが、剣を構えます。
その動きが、始まりました。
速く、美しい。
「すごい」
観客から、感嘆の声が上がります。
レヴィアタンも、最前列で見ていました。
目が、輝いています。
実演が終わると、大きな拍手が起こりました。
「さすがミカエルさんです」
レヴィアタンが、嬉しそうに言います。
「そ、そんなに褒めるな」
ミカエルは、少し照れています。
でも、その表情は満足そうでした。
ノエルは、その様子を見ていました。
二人の距離が、少しずつ近づいている。
微笑ましい、と思います。
会場の奥では、パヌエルとマモンがイベントを企画していました。
「みんなで輪になって、歌いましょう」
パヌエルが、明るく提案します。
「良いですね」
マモンは、嬉しそうです。
「楽器も用意しましょう」
「費用は、私が」
マモンが、言います。
「ありがとうございます」
パヌエルは、手を叩いて喜びました。
二人の企画で、歌の輪ができました。
天使も、悪魔も。みんなで歌います。
ガブリエル嬢とノエルも、その輪に加わりました。
「ふわぁ」
ガブリエル嬢が、小さくあくびをします。
「眠いですか」
ノエルが、小声で尋ねます。
「少し」
彼女は、正直に答えます。
「でも、楽しいです」
その言葉に、ノエルは微笑みました。
歌の輪が、終わります。
みんなの顔が、充実感に満ちていました。
「楽しかったですね」
ある天使が、悪魔に言います。
「ええ、また歌いましょう」
悪魔が、笑顔で答えます。
こうして、午前中が過ぎていきました。
昼休みになりました。
ガブリエル嬢とノエルは、静かな場所で休んでいます。
「午後も、まだありますね」
ノエルが、言いました。
「ええ」
ガブリエル嬢は、少し疲れた様子です。
「でも、見たいものがあります」
「何ですか」
「魔界の祈りの儀式」
彼女は、静かに言いました。
「午後に、実演があるそうです」
「それは、楽しみですね」
ノエルは、頷きます。
二人で、軽い昼食を取りました。
雲菓子と、光蜜水。
ガブリエル嬢は、少しだけ食べて満足そうです。
午後が、始まりました。
会場は、また賑やかになります。
魔界の祈りの儀式が、始まろうとしていました。
ルシファーが、前に出ます。
「では、魔界の伝統的な祈りを」
彼は、謙虚に言いました。
静かに、祈りが始まります。
その様子は、厳かでした。
ガブリエル嬢は、じっと見ています。
その表情が、穏やかでした。
儀式が終わると、拍手が起こります。
「素晴らしかったです」
ラグエルが、感動して言いました。
「いえ、私なんて」
ルシファーは、恐縮しています。
「いえいえ、本当に素晴らしかった」
ラグエルは、優しく言います。
二人の会話を聞いて、ノエルは思いました。
お互いを認め合っている。
それが、とても温かい。
夕方になりました。
イベントが、終わりに近づいています。
「みなさん、ありがとうございました」
パヌエルが、明るく挨拶します。
「楽しかったです」
「また開いてください」
たくさんの声が、聞こえます。
ノエルとガブリエル嬢も、会場を後にしました。
「良い一日でしたね」
ガブリエル嬢が、静かに言います。
「ええ」
ノエルは、頷きました。
みんなの笑顔。
楽しそうな会話。
心から楽しんでいる様子。
それは、何よりも大切なことでした。
執務室に戻ると、ガブリエル嬢は雲クッションに向かいます。
「今日は、たくさん歩きました」
彼女は、横になります。
「お疲れさまでした」
ノエルは、優しく言いました。
「でも」
ガブリエル嬢は、微笑みます。
「とても、良い疲れです」
その言葉に、ノエルは頷きました。
窓の外では、夕日が沈んでいきます。
美しい光景でした。
今日見た、たくさんの笑顔。
天使と悪魔が、一緒に楽しむ姿。
それは、平和の本当の形なのかもしれません。
ガブリエル嬢の寝息が、聞こえてきました。
ノエルは、静かに微笑みます。
尊い、と心の中で呟きました。
楽しさが、心を繋ぐ。
そんな一日でした。
## あとがき
文化の違いも、楽しさの前では小さなこと。みんなの笑顔が溢れた一日。たくさん歩いて疲れたガブリエル嬢の「良い疲れ」という言葉が、すべてを物語っていました。




