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第95話:競技祭に込められた希望

雲の上の、とある賑やかな昼下がり。

訓練場に、たくさんの天使が集まっていました。


ノエルも、その中にいます。

今日は、天魔競技祭の説明会がある日でした。


「あら、ノエル」

後ろから、声がしました。


振り返ると、ガブリエル嬢が立っています。

いつものように、少し眠そうな表情でした。


「ガブリエル嬢」

ノエルは、笑顔で答えます。

「競技祭の説明会ですか」


「ええ」

彼女は、小さく頷きました。

「一緒に聞きましょう」


二人は、会場の端に座ります。

前方の台に、ミカエルが立っていました。


「では、始める」

ミカエルの声が、訓練場に響きます。

「天魔競技祭について、説明する」


周囲が、静かになりました。


「この競技祭は」

ミカエルは、腕を組みます。

「天魔平和協定の一環として始まった」


ノエルは、真剣に聞いていました。

隣では、ガブリエル嬢がこくりと頷いています。


「戦争が終わった後」

ミカエルは、続けます。

「天界と魔界の間には、まだ緊張があった」

「お互いを信じきれなかった」


会場が、しんと静まります。


「そこで、始まったのがこの競技祭だ」

ミカエルの目が、真剣でした。

「スポーツを通じて、お互いを知る」

「戦いではなく、競技で力を競う」


「なるほど」

ノエルは、小さく呟きました。


「最初は、小規模だった」

ミカエルが、少し表情を和らげます。

「飛行速度を競うだけの、簡単なものだった」


「でも、それが良かったのです」

ガブリエル嬢が、静かに言いました。


周囲の視線が、彼女に集まります。


「小さく始めて」

ガブリエル嬢は、ゆっくりと話します。

「少しずつ、大きくしていった」

「焦らず、ゆっくりと」


その口調は、いつもの彼女らしい。

でも、言葉には重みがありました。


「その通りだ」

ミカエルは、頷きます。

「最初の競技祭は、ぎこちなかった」

「でも、回を重ねるうちに……」


彼の表情が、わずかに緩みました。


「友情が生まれた」


会場に、温かい空気が流れます。


「今では」

ミカエルは、腕を解きました。

「魔界の連中と、普通に話せる」

「あれだけ激しく戦った相手なのに」


その言葉に、不思議な感慨が込められていました。


「競技の内容は、年々増えている」

ミカエルは、資料を開きます。

「飛行速度、魔力制御、戦術シミュレーション」

「今年は、さらに新しい種目も加わる」


ノエルは、興味深く聞いていました。

隣のガブリエル嬢は、少し目を閉じています。


「……ガブリエル嬢?」

小声で尋ねると、彼女は目を開けました。


「起きてますよ」

小さな声でした。

「ちゃんと、聞いてます」


ノエルは、思わず微笑みました。


「競技祭は、ただのスポーツではない」

ミカエルの声が、また響きます。

「これは、平和を守るための努力だ」


会場の天使たちが、真剣な表情で頷いています。


「では、具体的な種目について」

ミカエルが、次のページを開きました。

「まず、飛行速度競技」


説明が、続いていきます。

種目の詳細、ルール、注意事項。


ノエルは、メモを取りながら聞いていました。

ガブリエル嬢は、時々こくりと船を漕いでいます。


「……魔力制御は、慎重に」

ミカエルの説明が、続きます。


「ふわぁ……」

小さなあくびが、聞こえました。


ノエルは、横を見ます。

ガブリエル嬢が、控えめにあくびをしていました。


「お疲れですか」

小声で尋ねると、彼女は首を振ります。


「大丈夫です」

「ただ、少し……眠くて」


その正直な返答に、ノエルは笑いを堪えます。

尊い、と心の中で呟きました。


説明会が、前半を終えました。

休憩時間です。


「ふう」

ガブリエル嬢は、小さく伸びをしました。

「長いですね」


「まだ後半がありますよ」

ノエルは、優しく言います。


「そうでした」

彼女は、少し困ったような顔をします。


その時、レヴィアタンが近づいてきました。


「ガブリエル様、ノエル」

彼女は、明るく挨拶します。

「競技祭、楽しみですね」


「ええ」

ガブリエル嬢は、微笑みました。

「レヴィアタンも、参加するのですか」


「はい」

レヴィアタンの目が、輝きます。

「ミカエルさんの活躍を、見られるかもしれないので」


その言葉に、ノエルは少し驚きました。

嫉妬の悪魔なのに、誰かを賞賛する。


「楽しみですね」

ガブリエル嬢が、優しく言いました。


「はい!」

レヴィアタンは、嬉しそうに答えます。

「みんなすごいですから」


三人で、少し雑談をしました。

競技祭の話、準備の話、楽しみなこと。


ガブリエル嬢は、時々こくりと頷きながら聞いています。

完全に起きているわけではなさそうです。でも、会話には参加していました。


「では、また後で」

レヴィアタンは、手を振って去っていきます。


「良い方ですね」

ノエルが、言いました。


「ええ」

ガブリエル嬢は、微笑みます。

「とても、素直で」


後半の説明会が、始まりました。

今度は、ラファエルが前に出ます。


「では、私から」

師匠の穏やかな声が、響きました。

「競技祭の意義について、お話しします」


ラファエルは、優しい笑顔を浮かべています。


「競技祭は、勝ち負けだけではありません」

彼は、ゆっくりと語ります。

「大切なのは、交流することです」


ノエルは、真剣に聞いていました。


「競技を通じて、相手を知る」

ラファエルは、続けます。

「お互いの強さを認め合う」

「そこから、尊敬が生まれます」


その言葉に、深い意味を感じました。


「私も、サタンとは競技祭で親しくなりました」

ラファエルは、楽しそうに言います。

「今では、良い友人です」


会場が、温かい雰囲気に包まれます。


「だから、皆さん」

ラファエルは、みんなを見回しました。

「競技を楽しんでください」

「勝つことも大切ですが」

「友達を作ることも、同じくらい大切です」


その言葉に、多くの天使が頷きました。


説明会が、終わりました。

ノエルとガブリエル嬢は、ゆっくりと会場を出ます。


「良いお話でした」

ノエルが、言いました。


「ええ」

ガブリエル嬢は、頷きます。

「競技祭は、平和の象徴ですから」


二人は、雲上の道を歩いていきます。


「ガブリエル嬢も、参加されるのですか」

ノエルが、尋ねました。


「ええ」

彼女は、小さく笑います。

「でも、あまり激しい種目は……」


「そうですよね」

ノエルは、想像しました。


ガブリエル嬢が、激しく動き回る姿。

なんだか、あまり想像できません。


「魔力制御なら」

彼女は、静かに言います。

「参加できるかもしれません」


「それは良いですね」

ノエルは、嬉しくなりました。


執務室に戻ると、ガブリエル嬢は雲クッションに向かいます。


「少し、休みます」

彼女は、ゆっくりと横になりました。


「お疲れさまでした」

ノエルは、優しく言います。


「長い説明会でした」

ガブリエル嬢は、目を閉じます。

「でも、大切なことでした」


その声が、だんだん小さくなっていきます。


ノエルは、自分の席に座りました。

競技祭のメモを、整理します。


平和を守るための努力。

スポーツを通じた交流。

友情が生まれる場所。


競技祭には、たくさんの意味がありました。


窓の外を見ると、訓練場が見えます。

若い天使たちが、練習を始めていました。


競技祭に向けて、みんな頑張っている。

その姿を見ると、なんだか嬉しくなりました。


「僕も、頑張らないと」

ノエルは、小さく呟きます。


背後から、小さな寝息が聞こえてきました。

ガブリエル嬢が、もう眠っています。


ノエルは、静かに微笑みました。

長い説明会でも、ちゃんと最後まで起きていた彼女。


尊い、と思います。


雲海が、ゆっくりと流れていきます。

平和な午後でした。


競技祭まで、あと少し。

きっと、素晴らしい祭典になるでしょう。


ノエルは、そう信じていました。

## あとがき


競技祭に込められた想い。平和を守る努力が、スポーツという形で花開きます。長い説明会も、ガブリエル嬢と一緒なら楽しい時間でした。

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